第20話 23年前の夢を見る真一…『23年ぶりの「どうしたらいい?」』③

(回想・夢の中)

真一は車で優香を迎えに行く。真一は迎えに行く道中もずっと考えていた。


しばらくして、優香の家に着いてしまった。真一の結論は出ていない。優香が何も言わなければ何も起こらないので、それを待つしか…とも考えていた。



優香「おはよう。2日連続でありがとね」

真一「いえいえ」

優香「さて、どこで話しますかね」

真一「どこ行きましょ?」

優香「しんちゃんはどっか行きたい?」

真一「別に。優香ちゃんが迎えに来てって言ったから来ただけやで」

優香「どうしようかなぁ…」

真一「あてのないドライブする?」

優香「そうしよか」

真一「かまへんか?」

優香「いいよ。しんちゃんにおまかせするわ(笑)」

真一「わかった」

優香「昨日の遠足も楽しかったけどね。ただ…今日はずっとしんちゃんと2人っきりになれるから。今日は私のワガママでずっとしんちゃんといたい」

真一「どうしたん?」

優香「じっくり『腹を割って話す』からやで(笑)」

真一「そうか…」



真一(予想外の展開になった。逃げ場がない。どうしよ…)



真一は焦っていた。

真一と優香は沈黙が続いた。



優香「緊張してる?」

真一「ん? いや、別に…」

優香「腹を割って話すんやから、緊張するよね。いつもと違うから…」

真一「どうしたん?」

優香「しんちゃんは明日から仕事やし、私も明日新潟に戻るし。今日しかなかったから…」

真一「そうやなぁ…。でも今日は誰とも会わへんのや…」

優香「うん。今日はずーっとしんちゃんと2人っきりやで(笑) それで今日は、しんちゃんの『トラウマ』を解こうとしてる」



ここから真一は、当時『トラウマ』があって、優香に対して前向きになれず、切ない状況に陥る。それは真一自身も、さすがに夢で見たくなかった。そして、あれからまもなく四半世紀が経とうとしている今、真一はもし自分に『叔父さんのこと』、つまり『トラウマ』があっても、前向きに考えていたらどうなっていたのか、考えたのだった。しかし真一は、あくまでも『切ない話』を夢では見たくないので、その場しのぎで夢の中で優香に話そうとした。そして真一は、自分がこの当時の状況と気持ちを、夢の中で思い出しながら優香に話す。



真一「あのな、優香ちゃん…」

優香「ん? どうしたん?」

真一「その事なんやけどな…」

優香「うん」

真一「オレの『トラウマ』のことはちょっと置いといて、前に優香ちゃんと電話で話した時に、優香ちゃんがオレに『どうしたらいい?』って聞いてきたやんか」

優香「うん」

真一「それで、この盆休みに会うときに『腹を割って話す』って約束したやんか」

優香「うん」

真一「それで、あの電話から今まで『どうしたらいいんやろ?』って考えとったんや(考えてたんだ)」

優香「うんうん」

真一「オレが優香ちゃんに相談してて、今まで優香ちゃんから相談されたことなかったから、立場が逆転してオレ『どうしよ…』ってなってたのも事実や」

優香「うん」

真一「オレ、アホやから無い知恵絞って昨日も優香ちゃんと『遠足』行きながらも考えとった」

優香「そっかぁ…」

真一「けど、考えても考えても、案が浮かんでこないから頭の中真っ白で、今も皆目検討つかん状態なんや」

優香「…そうなんや」

真一「答えどころか、ヒントすら見つからんのや…」

優香「…うん」

真一「この前電話で『盆休みに会うとき、腹を割って話さへんか? 幼なじみとして』ってあれだけ大口叩いたのに、このザマや…」

優香「ううん、大丈夫や…」

真一「あのな、例えばもし、村田さんとか加藤さんとか、白木とかから相談持ちかけられたら、オレ、一般的な所謂『当たり障りの無い』返事をすると思うんや」

優香「うん」

真一「でもな、今回は優香ちゃんの話や。オレの立場からしたら、ええ加減(いい加減)な返事出来んのや。なんせ幼稚園の時から知ってる『幼なじみ』やし…」

優香「………」

真一「それでな、もう少し考える時間が欲しいんや…。アカンかな?」

優香「そうなんや…。しんちゃんが私のこと、そんなに考えてくれてたんや。事情はわかったよ」

真一「ゴメンな、すぐに期待に応えることができなくて…」

優香「ううん、大丈夫や」

真一「かといって、いつまでも引き伸ばすわけにはいかんから、もう少し時間が欲しいんや…。アカンかな?」

優香「わかった。じゃあ、待ってるね。返事は電話してくれるの?」

真一「返事が出来そうになったら、一回新潟に電話かけるわ」

優香「わかった。ありがとね。しんちゃん、真剣に考えてくれてるんや…」

真一「そやからオレ、優香ちゃんにはええ加減なこと出来んやんか❗」

優香「そっかぁ…。さすがしんちゃんやな(笑)」

真一「オレを誰やと思ってんねん? 幼なじみの真一くんやで❗」

優香「そうやな、真一くん(笑)」

真一「で、これからどうする?」

優香「どうしよう…。どっか遊びに行く?」

真一「どこへ?」

優香「久しぶりにボウリング行かへん?」

真一「行きたい?」

優香「久しぶりに2人で行こ(笑)」

真一「あぁ…」



そう言って、真一と優香はボウリングを楽しみ、その後、優香お手製の弁当を食べて、2人はあてのないドライブを楽しんだ。真一と優香は夢の中でも話題は尽きなかった。













浅田「なるほどね…」

真一「昔は、そこまで柔軟に考えられんかった。ただ『トラウマ』があったから、その事だけで話してたから…」

浅田「そうか…。それで、ヒントは見つかったんかいな?」

真一「さぁ、それやがな…」











(回想)

この日を境に、真一の夢に変化が起こった。

翌日から見た夢はこうだった。






(回想・夢の中)

優香「なぁ、しんちゃん」

真一「なんや?」

優香「私、どうしたらいい?」

真一「どうしたら…って?」

優香「私、森岡くんと別れたやんか」

真一「うん」

優香「私、これからどうしたらいい?」

真一「どうしたら……って…。どうしたらいいんやろなぁ…(笑)」

優香「どうしたらいい?」

真一「いや、今まで優香ちゃんに相談されたことないから、初めてで…。どうしたらいいんやろなぁ…ホンマに」

優香「………」







それは電話で話していた時の夢だった。しかも同じ夢をしばらくの間、毎晩見ていた真一だった。





真一(一体どうなってんねん❗ 『白線流し』の次は『どうしたらいい?』か…。『切ない話』の夢を見たくない一心で、優香ちゃんに夢の中であんなふうに話したけど、何か同じ夢を見るということは、これ夢の中の優香ちゃんがオレの返事を待ってるんか?…って。まぁ、言うても所詮夢やから、そんな深刻に考える必要はないし…。というか、もう夢見たくないんやけどなぁ…。その場しのぎで言うたのが、今度はかえって仇になったんか? ところで優香ちゃんの夢をまもなく半年見ることになるんですけど…。どうしたいんや、優香ちゃんよ❗)










真一「もう15年会ってもないし、連絡先も知らんし…。困ったもんや…」

浅田「『コロナ禍』はあんたにとって『心の旅』へ出掛けてるなぁ…。コロナが終息したら、何かあるんとちゃうか(あるのと違うか)?(笑)」

真一「それはないわ。今更、うても、オレには『みつき』という嫁がおるからなぁ…」

浅田「………。それでまた、同じ夢を見てはるん(見ておられるの)ですか?(笑)」

真一「『白線流し』の次は『どうしたらいい?』やで。困ったもんや…」

浅田「一週間くらい見てたんか?」

真一「少なくとも一週間は見たなぁ…」

浅田「完全に洗脳されてますね(笑)」

真一「さぁ、それでやな…」

浅田「……?」

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