第18話 23年前の夢を見る真一…『23年ぶりの「どうしたらいい?」』①

(回想・夢の中)

真一はお盆行事が終わると、残りの盆休みで優香と会う約束をしていた。

8月15日の夜、仏壇のお盆の飾りを片付けている最中、自宅の電話が鳴った。



真一「もしもし」

優香「もしもし」

真一「おう、帰ってきたか?」

優香「うん。明日どうしよ?」

真一「迎えに行こか?」

優香「うん」

真一「どんな予定なんか知らんけど…」

優香「くーちゃん(村田)に会う予定なんやけど…」

真一「何時に迎えに行ったらいい?」

優香「9時とかでもいい?」

真一「ええよ」

優香「じゃ、お願いします」

真一「わかりました」

優香「しんちゃん」

真一「ん?」

優香「ありがとね」

真一「おう」


真一が電話を切ると、母親に言われた。


真一母「誰?」

真一「優香ちゃん」

真一母「帰ってきとってんか?」

真一「うん。明日アッシー(運転手)してくれって頼まれてんねん」

真一母「気ぃつけて行ってよ」

真一「あぁ」

真一母「元気しとってんか?」

真一「うん。変わらんみたいやなぁ」

真一母「そう」


翌朝、真一は車で優香の家に迎えに行った。真一は朝から緊張していた。なぜなら電話で『今度会った時に腹を割って話さないか?』と言ったからだ。言い出しっぺの真一は自分が優香と腹を割って話せるか不安だった。


真一は優香の家の手前まで来たとき、車を停めた。そして夢の中で考えた。



真一(当時は腹を割って話せたやろか…。この当時、新潟からの電話を聞いていると、オレを誘惑してたのか? まぁ、気のせいや…。幼なじみや…)



真一は深呼吸をしてから再び車を走らせ、優香の家に着いた。真一は幼稚園の時、幼稚園バスが確かこの辺に停まったなぁ…と思いつつ、なんとなく行ってみたら着いた。そう、真一は幼稚園バスの時以来で、実は初めて来たのだ。



優香母「おはようございます」

真一「あ、おはようございます」

優香母「ごめんね、優香が無理言って」

真一「いえいえ、休みですから…」

優香「おはよう」

真一「おはようさん。あ、しんちゃん」

新次「おはよう」

真一「おはよう。優香さん、お姉さんは?」

優香「あ、出掛けてるんや。お姉ちゃん、真一くんに会いたがってた」

真一「オレも。だって、会ったことないんとちゃうか?」

優香「そうなんやって❗ お姉ちゃんも言ってた(笑)」

真一「タイミングが合わんなぁ…」

優香「普段の休みの日とかにウチ来たらええやん。お姉ちゃんに会えるで(笑)」

真一「確かに…(笑)。行きますか?」

優香「うん、行こっか」

優香母「よろしくお願いします」

真一「では行ってきます」

新次「いってらっしゃい」

優香「しんちゃん、夏休みの宿題するんやで」

新次「うん」



真一と優香は車に乗り、出発した。優香は頭にハットを被っていた。真一はまるで幼稚園の頃の優香を思い出していた。



優香「しんちゃん」

真一「ん?」

優香「今日は腹を割って話すんやんなぁ」

真一「あぁ…」

優香「いま2人やで。くーちゃん(村田)の所に着くまでは話そか」

真一「…うん」

優香「しんちゃん」

真一「ん?」

優香「結局新潟に来られんかったなぁ(笑) 」

真一「しゃあないなぁ、都合合わんかったから…」

優香「そうやな…」

真一「あれ(電話した時)から大丈夫やったか?」

優香「うん、大丈夫。心配させてゴメンな」

真一「いえいえ、幼なじみですから…」

優香「しんちゃんは、ホンマに幼稚園の時から優しいね」

真一「そうかぁ? 普通やと思うけどなぁ…」

優香「あのな、この間拓(森岡)くんから手紙が来たんや。『もう一回、やり直してもらえませんか?』って」

真一「え? アイツ、オレには『もうええねん』とかえらい強がり言うとったけど、やっぱり手紙出したか(笑)」

優香「読み当たってるで(笑)」

真一「どうするん?」

優香「もちろん断ったで(笑)」

真一「断るって、相当やったんやなぁ(笑)」

優香「あ、この話、しんちゃんしか言ってないから、みんなには内緒な」

真一「え? 村田さんとかには言わへんの?」

優香「うん。しんちゃんだけやで」

真一「あ、そう。わかった」

優香「しんちゃんと話してたら、気が楽やわ」

真一「そうか? オレなんか、いつもと変わらんやんか。誰とでも話してても普通やろ」

優香「そんな事ないよ。やっぱり幼なじみは普通の友達とはまた違うんかなぁ…」

真一「変わらんやろ」

優香「そうか?」

真一「うん。ところで大学は楽しいか?」

優香「うん、楽しいよ」

真一「そうか。良かった」

優香「でも、しんちゃんはちゃんと仕事してるから、偉いよ」

真一「そんなことないよ」

優香「ううん、私みたいに大学生は遊んでるようなもんやで。だから就職してるしんちゃんはとっても偉いよ。しんちゃん、昔から真面目やから…」

真一「ええ加減な男やで。不器用やし」

優香「不器用なのは昔からなんやで仕方ないけど、ええ加減ではないよ。しんちゃんはちゃんとしてるよ」

真一「優香ちゃんだってちゃんとしてるやんか。オレ、不器用はどないもならん(どうしようもない)からなぁ」

優香「しんちゃんの不器用は私の器用でカバーできるからね(笑)」

真一「そうやな。けど今は新潟やんか。カバーできへんやん」

優香「4年で帰ってくるからね。それまではガマンして。新潟にも来てよね」

真一「だから行こうとしたら、お互い都合つかんかったというオチや(笑)」

優香「でも、こうやってお盆に会えたから良かった」

真一「そうやな…」

優香「しんちゃん…」

真一「ん?」

優香「嬉しい」

真一「なんや、どないしたん急に?」

優香「ん?」

真一「……アイツ(森岡)と別れてから1人やったから心細かったし寂しかったんやろ?」

優香「……うん」

真一「実はアイツから話聞いた時、『今頃、大丈夫か?』っていう方が気になってたんや。アイツと別れたことそのものはどうでもよかった。ただ、優香ちゃんがひとりぼっちなのが一番心配やった」

優香「なんで気になったん?」

真一「優香ちゃんの性格上、ひとりぼっちにしたらアカンからや。これまでは北町の家ではお姉ちゃんと弟のしんちゃんがいたから、彼氏おらんでも大丈夫やった。けど新潟では1人やろ?」

優香「しんちゃん…」

真一「違うか?」

優香「わかってたん?」

真一「何となくやけど、恐らく…と思ったんや」

優香「さすがやな。離れてても私のことがわかるなんて、さすが幼なじみやな」

真一「だてに幼なじみを14年(間9年空いてるけど)やってますからね(笑)」

優香「ホンマ幼稚園の時と一緒やな」

真一「なんや?」

優香「しんちゃん…ありがとう❗」

真一「あぁ…。腹割って話せたかな? オレは話したけど」

優香「うん、私も。もっと話したいなぁ」

真一「いつでも話聞くで」

優香「じゃあ、また後で2人っきりになったらね」

真一「わかった」


そして車は村田の実家に着いた。


村田「久しぶり」

優香「くーちゃん、久しぶり、元気?」

村田「元気やで。ゆうちゃんも元気そうやな」

優香「うん、お陰さまで…」

村田「堀川くんも元気?」

真一「暑いけど何とか…」

村田「暑いもんなぁ…。あ、ひっちゃん(加藤)、彼氏ができたんやって」

優香「ひっちゃんが?」

真一「そうなんや」

優香「どこの人なん?」

村田「それが、近所のお兄ちゃんなんやって」

真一・優香「近所のお兄ちゃん…」

村田「近所のお兄ちゃんって、となりの家のお兄ちゃんらしいよ」

優香「ということは、『幼なじみ』…」

真一「…………」

村田「今日はデートなんやって。さっきまでひっちゃんと話してたんやけど、ずっとノロけてたわ(笑)」

優香「そうなんや」

村田「で、実は私も彼氏出来たんや」

優香「くーちゃんも?」

村田「うん」

優香「誰なん? 近所のお兄ちゃん?」

村田「近所のお兄ちゃんやないけど、短大の同級生なんや。カッコいいで(笑)」

優香「よかったなぁ…。顔がデレデレやんか❗(笑)」

村田「ホンマ、カッコいいし、私のことよく考えてくれるし、一緒におっても安心するわ(笑) ゆうちゃんも彼氏見つけたら?」

優香「え? うん…」

村田「それでな、私今からデートなんや。ちーちゃん(滝川)も帰ってきてるで」

優香「そうなんや…。しんちゃん、おノロケのくーちゃんほっといて、ちーちゃんとこ行こか」

真一「わかった」

村田「ちーちゃんの家知ってる?」

真一「オレは知らんけど、優香さんは知ってるんか?」

優香「私も知らんのや。行ったことなくて…」

村田「じゃあ、ちーちゃんのところ案内するで、そのあと私を梅沢駅まで送って欲しいかなぁ…」

真一「かまへんで」

村田「やったー(笑)」

優香「じゃ、行こか」

真一「うん」


3人は車に乗って滝川の家に向かった。

真一は当時を思い出しながら、夢の中でも少し動揺していた。


真一(『近所のお兄ちゃん』…幼なじみ…。優香ちゃんはこの時、どう思ってたんかなぁ…。オレにあんなこと(叔父さんの事)さえなかったら、とっくに優香ちゃんに『付き合ってほしい』って言うてたのに…)



村田「2人とも静かやなぁ」

優香「そうかぁ?」

真一「え、普通やで」

村田「ひっちゃんの彼氏のこと、気にしてる?」

優香「気にしてないよ」

村田「近所のお兄ちゃんもひっちゃんも、小さいときから両思いやったんやって。それが最近わかったらしくて、付き合う事になったって」

優香「そうなんや…」

村田「あ、ここを左に曲がって、ずっと山奥まで行って」

真一「了解」



しばらくして、滝川の家に到着した。



滝川「あ、ゆうちゃん、くーちゃん」

優香「ちーちゃん、久しぶり」

村田「ちーちゃん、元気やった?」

滝川「うん。私は元気」



3人は仲良く再会を喜んでいた。



滝川「堀川くんも元気してる?」

真一「うん、何とか…」

滝川「今日は運転手?」

優香「私のアッシー(笑)」

村田「良いアッシー見つけたなぁ(笑)」

滝川「堀川くん、お疲れ様」

真一「いえいえ、どちらさんも遠いとこから帰ってきとってやからね…。あ、村田さんの電車の時間もあるし、乗ってもらおうかな…」

優香「ちーちゃんも乗って」

滝川「じゃ、おじゃまします」



村田がこれから彼氏とデートなので、梅沢駅へ送る。

梅沢駅で村田と別れ、優香と滝川を乗せていると、真一は優香に聞かれる。



優香「どうするん?」

真一「何か予定あるんか?」

優香「特にない」

真一「誰かおるか聞いてみるか?」

優香「うん」



真一は車から降りて、自動販売機で飲み物を買いに出ながら電話する。

優香と滝川は車内で話していた。



しばらくして真一が車に戻る。



真一「お待たせしました。どれか好きなん飲んで」



真一はお茶とミルクティ、それにコーヒーを買ってきた。



優香「しんちゃんは何飲むの?」

真一「オレは残ったやつでいいよ。2人好きなの選んで取って」

優香「じゃあ私はミルクティ」

滝川「私はお茶でいいわ」

優香「しんちゃん、コーヒーでいい?」

真一「かまへんで」

優香「ところで、これからどこ行くの?」

真一「山中町」

滝川「山中町まで行ってどうするの?」

真一「藤岡がおるみたいやから、行かへんか?」

優香「行こっか。ちーちゃん、行ってもいい?」

滝川「私は大丈夫やで」

優香「じゃ、アッシーしんちゃん、しゅっぱーつ❗」



2人を乗せた真一の車は、梅沢駅から30分程の山中町へ向かった。真一はひたすら車を走らせた。優香と滝川は山中町に到着するまで話していた。


藤岡の家の近くまできた。途中の大山ダム公園の駐車場で待ち合わせすることに。そして藤岡と再会し、4人で公園を散策する。



優香「藤岡くん、久しぶり」

滝川「久しぶり」

藤岡「久しぶり」

滝川「元気やった?」

藤岡「オレは京都へ勤めに行ってて、しょっちゅう帰ってきてるから、ほぼ地元通いみたいなもんやで。2人とも元気やった?」

滝川「私は元気やで」

優香「私も」

藤岡「そこの不器用な人は?」

真一「オレ? 先週も君と会ってるよね(笑)」

藤岡「会ったね、京都で(笑)」

優香「京都行ってたんか?」

真一「金曜日の夕方になったら『迎えに来い』って電話かかってくん(来る)ねん。文句があるならこの人たちに言うてな」

優香「私のアッシーやから、あんまり使わないように(笑)」

藤岡「しかと心得ました(笑)」

真一「ちょっと待てぃ。優香さん、それはオレが言うセリフや」

藤岡「やっぱり、あんたは幼なじみには勝てないねぇ(笑)」



滝川も大笑いしていた。


優香は自分がかぶっていたハットを真一にかぶせる。されるがままの真一は優香のハットをかぶっていた。そして真一はパンツのポケットに手を入れて歩いていると…



優香「ポケットに手を入れて歩く幼稚園児がおるか❗」

真一「えっ?」

優香「幼稚園児はなぁ、手をふって歩くんや」


藤岡と滝川が爆笑する。真一は手をふって歩く。


優香「はいみんな、そしたら隣の人と手を繋いで先生についてきてくださーい」

真一「先生、さとしくん(藤岡)とちえみちゃん(滝川)はわかるけど、オレは1人やんか❗ オレはポケットに手でええやろ?」

優香「しんちゃんは先生と手を繋ぐんや❗」


このやりとりに藤岡は笑っていた。


真一「えー…、はい…」


と、真一は幼稚園以来、夢の中でも優香と手をつないだ。

藤岡は爆笑、滝川も笑っていた。


真一「言っとくぞ、12年ぶり、あの時(幼稚園)以来やぞ❗」

藤岡「衝撃やー❗ 手つないでるー❗ 高校の時では考えられん光景や❗」

真一「え、そんなに珍しいか? 幼稚園の時、しょっちゅう手つないで歩かされたで。普通やんなぁ、優香先生」

優香「うん。しんちゃんと手つないでた」

藤岡「フラ◯デーに掲載されるかも(笑)」

真一「いや、そんなに珍しいことやないんやけどなぁ…」


優香は少し嬉しそうだった。


そして真一は優香を、藤岡は滝川をそれぞれ自分の車に乗せ、途中町に戻る。町に戻って昼食をとることに。

町に戻る道中、2人きりになった真一と優香は再び話す。


真一「久しぶりに手をつないだ感想は?」

優香「久しぶりやったなぁ…(笑) ちょっと恥ずかしかったけど…」

真一「ほな、なんであんなこと言うたん?(笑)」

優香「勢いで言うた」

真一「なんやそれ(笑)」

優香「帽子かぶったら、しんちゃんらしいなぁ」

真一「なんで?」

優香「幼稚園の子や(笑)」

真一「そらぁ確かに幼稚園の時は小豆色のこんな帽子かぶってたけど…。高校の時、冬寒い時に野球帽みたいな帽子かぶって、ツバを後ろ側にしてかぶってたら村田さんが『あ、しんちゃんおはよう』って言われたことあったやんか」

優香「あったなぁ…」

真一「村田さん曰く『子供の頃のしんちゃんに見えたから』やって。オレの小さい頃なんて知らんくせに。優香ちゃんしか知らんのにやで」

優香「くーちゃんらしいわ(笑) でも、嬉しかった」

真一「ん?」

優香「みんなに会えたし、昔を思い出したし、しんちゃんのおかげや」

真一「オレ何もしてないよ。優香ちゃんの言われた通りにやってるだけやし」

優香「なぁしんちゃん、家に帰るまで話しよ」

真一「ん? ええよ」

優香「うん」



優香はまた腹を割って話したそうにしていた。

途中町に戻り、昼食を簡単に食べ、真一はデザートにアイスクリームを優香がごちそうしてくれた。運転手へのごほうびだ。

真一がトイレに行っている間にアイスクリームのクリーム部分を優香が半分食べ、真一に渡した。



真一「全部食べたらええやん」

優香「運転手のごほうびやで」

真一「いやいや、半分無くなってるやん(笑)」

優香「おいしそうやったで食べた」

真一「だから全部食べたらええやん」

優香「『半分こ』にしたかったの」

真一「それにしては、下のコーンの方がほとんどなんやけど…」


藤岡と滝川は、このやりとりでも笑う。

真一は仕方なく残り半分を食べた。



藤岡「あ、幼なじみが間接キスしてるー」

真一「別に気にせんけどなぁ…、優香ちゃんは気にする?」

優香「しんちゃんやったら気にならんなぁ」

藤岡「ごちそうさまー(笑)」

滝川「ホンマにいつまでも仲ええなぁ」



その後は藤岡が滝川を送ってくれることになり、真一はまた優香と2人きりで車に乗った。



真一「どうする、この後?」

優香「話しよ」

真一「うん。どこで話す?」

優香「車で」

真一「あと、用事はないんか?」

優香「用事は、しんちゃんと話すこと」

真一「…わかった」



そして真一は再び車を適当に走らせ、幼なじみが再び腹を割って話をする。



真一「で、話って?」

優香「私な、好きな人がいるんや」

真一「電話で言うてたなぁ。アイツ(森岡)は断ったということは、アイツ以外でって言うことやんなぁ?」

優香「そうやで」

真一「向こう(新潟)の人?」

優香「こっちの人」

真一「え? アイツと別れた理由が『遠いから飽きた』って聞いたんやけど…。でもこっちの人? どういうこっちゃ?」

優香「タクくんは大阪やから遠い。でもこっちはまだ近いよ」

真一「いや遠いで❗ 向こう(新潟)から見て、大阪もこっちも変わらんよ」

優香「そう?」

真一「うん。それでこっちの渦中の人とは会ったんか?」

優香「会ったよ」

真一「うまいこといってるの?」

優香「どうなんかなぁ…」

真一「こっちの人って、どこの人やったっけ?」

優香「同じ町」

真一「近いやん」

優香「うん。近所のお兄ちゃん」

真一「近所のお兄ちゃんやったら、近いやんか。加藤さんとこみたいにとなりの家のお兄ちゃん?」

優香「となりではないけど、近所のお兄ちゃん」

真一「なんか、今日は『近所のお兄ちゃん』よう聞くなぁ…」

優香「うん。それでな、どうしたらいい、しんちゃん?」

真一「どうしたらって…」


優香が『好きな人』について真一に腹を割って話す。


真一「どうしたら…って、どうしたらいいんやろなぁ…? 電話でも言うたけど、今までオレが優香ちゃんに相談したりしてたけど、優香ちゃんから相談受けたのは初めてとちゃうか?」

優香「そうかも…」

真一「うーん…。近所のお兄ちゃんに会ったんなら、お兄ちゃんの所へ行って来たらええやん。お兄ちゃんと腹を割って話したら? お兄ちゃんは好きな人いてるの?」

優香「わからん。しんちゃんは好きな人いないの?」

真一「え、オレ? オレは…」


真一(優香ちゃんが幼稚園のイスを取りに行った時に初めて満面の笑みを浮かべた時から大好きやった。でも当時は『叔父さん』の事があって、強烈なインパクトがあったし、高校の時村田さんにフラれた時の返事が『興味ない』と言われて『興味なかったから人に興味持たせておいて、結局興味ないって言われた』から興味なくなった。それは優香ちゃんには関係ないし、オレの問題やから、全く前向きになれんかったんやなぁ…)


真一は当時、相当悩んでいた。


優香「しんちゃん?」

真一「あ…えっ?」

優香「どうしたん? 好きな人いないの?」

真一「あぁ…。オレの事より優香ちゃんの事やろ?(笑)」

優香「そうやけど、しんちゃんの好きな人、気になる❗」

真一「なんでやねん? オレは関係ないやろ?(笑)」

優香「……参考までや」

真一「参考? オレのは参考にならんで(笑)」

優香「マジで好きな人いないの?」



真一(当時はおったで。優香ちゃんやで。幼稚園の時から優香ちゃんが大好きやった。けど、オレは当時のトラウマがあってどうしても言えんかった。よりによって夢の中までこの話出てくるんか? さて、どう返事しようか…)



真一「……」

優香「なぜ言えないの?」

真一「……昔はおった…ってとこかな」

優香「今は?」

真一「うーん…、高校の時みたいに興味ない…という訳ではないけど、わからんというか、考えたことがないというか…」

優香「そうかぁ…。私、高校の時にしんちゃんがくーちゃんにフラれて、あの時『もう興味持たん』って言ってたから、まだ尾引いてるのかな…と」

真一「尾引いてないって言うたらウソになるけど、でもどうしても通らなアカン道なんやとはわかってるけど、トラウマがね…。まぁオレのことより、優香ちゃんやな」

優香「うん…」


………………………………………………


優香「しんちゃん、明日は何してるの?」

真一「何もなければ、暑いし寝てるかな…。優香ちゃんと会う予定にはしてるけど…」

優香「なぁ、時間つくってくれへん?」

真一「かまへん(いい)で。どうしたん?」

優香「迷惑かな?」

真一「大丈夫やで。どうしたんやな?」

優香「もっと、しんちゃんと腹を割って話したいんや」

真一「今ではアカンの?」

優香「いいけど、全然時間が足りないの。しんちゃんと話してたら、ナンボ時間あっても足らへん(笑)」

真一「確かに(笑)。昔から優香ちゃんと話してたら、時間なんて全然足りんなぁ(笑)」

優香「ホンマに話が尽きんなぁ(笑)」

真一「尽きんなぁ。幼稚園から知ってるから余計やな」

優香「私、もっと腹を割って話したいんや」

真一「ええけど、どうしたん?」

優香「拓くん(森岡)と別れたときに、今までの事思い返したんや。だからしんちゃんと話したかった。で、しんちゃんが電話くれたから、めっちゃ嬉しかったんや」

真一「そうかぁ…。タイミング良かったんやな。でも手紙が来ると聞いてたんやけど…」

優香「多分、タクくんとくーちゃんがウソついたんやと思う。くーちゃんが大義名分でしんちゃんが私に電話させようと話を作ったんと違うかなぁ?」

真一「そうなんやろかなぁ?」

優香「まぁいいやん。またしんちゃんと話できて(笑)」

真一「そうかぁ。さて帰るか?」

優香「……うん」

真一「なんや、名残惜しんでるような顔して。明日も会うやろ(笑)」

優香「そうやなぁ(笑)」

真一「ほな、そういうことで。迎えに行くわ」

優香「わかった。ありがとう、いっぱい遠足連れてってくれて、いっぱい話できて嬉しかった」

真一「オレも昔を思い出したし楽しかった」


優香を家に送った後、真一は大きなため息をついた。


真一「優香ちゃんはオレのことを気にしているようだった。『叔父さんのこと』『村田さんにフラれたときの理由が矛盾している』事、そして今の優香ちゃんの様子が頭の中でグルグル回っていて、オレの頭の中はパニックやったんや。これ、また『あの話』が出てくるんか? どうしよう………」

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