第34話 23年前の夢を見る真一…『真一と優香・夢の中で「腹を割って話す」』⑥

(回想・夢の中)

真一「オレは、優香ちゃんから『どうしたらいい?』って聞かれたとき、一般的にいう『抽象的な返事が出来ない』…。例えば、白木とか村田さんとかから相談されたんやったら(されたのであれば)、『当たり障りのない』返事をしてると思う。けど、オレからして優香ちゃんに対しては、そんな抽象的な返事が出来んやんか。だって幼稚園の時から優香ちゃんを知ってて、村田さんとかと比べても、オレは長いこと知ってるんやもん。そやから(だから)、盆を過ぎても返事が出来んかった」

優香「そうかぁ…」

真一「それでなぁ、実は『大学で見つけたら?』って答えようかと思ったんや。けど(でも)、優香ちゃんは『近所のお兄ちゃん』のことが気になっとるんや」

優香「……………」

真一「ホンマに大学の方が近いのに、大学では見つけへん(見つけない)のか?」

優香「大学にはいないって❗」

真一「そうかぁ…」

優香「うん…」

真一「そんなに『大学におらん(いない)』って言うてんやったら…」

優香「…………」

真一「…………」



真一が深呼吸をする。

優香は静かに真一を見守っている。



真一は夢の中なのに、緊張が最高潮に達していた。




真一「あのな、優香ちゃん…」

優香「うん…」

真一「幼稚園の時にイスを2個取りに行って、優香ちゃんにイスを1個渡したら、満面の笑みを浮かべちゃった話をしたやろ?」

優香「うん…」

真一「そのとき、優香ちゃんが満面の笑みを浮かべちゃって『笑ったらめっちゃかわいいやんか❗』って思った。席がとなり同士で、優香ちゃんとよう(よく)話してた。ホンマに楽しかった。優香ちゃんはオレのことを身内よりもよく知ってる。オレ不器用やから、物作るときなんか、幼稚園の時から何も文句も言わんと、オレを手伝ってくれて…。高校でも、家庭科で弁当巾着作るのに、居残りでアイツ(森岡)と最後まで残ってしもうて(しまって)、アイツをほったらかしにしてでも、オレのミシン掛けを文句も言わんとしてくれて…。いっつも(いつも)優しくて、器用で、オレのこと長い目で見てくれて、オレの気持ちを親よりも誰よりもよく知ってて、オレの心強い味方になってくれて…。優香ちゃんとおって(居て)、しっくりくるんや。優香ちゃんの存在が身近過ぎて、幼稚園の時から特別何も変わったことなく、『“いつも通り”や』って思ってた。けどそれは違うみたいやった。オレ、気がついたんや。オレ…、幼稚園の時から優香ちゃんが好きや。オレの『初めての人(初恋の人)』や…」

優香「えっ…」



真一が赤面しながら告白し、それを聞いた優香の顔も赤くなった。



真一「うん…。高校で再会したとき、優香ちゃんや…ってわかったとき、心の中ではめっちゃ嬉しかったんや。けどオレはその時既に『トラウマ』があって、全く前向きになれんかった。積極的になれんかった。高校の時、優香ちゃんから『好きな人いる?』って聞かれた時、正直複雑な心境やった。実は今でもそうなんや…」

優香「そっかぁ…」

真一「優香ちゃんのことは今も大好きなんや。『大好き』な気持ちと『トラウマ』の気持ちがぶつかり合ってて、正直、オレもどうしたらいいか、頭の中が混乱してて困ってるんや…。やっぱり、幼稚園や高校の時みたいに優香ちゃんと、ずーっと、一緒にいたい気持ちと、前向きになれん(なれない)自分もおる(居る)んや…。だから、いつも通り『幼なじみのままでいい』っていう気持ちで落ち着こうかと思ってる…」

優香「そうやったんか…。しんちゃん、私からも話していい?」

真一「うん…」




優香も真一同様に、深呼吸をしてから静かに話し始めた。




優香「しんちゃん、あのな…」

真一「ん?」

優香「私も幼稚園の時から、真一くんが大好き」

真一「えっ…」



優香が真一に告白すると、さらに顔が赤くなり、真一もドキドキしていた。



優香「幼稚園の時、いつも私の分までイスを取りに行ってくれて、いつも私のこと気にかけてくれて…。どこへ行っても、私のとなりには真一くんがいた。いつも真一くんは優しいし、真っ直ぐやし、どこでも誰とでも話し合えて、見返りを得ずにいつも誰かの人助けをして、正直でウソつけないし、すぐ顔に出るし、照れてるときはすぐ顔を真っ赤にするし、私のこと長い目で見てくれるし、不器用やし、鈍感やし…。だけど、不器用でもなんでもいい。そんなしんちゃんの全部がいいところなんや…。幼稚園の時となにも変わらん。しんちゃんのこと、誰よりも私が一番長いこと知ってるから…。そんなしんちゃんのこと、幼稚園の時から大好きやで。私の『初恋の人』や…」

真一「えーっ…」

優香「高校の時、私も再会して嬉しかったよ。私が困ってたら、みんなのいないときに声かけてくれて、ちゃんと私のこと、遠くでも気にかけて見てくれてて…。幼稚園の時のしんちゃんそのままやった。高校でも『いつも通り』やった。だから私は、しんちゃんの存在があったから、幼稚園の時も高校の時も、安心してたんやで。それで私、ずっとしんちゃんのことが気になってて、しんちゃんに振り向いてもらいたくて、カマをかけたのが仇になって、しんちゃんを困らせて…。挙げ句の果てに私、森岡くんと付き合って…。しんちゃんに『トラウマ』があったなんて知らんかったから、余計に傷つけてしまって…。真一くんは今も複雑な思いしてるんや…。その複雑なしんちゃんの気持ち、私が絶対なんとか解かすから…。元はといえば、私のせいなんやから…」

真一「優香ちゃん…」

優香「しんちゃん…、トラウマがあっても、トラウマのことは少し置いといて、端的に、私とホントはどうしたいと思ってるの?」

真一「えっ…、ホンマは…、ホンマは…」

優香「うん…、どれだけ時間がかかってもいいよ。私はずっとしんちゃんの素直な返事、待ってるから…」

真一「優香ちゃん…」

優香「私が困ったときは、いつもすぐにしんちゃんが助けてくれた。しんちゃんが困ったときは、私が助けなアカンやんか❗」

真一「優香ちゃん…」

優香「私を誰やと思ってるの? 幼なじみの優香ちゃんやで(笑)」

真一「そうやな…」

優香「うん…」



しばらくまた沈黙が走る。





深呼吸をして、真一が静かに話し始めた。



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