第25話 23年前の夢を見る真一…『23年ぶりの「どうしたらいい?」』⑧

真一と浅田がスマートフォンで話している。



浅田「それで、幼稚園へ行ったんや(笑)」

真一「うん。まさか、夢の話やのに考えさせられるなんて、思ってもみなかったわ」

浅田「けど不思議な体験しはりますなぁ(しておられますね)(笑)」

真一「とんだコロナ禍やわ」

浅田「それで幼稚園で考えて、ヒントは見つかったんか?」

真一「うーん、見つからんことはなかったけど、確実に見つかったとも言えんかった。ただ…」

浅田「ただ…?」

真一「うーん、あまり物事の整理がつかんかった」

浅田「そうか…。それでその後はあの人(優香)の夢は見たんか(見たのか)?」












(回想)

真一は幼稚園の園舎を見ながら、過去の記憶を思い返し、夢の中で優香が『どうしたらいい?』と聞いてきた質問に対して、23年が経った今、改めて当時の優香に何と答えたら良かったのか、頭の中で整理していた。しかし、これといった気の効く答えが見つからない。記憶を整理しきれない真一だった。当時の自分は優香に対して『トラウマ』を持ちつつも、前向きな返事がどうしたらできたのか、ずっと考えていた。




真一(記憶が甦って、なんとなくヒントは見つかった。しかし23年前にオレは優香ちゃんにどう返事したら良かったのか…?)





真一は今も健在の不器用ぶりを発揮させながらも、23年前の夏、優香への返事の言葉を探していた。




真一は自宅に戻り、幼稚園で思い返していた記憶を基に、23年前の優香について考えていた。『23年前の話を今更考えることではない』と思っている真一だが、優香の夢を連日見ていることもあり、1日も早くこの状態から抜け出したい気持ちと、優香との『切ない話』が夢に出てこないようにする為の一心でもあったので、敢えて考えることにした。










(回想・真一の記憶)

森岡「お前はアイツ(優香)の幼なじみやろ。アイツのこと、誰よりもお前が一番よう(よく)知ってるやないか」


………………………………………………


森岡「お前なぁ、アイツ(優香)とお前はただの幼なじみやない。幼なじみ以上の仲や。オレが言うのもなんやが、今度はお前がアイツの相手になってやらんのか?」

真一「オレはそんなんやない。同級生や」

森岡「なんで彼女にしようとせんのや?」


………………………………………………


大川先生「あんた、相当傷ついてるんやな…。その事(叔父さんの事)を考えんと加島さんのことだけ考えられんか?」

真一「優香ちゃんのこと考えたら、(叔父さんの事が)出てきますわ」


………………………………………………


幼稚園でイスを取りに行くのは真一の日課になった。



真一「優香ちゃん、はい」

優香「ありがとう」



………………………………………………


優香「どうしたらいい?」














真一はずっと黙って考えていた。




真一(あの時森岡が、オレに優香ちゃんと別れた話をわざわざ呼び出して話したのはなんでやったんや? 強がりも言うて未練タラタラやったのに…。まさかアイツがオレに言うたことは、『強がり』だけやなくて、ホンマに(説得)言うてたんか? そやけど、あの時オレは『叔父さんの事』で『トラウマ』になって、全く前向きになれんかった。その結果、あんな切ない話になって…。オレは優香ちゃんにホンマにどう声かけたらよかったんやろか…)










(回想・真一の記憶)

優香「…寂しいよ。(電話で)しんちゃんの声しか聞こえへんから…」

真一「そうか…」

優香「しんちゃん」

真一「ん?」

優香「声聞けてよかったけど、会いたい…」

真一「寂しいんやな…」

優香「…寂しいよ。しんちゃん寂しい…」


………………………………………………


優香「なぁ、しんちゃん」

真一「なんや?」

優香「私、どうしたらいい?」

真一「どうしたら…って?」

優香「私、森岡くんと別れたやんか」

真一「うん」

優香「私、これからどうしたらいい?」

真一「どうしたら……って…。どうしたらいいんやろなぁ…(笑)」

優香「どうしたらいい?」

真一「いや、今まで優香ちゃんに相談されたことないから、初めてで…。どうしたらいいんやろなぁ…ホンマに」

優香「………」










真一(新潟でひとりぼっちになった優香ちゃんが『寂しい』と言ったのはホンマに寂しかったんやろうけど、森岡と別れてホンマにひとりぼっちになってしもうて、オレが電話やら手紙とかで話して、愚痴こぼしてきた時の『寂しい』は相当マジやったのはわかってた。けど、ここまで重症やったとはなぁ…。幼稚園の時と高校の時のしょんぼり顔、今から考えたら新潟の大学へ行っても、しょんぼりしてたんやろなぁ…)












浅田「かなりマジで考えてたんや」

真一「23年の時を経て…」

浅田「不思議な話やなぁ…。もう終わった話を夢のせいで『リベンジ』させられるとはなぁ…」

真一「今更どうすることもできへんのに(どうすることもできないのに)やで…」

浅田「このコロナ禍、あんたは自分の人生を見直す時間なんとちゃうか?」

真一「どうなんやろなぁ…」

浅田「いいんじゃないですか?(笑)」

真一「今更どうすることもできへん(できない)のに?」

浅田「ひょっとしたら、今後何かあるんかもしれんで(笑)」

真一「ないわ❗ オレにはもう、みつきという嫁がおる(いる)からなぁ」

浅田「いやいや、北町南町におって、23年ぶりにバッタリ出会うかも知れんで(笑)」

真一「23年とちゃう(違う)。オレが入院した翌年に会ったのが最後や」

浅田「ということは…」

真一「15年程やな」

浅田「それでも15年か…」

真一「会うのは夢の中で充分です」

浅田「いやいや、ひょっとしたらあの人(優香)があんたに会いたいかもしれんやんか(笑)」

真一「それはないわ。もう家庭もってるから…」

浅田「それで、あんたが考えて、夢にまた出てきちゃった(出てこられた)んか?」

真一「…………」

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