第29話 23年前の夢を見る真一…『真一と優香・夢の中で「腹を割って話す」』①

(回想・夢の中)

優香のマンションにやって来た真一は、優香に部屋を案内され、荷物を置く。



優香「しんちゃん、ご飯食べた?」

真一「あぁ、サービスエリアで適当に食べた」

優香「お腹すかない?」

真一「大丈夫やで。優香ちゃんは晩飯食ったんか?」

優香「うん、食べたよ。今日も暑かったでしょ? お風呂、沸かしてあるから入って。仕事終わりでそのまま新潟ここに来てくれたから…」

真一「ええの?」

優香「うん。だって、私の用事で来てくれたんやから、それくらいはしないとね…」

真一「ありがとう。あ、これ南町の土産…」

優香「あ、紅茶のカップケーキや。ありがとう。お風呂、洗面所のところだから…。入っておいでよ」

真一「わかった。じゃあ、お風呂よばれます(いただきます)」

優香「どうぞ」




真一が風呂に入る。真一は、夢の中といえ、夢がかなりリアルで少し困惑していた。真一が心の中で呟く。




真一(夢とはいえ、何なん、このリアルさは?)



すると風呂の外、脱衣場から優香が声をかける。




優香「しんちゃん」

真一「ん、何?」

優香「バスタオル、ここに置いておくね」

真一「あ、ゴメン、ありがとう」

優香「うん。なぁ、しんちゃん…」

真一「…ん? どうしたん?」

優香「…ううん、なんでもない…」

真一「…うん」




優香が脱衣場を後にする。真一は、優香が何か言いたそうな感じだったが、少し考えつつもあえて気にしなかった。『いつものこと』だと思ったからだ。しかし真一は、心の中で優香の気持ちを察した。





風呂からあがった真一は、リビングに向かう。




優香「しんちゃん、お茶飲む?」

真一「あ、ゴメン。ありがとう」



優香が冷たいお茶をコップに注ぎ、真一に渡した。真一がお茶を飲んだ。


少し間が空き、優香から話し始める。



優香「しんちゃん、もう今から『腹を割って』話してもいい?」

真一「あ、あぁ…」



夢の中なのに、真一は内心動揺していた。



優香「しんちゃん、来てくれてホンマにありがとね(笑)」

真一「いや、こちらこそ、夜遅くになってしもうて(しまって)…」

優香「ううん、大丈夫。仕事終わりでそのまま来てくれたんだから。それより、やっと新潟に来れたね(笑)」

真一「そうやなぁ…。それよりどうや、ゴールデンウィークからホンマの『一人』になって…」

優香「うん…。北町の実家におったら(居たら)家族がいるし、高校に行けばしんちゃんとかくーちゃん(村田)とかと会ってたから何とも思ってなかったけど、新潟はホンマに一人やから…」

真一「アイツ(森岡)が定期的にここに来てたんやろ?」

優香「3週間くらいおき…、早かったら隔週で来てたなぁ」

真一「でも、なんで『飽きた』んや?」

優香「しょっちゅう来られるのも…と思った。それにね…」

真一「それに…?」

優香「ホントは森岡くんより、しんちゃんに会いたかったんや」

真一「なんで?」

優香「お盆前に電話で話したでしょ。『彼氏より幼なじみに会いたかった』って…。変な話でしょ?」

真一「変かどうかはわからんけど、なんでまたよりによってオレなん?」

優香「…しんちゃんだから」

真一「…そうか」

優香「うん…。あ、夜遅いし、もう2時過ぎてる。今日のところは寝よっか。また明日、続きを話そ」

真一「あ、うん」

優香「じゃあ、しんちゃんはベッドで寝て」

真一「ベッド? オレがベッドで寝たら優香ちゃんはどこで寝るんや?」

優香「私? ベッド」

真一「………。いや、優香ちゃんがベッドで寝たら、オレはどこで寝るの?」

優香「しんちゃん? ベッド」



真一(何か、昔も夢でも電話でこのやりとりあったよな…)



真一「襲われたらどうするんや?」

優香「襲ったらええやん」

真一「あのなぁ、だから、お年頃の女の子が『襲ったらええやん』って、アカンアカン」

優香「ええんや、しんちゃんは」

真一「オレをいじってるやろ?」

優香「さぁ…、マジやったらどうする?」

真一「…………」

優香「(笑)…。顔赤いで(笑)」

真一「…………」

優香「しんちゃん、肩の力抜いて話そ」

真一「どないしたんや(どうしたんだ)?」

優香「会いたかった、しんちゃん…」

真一「先週(盆休み)会ったやろ?」

優香「いいの。会いたかったの」

真一「まだ一週間やで」

優香「いいの❗」

真一「そうか…」

優香「うん…」




優香が真一の右肩にもたれる。真一は黙って優香に右肩を貸した。そして真一は、左手で優香の頭を撫でた。



真一「とりあえず、寝よ」

優香「一緒に寝たらアカンの?」

真一「あ、アカンやろ…。ナンボ幼なじみでも、オレ、一応男やで。お年頃の女の子が男と…って」

優香「しんちゃんはいいの。幼なじみなんやから…」

真一「けど…」

優香「いいから❗」

真一「……………」



真一は夢とはいえ、かなり緊張していた。

そして、真一は優香に促されベッドに入った。



優香「どうしたん?」

真一「え…、何が?」

優香「私と一夜を共にするんやで(笑)」

真一「じゃあ、オレこたつで寝る」

優香「アカン、一緒に寝るんや」

真一「なんで?」

優香「仕事終わりで真っ直ぐ来てくれたんやから…。それに、『腹を割って』話して、『どうしたらいい?』の返事しに来てくれたんやから…」

真一「それとどう関係あるの?」

優香「それは…、しんちゃん次第やろ…?」

真一「…………」



優香がベッドの中で真一にべったり引っ付いてくる。



真一「ちょ、ちょっと…優香ちゃん…」

優香「しんちゃん…、安心するわ」

真一「…………」



真一は優香の様子を見て、それ以上何も言わなかった。本当に寂しかったようだった。



真一「そんなに寂しかったん?」

優香「うん…寂しかったよ、しんちゃん」

真一「この前、盆休みにうた(会った)ばかりやんか…」

優香「ホントはこの一週間、しんどかった…」

真一「北町に帰って、家族やオレらに会って、盆が終わって新潟に戻ったら一人やからか?」

優香「うん…。寂しかった、しんちゃん…。会いたかった、しんちゃん…。今、滅茶苦茶嬉しい」

真一「そうか…」

優香「うん…」



真一は優香の思うがままに、優香に腕枕をして、優香が真一にべったり引っ付いていても、真一は何も抵抗しなかった。



真一「寝よ」

優香「しんちゃん、ホントに襲ってもいいんだよ」

真一「今日のところはよ(早く)寝よ。安心してるんやろ? また明日があるから…。おやすみ…」

優香「うん…、おやすみ」



優香は真一にべったりと抱きつき、2人はそのまま寝たのだった。










ここで、夢から覚めた真一だった。頭を抱えていた真一だった。






真一(生々しいわ…。これ、ホンマに夢か? 何か優香ちゃん、積極的やったなぁ…。どうしたんやろ? それに昔、何か京都でもこんなことあったような…)



そう、それは真一が昔勤めていた会社の同期で、優香にそっくりだった長島と、研修後に長島のマンションで真一が泊まることになった時のことだった。












(回想)

長島「泊まらへん?」

真一「お年頃の女性の独り暮らしのところに男が…って」

長島「大丈夫や。しんちゃんは大丈夫やって」

真一「ホンマに付き合ってるんなら、100歩譲って良しとしよう。オレらは現在、会社の同期の同い年やけど、友達っていうとこや」

長島「友達ならかまへんやん」

真一「どこで寝たらええの?」

長島「しんちゃんは、ベッドかな…」

真一「……、りっちゃんはどこで寝るんや?」

長島「私? ベッドやで」

真一「りっちゃんはベッドで寝るんやろ?

で、オレは? 」

長島「しんちゃん? ベッド」

真一「………、襲われたらどうするんや?」

長島「襲ってもええで。私を襲いたかったら襲ってよ。私は積極的やで(笑)」

真一「なぁ、欲求不満なんか?」

長島「どうなんやろ? しんちゃんは真面目やから、私もしんちゃんを見習うわ(笑)」










真一(どこもかしこも似たような話…。一体、どうなってんねん(どうなってるの)?)

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