第17話 23年前の夢を見る真一…『優香の相談』
(回想・夢の中)
夜中に真一の携帯電話が鳴る。
真一「…もしもし」
優香「ゴメン、寝てたよね」
真一「大丈夫。オレから電話かけ直すわ」
優香「いいの?」
真一「かまへんで」
優香「わかった。ゴメンな」
真一「おう」
真一が優香に電話する。
優香「もしもし」
真一「ゴメンゴメン」
優香「ううん、こちらこそかけ直してもらってゴメンね」
真一「固定電話から携帯電話へかけたら電話料金高いでなぁ」
優香「まぁね…。でも携帯電話から固定電話かけるのも高いやんか」
真一「オレの小遣いを減らしたら大丈夫や」
優香「ええ(いい)の? ゴメンね」
真一「じゃ、埋め合わせは優香ちゃんのクッキーか?(笑)」
優香「クッキーでいいの?」
真一「あのクッキー、ハマったからなぁ(笑)」
優香「しんちゃん、私が作ったクッキー好きやもんなぁ」
真一「いつ食べてもあれはうまい(笑)」
優香「そうかぁ…(笑)」
真一「それより、大丈夫か?」
優香「…うん。しんちゃんが電話してくれたから嬉しい」
真一「そうかぁ…。よう言うてくれたなぁ…」
優香「うん…」
真一「実はオレも今、仕事が気分的にしんどいんや」
優香「そうなん?」
真一「お互いに、しんどい気分なんやなぁ…」
優香「そうやなぁ…」
真一「ちゃんと寝れてるか?」
優香「寝てるよ」
真一「こういう事って、村田さんとかに電話とかで話してないの?」
優香「してないよ。しんちゃんだけやで」
真一「そうなんや…。いや『ガス抜き』が必要かな…って思ったんや。だから電話させてもらったんや。迷惑やったかな…」
優香「ううん、いいで」
真一「いま優香ちゃん1人やで、近くに誰かおったらええんやけど…」
優香「しんちゃん来てよ」
真一「え、オレ?」
優香「うん」
真一「相変わらず南町在住やでなぁ…(笑)」
優香「新潟においでよ。案内するわ」
真一「そうやなぁ、新潟行ったことないからなぁ…」
優香「それは尚更こっちに来ないとアカンなぁ(笑)」
真一「いつ行ったらいいの?」
優香「いつが良い?」
真一「今週末は展示会があって、来週は大丈夫かな…」
優香「来週は私がサークルの演奏会やから…」
真一「そうかぁ…」
優香は大学で吹奏楽のサークルに入っている。
優香「でも、もうすぐお盆やから、私、北町の実家に帰るよ」
真一「うん…。優香ちゃん、それまで大丈夫なんか?」
優香「大丈夫…やと思う」
真一「ホンマか?」
優香「しんちゃんがいてくれたら…」
真一「相変わらず南町やでなぁ…生粋の北町南町の人間ですから(笑)」
優香「新潟に来てよ」
真一「おう。マンションの近くにビジネスホテルかなんかあるの?」
優香「ウチに泊まったらええやん」
真一「いや、さすがにお年頃の女子が一人で暮らしてるマンションに男が…って」
優香「ええやん、しんちゃんは大丈夫や」
真一「なんでや? じゃあ、白木とか(が来て)もええの?」
優香「アカン」
真一「ほな(そしたら)、オレかてアカンやん」
優香「しんちゃんはいいの❗」
真一「じゃ、オレはとりあえずこたつで寝たらいいんやろ?」
優香「アカン、ベッドや」
真一「ベッド? 優香ちゃんはどこで寝るの?」
優香「私? ベッド」
真一「………。いや優香ちゃんはベッドで寝るやんか。オレはどこで寝るの?」
優香「しんちゃん? ベッド」
真一「襲われたらどうするんや?」
優香「襲ったらええやん(笑)」
真一「おいおい…、何言うてんの? お年頃の女子が『襲ったらええやん』って…。アカンアカン❗」
優香「そんなん、せっかく南町から来てくれるんやから、こたつでは寝させへんよ」
真一「でもそういうわけにいかんやろ?」
優香「いいの❗ しんちゃんは私と寝るの❗
しんちゃんは私と一夜を共にするの(笑) 」
真一は唖然となっていた。
真一「…なぁ、どうしたん? やけくそになってるんか? 寂しいんか?」
優香「…寂しいよ。しんちゃんの声しか聞こえへんから…」
真一「そうか…」
優香「しんちゃん」
真一「ん?」
優香「声聞けてよかったけど、会いたい…」
真一「寂しいんやな…」
優香「…寂しいよ。しんちゃん寂しい…」
真一「そうか…」
優香「しんちゃんは寂しくないの?」
真一「そうやなぁ…。うまくは言えんけど、幼稚園と高校の時、オレの横には優香ちゃんがおったのは、普段と変わらん、当たり前なんやと錯覚してたんかなぁ…。就職してから、何かポッカリ穴が開いたような感じ…」
優香「私がいないと寂しい?」
真一「…どうなんやろ…。大学行ってるんやから仕方ないと思ってるけど…」
優香「寂しくないんか?」
真一「『どっち?』って聞かれたら寂しいかな…」
優香「素直やないなぁ…(笑)」
真一「ウソはついてないけど…」
優香「ちゃんとハッキリ言ってよ」
真一「言うたやん…(笑)」
優香「あ、またはぐらかしてる(笑)」
真一「はぐらかしてへんわ。なんやねん(笑)」
優香「顔赤くなってるくせに(笑)」
真一「なってへんわ」
優香「ウソや。なんぼ『電話や』って言うても、私はしんちゃんが今どういう状況かわかるで(笑) 『わぁオレ、優香ちゃんに鋭く突っ込まれてるー』ってなってるやろ?(笑)」
真一「悪いか?」
優香「素直にならなきゃダメよ(笑)」
真一「ホンマにお盆まで待てるんか?」
優香「待てへんかも…。でも我慢する。お盆になったら会おうよ。楽しみにしてるから」
真一「わかった…。お盆は、ウチは
優香「わかった。じゃあ、16と17日に会おうよ」
真一「わかった。待ってるわ。また盆になったら、連絡して。オレも何かあったら連絡するわ」
優香「うん」
真一「あと、盆までに何かあったら携帯に連絡しておいで。今日みたいに愚痴は聞くでな」
優香「うん、ありがとうしんちゃん」
真一「うん」
優香「なぁ、しんちゃん」
真一「なんや?」
優香「私、どうしたらいい?」
真一「どうしたら…って?」
優香「私、森岡くんと別れたやんか」
真一「うん」
優香「私、これからどうしたらいい?」
真一「どうしたら……って…。どうしたらいいんやろなぁ…(笑)」
優香「どうしたらいい?」
真一「いや、今まで優香ちゃんに相談されたことないから、初めてで…。どうしたらいいんやろなぁ…ホンマに」
優香「………」
真一は優香からの突然の相談で悩んでいた。
真一「アイツ(森岡)とはやり直さんのか?」
優香「やり直さへん。それはないわ」
真一「そうかぁ…。優香ちゃん、好きな人いるの?」
優香「いるよ」
真一「そうなんや…。どこにおってん(いるの)か知らんけど…」
優香「北町南町」
真一「え? 誰なん?」
優香「…近所のお兄ちゃん」
真一「アイツ(森岡)とアカンよなった(別れた)時、『遠いから』って別れたんやないんか?」
優香「別れたよ。けど、北町南町は近いで」
真一「いやぁ、大阪も北町南町も距離変わらんで(笑)」
優香「でも、好きな人いるよ」
真一「そうかぁ…。なぁ、盆に帰ってくるんなら、今度会った時に2人で腹を割って話さへんか? 幼なじみとして」
優香「わかった。腹を割って話そ、幼なじみとして」
そう言って、2人は電話を切った。
電話切った後、真一は夢の中で考えていた。
真一(確かにこんな話あったなぁ…。けど、なんで優香ちゃんはオレに相談してきたんやろ? 村田さんとかに相談するのが普通やったんやないやろか…)
浅田「これは…」
真一「どう思う?」
浅田「こんなんどう見たって、あんたを待ってるやんか❗」
真一「そうかなぁ?」
浅田「拓(森岡)とは『遠い、飽きた』って言う、とりあえずの理由で別れてんのに、『南町と新潟は近い』って言うてたんやろ?」
真一「うん」
浅田「それは、もうあんたのことを待ってるんやんか❗ そんなん『トラウマ』があって前向きになれなくても、どない(どんなこと)してでも付き合っとくべきやったなぁ…。あんたの『トラウマ』はその後でもどないでもできたはずや。何せ、相手は『幼なじみ』のあの人(優香)なんやからなぁ…」
真一「なんか、もうひとつわかってへんかったからなぁ、当時のオレは…。というか昔からオレ、アホやし…」
浅田「そんなん、なんでオレに連絡してこんかったんや? 絶対あんたに『どんなことしてでも付き合え』って言うてたわ❗」
真一「けど、当時のオレは全く前向きになれんかった。それが(相手が)優香さんであっても…」
浅田「あんた、ホンマに『トラウマ』に縛られてたんやな…」
真一「あぁ…。それになぁ…」
浅田「なんや?」
真一「この後、盆休みに優香さんと会うんやけど、また夢の中では実際と異なる話になってなぁ…」
浅田「また何かあるんですか?(笑)」
真一「…………」
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