第30話 23年前の夢を見る真一…『真一と優香・夢の中で「腹を割って話す」』②
(回想)
翌日の夜、妻のみつきが寝静まったことを確認して、真一も布団に入る。そしてまた真一は夢の中へ誘われた。
(回想・夢の中)
真一は優香が住む新潟のマンションで、優香と一緒にベッドで寝ていた。真一の目の前には優香が眠っている。優香は真一にべったり抱きついていた。腕の中で垣間見える優香の寝顔を、この期に及んで夢の中で初めて見た真一が心の中で呟くのだった。
真一(安心しきってるなぁ…。23年前、オレが『トラウマ』に束縛されてなかったら、こんなことになってたんかな…。しかし爆睡やんか、優香ちゃん…(笑))
真一は思わず笑みを浮かべた。
明るい日差しが、カーテンが閉まっている周りから優香のマンションに漏れていた。時計を見ると、時刻は午前10時を過ぎていた。
それでも優香は起きる気配がない。真一は幼稚園卒園の時からやっていた、優香の頭を撫でていた。すると、優香が寝言を言った。
優香「しんちゃん…、しんちゃん…」
真一(ここ夢の中やのに、優香ちゃんが夢を見て、寝言でオレを呼んでるやんか…(笑) しゃあないなぁ(仕方がないなぁ)…)
真一はその後も、優香の頭を撫でていた。
しばらくして、優香が目を開けた。
優香「…あ、おはよう」
真一「おはよう」
優香「起きてたん(起きてたの)?」
真一「優香ちゃんに呼ばれて目が覚めた」
優香「私が呼んだ?」
真一「『しんちゃん…しんちゃん…』って…」
優香「え❗ 私、寝言言ってたの?」
真一「オレだけの秘密にしとく」
優香「は、恥ずかしいやんか…」
真一「そやから、オレだけの秘密にしとくって(笑)」
優香「しんちゃん…」
真一「寂しかったんやろ?」
優香「うん…」
真一「甘えたかったん(甘えたかったの)?」
優香「うん…。甘えられるのは、しんちゃんしかいないから…」
真一「そうか…。しゃあない(仕方がない)わ、幼なじみなんやから…」
優香「うん…」
真一「少しは落ち着いたか?」
優香「うん…、ありがとね」
真一「うん…」
優香「何か私、初めてしんちゃんと寝たけど…」
真一「爆睡やったなぁ(笑)」
優香「うん…」
真一「疲れてたんやな…」
優香「安心しきって寝てたんやと思う」
真一「そうなん?」
優香「うん。しんちゃんが一緒やったから…」
真一「そんなに安心した? そんなに甘えたかったん?」
優香「…うん」
真一「そうか…」
優香「やっぱり、しんちゃんとおったら(居たら)安心するわ。幼稚園の時も、高校の時も…、そして今も…」
真一「そうか…」
優香「…で、なんで襲わんかったん?」
真一「はい?」
優香「普通、襲うやろ?」
真一「あのなぁ…、幼稚園の時、おとなしいかわいい女の子やった人が『なんで襲わんかったん?』って聞くか?」
優香「しんちゃんやで聞いたんや。襲ったらよかったのに…」
真一「またまたまた…、からかってるやろ?」
優香「普通は襲うやろ?」
真一「よう(よく)知ってる優香ちゃんやから、そんな無茶ようせん(しない)わ」
優香「そっか…。しんちゃんらしいなぁ…(笑)」
真一「………」
優香「しんちゃん、昔から優しいし、真っ直ぐで真面目やからね…。じゃあ、朝ごはん作るね」
真一「うん…」
優香「うん(笑)」
優香は真一の頭を撫でてから、ベッドから出て、キッチンで朝食の準備にとりかかった。
しばらくして朝食が出来上がり、優香は真一を呼んで朝食を食べる。食べ終えて時計を見ると、11時を過ぎていた。
真一「もう昼か…」
優香「今日は2人でゆっくりしよっか」
真一「あぁ…」
2人は外に出ず、その後もずっとマンションの部屋で話していた。
優香「しんちゃんは、よく眠れた?」
真一「あぁ…、優香ちゃんを寝かしつけてたよ(笑)」
優香「うっさいなぁ…」
真一「(笑)」
優香「どうだった、私と一夜を共にして?」
真一「寝かしつけてたなぁ…。優香ちゃん、かなりお疲れのようやったから…」
優香「しんちゃんも、福町の職場から来てくれたから、車の運転で疲れてたもんね…」
真一「まぁなぁ…」
優香「しんちゃん…」
真一「ん?」
優香「昨日の続き、話さへんか?」
真一「幼なじみとしての話か?」
優香「うん…」
真一「昨日聞いたけど、盆休みから一週間で寂しかったんか?」
優香「…うん」
真一「なんで?」
優香「また新潟で『ひとりぼっち』になったから…」
真一「そうか…。たった一週間やのに?」
優香「うん…」
真一「それは尚更、誰か近くにおって(居て)もらわんとなぁ…」
優香「しんちゃんがおってよ(居てよ)」
真一「生粋の北町南町の人間やで(笑)」
優香「たまには
真一「そんなこの前までのアイツ(森岡)みたいに、しょっちゅうは
優香「大学にはいないよ。森岡くんみたいには無理でも、会いに来てほしい」
真一「なんでオレなん?」
優香「…しんちゃんは幼稚園の時から知ってる幼なじみやからや。私のこと、一番よく知ってるやんか」
真一「不器用やしアホやし、なんの取り柄もないのに?」
優香「いいの❗ 私はしんちゃんに来て欲しいの❗」
真一「村田さんとかとも連絡取り合ってるんやろ? 村田さんとか加藤さんとか滝川さんではアカンの?」
優香「くーちゃん(村田)たちはともかく、とにかく私はしんちゃんがいいの❗」
そう言って、優香はまた真一にひっついた。真一は困惑した。
真一「優香ちゃん、幼稚園と高校の時はさすがにここまで甘えとってないけど、どうしたんや?」
優香「…………」
真一「…そんなに甘えたかったん?」
優香「うん…甘えたいよ。寂しかった、しんちゃん…」
真一「そうか…」
優香「寂しくなかった?」
真一「うーん…、『新潟の大学へ行くんやから仕方ない』って、頭の中ではわかってるんやで。けどなぁ、体が『えっ、高校の時、毎日見てた顔がおらん』って反応起こして…。いや、頭の中ではわかってるんやで。それでも体は『なんで?』って聞いてきてた。何かオレの中で『ケンカ』が起きてた。そんな矢先にアイツ(森岡)から呼び出されたんや」
優香「そっかぁ…。なぁ、しんちゃん」
真一「ん?」
優香「それで、どうしたらいい?」
真一「…………」
優香「時間かかって考えてきてくれたんでしょ?」
真一「うん…」
優香「なぁ、どうしたらいい?」
真一「…………」
優香「しんちゃん…?」
真一「そのことなんやけど…」
優香「うん…」
真一「ちょっと確認したいことがあるんや…」
優香「うん、何?」
真一「…………」
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