第33話 23年前の夢を見る真一…『真一と優香・夢の中で「腹を割って話す」』⑤

真一は、実際に見た優香の夢の事を浅田にスマートフォンで話している。




浅田「そうか、夢の中で新たに『腹を割って話』したんや…」

真一「うん」

浅田「話聞いてたら、違和感がなかったみたいやな」

真一「夢の中でも自然やった。『いつも通り』っていうやつやった」

浅田「なかなかリアルやな(笑)」

真一「こんな夢、知らんわ」

浅田「それで『腹を割って話』するのは、続いたんか?」

真一「続いたで。夢は翌日に持ち越しにはなったしな…」

浅田「ホンマに毎晩、いい夢見てはります(見ておられます)ねぇ(笑)」

真一「やかましいわ❗(笑)」













(回想・夢の中)

真一「優香ちゃん」

優香「なぁに?」

真一「『どうしたらいい?』のことや」

優香「うん」



真一は夢の中なのに緊張していた。そして真一は、23年前に言えなかったことを夢の中で優香にゆっくりと話し始めた。自分に言い聞かせるつもりで…。




真一「オレ、アホやし不器用やから、あんまりうまく話をまとめることが難しくて、どう言うたらいいのかわからんのやけど…」

優香「うん…」

真一「さっき『独り言』でも喋ったけど、アイツ(森岡)から優香ちゃんと別れた話を聞かされて、オレ、別れたことそのものはどうでもよかったんや。一番に思ったのは『優香ちゃんがひとりぼっち』になってること、『また、しょんぼりしてるんやないか?』、そのことだけ気になったんや」

優香「うん」

真一「それは『幼稚園のイス』の時に見た、優香ちゃんの『しょんぼり顔』が今でも記憶で覚えてるからなんや。高校の時も『しょんぼり顔』を見たことあるけどな…」

優香「…………」

真一「あのときの顔を見たのは、村田さんたちも、優香ちゃんと小学校が一緒やった白木も(しょんぼり顔を)見てたとしても、優香ちゃんの気持ちがわからんのやと思う。多分、オレくらいしか知らんのやと思う…」

優香「うん…」

真一「それになぁ、オレの『トラウマ』は今も解かすことはできへん(できない)。この先もできん(できない)と思う。この先どうなるか、先のことは全くわからん…」

優香「うん…」

真一「優香ちゃんの『近所のお兄ちゃん』については、オレもようわからん。何べん(何回)も考えるけどわからんわ。『近所のお兄ちゃん』のことはちょっと置いといて話すけど…」

優香「…………」




真一はあえて『近所のお兄ちゃん』が自分であることを知っているが、当時を振り返り、夢の中ではあえて知らないフリをした。




真一「幼稚園の時、イスを2個取りに行って、優香ちゃんにイスを1個渡したら、しょんぼり顔から一転して満面の笑みを浮かべちゃった時、『なんや、笑ったらめっちゃかわいいやんか❗』って思った。優香ちゃんは、しょんぼり顔より笑った顔が一番よう(よく)似合う。優香ちゃんをしょんぼり顔にさせないようにしようとしたんや。オレ、となりの席やったから、となりでしょんぼり顔されたら、見て見ぬふりなんて出来へん(出来ない)やんか」

優香「…………」

真一「そやから(だから)、体が勝手に動いたんやと思うんや。優香ちゃんによう(よく)話しかけてたんやと思う。それは高校の時も、そしてこの前のアイツ(森岡)がオレに(別れたことを)言うてきたときも…。オレにとって、優香ちゃんのことの全ての原点は、幼稚園なんやと思う」

優香「…………」

真一「それと高校の卒業式の前日に、優香ちゃんと白木と佐野山と一緒に電車で帰ったやんか」

優香「そうやったなぁ」

真一「白木と佐野山は(ボックス)席に座るや否や寝よったんや」

優香「うん」

真一「オレ何か話そうかなぁ…と思ったら寝よったんや。優香ちゃんと話そかと思ったら、優香ちゃんもオレの肩にもたれて寝ちゃったんや」

優香「…………」

真一「あの時、実は心の中で思ってたんや。『大学行ったら、アイツ(森岡)とも遠距離になるけど、幸せになって欲しい…。オレは不器用でも、何とかするしかないし、もう優香ちゃんには頼れないし、自分でやれることをやる。ホンマに楽しかったし嬉しかった』って…」

優香「……………」

真一「それから高校卒業して2週間くらいで就職したんやけどな…」

優香「うん」

真一「3月の末に優香ちゃんと電車で2回会ったんやな。まさか新潟行って前(行かれる前)に会えるとは思わんかった」

優香「うん」

真一「就職しだして夏になって、正直気持ち的にしんどかったんや」

優香「そうなんや…」

真一「体力的な疲れはともかく、気持ち的に、幼稚園と高校の時はオレ、優香ちゃんに甘えとった(甘えていた)。不器用やから、もの作るときなんか、何も言わんとオレを手伝ってくれた。『高校卒業したら、もう甘えられん』ってわかってるんや。頭の中では『新潟の大学に行っとってんや(行っておられる)から、北町にはおってない(おられない)』ってことくらいわかってる。けど、体が『毎日会ってた人がおらん。どうなってんねん(どうなってるの)?』って反応するんや。オレの頭の中と体がオレの中で喧嘩になってたんや。葛藤みたいなもんなんやろか…。何か、情緒不安定になってたのかも…」

優香「そうかぁ…」

真一「幼稚園の時も高校の時も、毎日顔を合わす優香ちゃんの存在は、オレの頭の中では会って『当たり前や』って思ってたんかもしれん。けど小学校に行った時も、小学校が別々になったし、就職したときも、優香ちゃんが新潟こっち来て、毎日顔を合わさん(合わさない)のは当たり前やのに、何かぽっかり穴が開いた感じになったんや」

優香「そうなんや…」

真一「それで、うまく話はまとめられへんのやけど…」

優香「…………」

真一「…………」

優香「…………」

真一「『どうしたらいい?』の返事や」

優香「うん…」




しばらく、真一と優香の間に一瞬の静寂があった。

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