第10話 24年前の夢を見る真一…『不器用な真一』①
(回想・夢の中)
真一は就職希望の会社で入社試験を受験し、優香は大学受験の勉強がピークの晩秋の頃、2人は一緒に帰っていた。
優香「しんちゃん、入社試験も終わったし、前言うてた『抜け殻』みたいになるんか?」
真一「どうなんやろなぁ?」
優香「しんちゃん、新しいことにチャレンジしてみたら?」
真一「チャレンジ?」
優香「何かしてみたら?」
真一「この期に及んで何すんの?」
優香「うーん…何かないかなぁ?」
真一「手先は不器用やから、もの作りはアカンで、何があるかなぁ…」
優香「また探してみるわ」
真一「うん。でも優香ちゃんは勉強に専念してよ」
優香「うん。息抜きの時に考えるわ(笑)」
真一「うん」
翌朝、優香は彼氏の森岡が大阪へ入社試験に行っているため、久々に真一と朝から登校した。
優香「おはよう」
真一「おはよう。あ、今日アイツ(森岡)入社試験やったなぁ」
優香「うん」
真一「寂しいんか?(笑)」
優香「そんなことないよ」
真一「寂しいんやろ?(笑)」
優香「寂しないで。しんちゃんいるやんか」
真一「いやオレはただの幼なじみ、同級生やろ?」
優香「手先が不器用な幼なじみの同級生やけどね(笑)」
真一「否定せんわ」
優香「あ、しんちゃん、チャレンジする話、ドラマあまり見たことないんやったら、ドラマ見たら?」
真一「ドラマ?」
優香「うん。面白いやつもあるよ」
真一「大概恋愛ものやろ?」
優香「そればっかりではないけど…」
真一「何か学校で出来ることって無いかなぁ…って昨日少し考えてたんや。なんかやったことないこと」
優香「息抜きの時に探してみるわ」
真一「何かのついででええから…」
優香「うん」
電車が高校駅に到着し、登校した真一と優香。白木も来た。
白木「おはよう」
優香・真一「おはよう」
白木「なんか朝から久々の2人やないんか?」
優香「まぁね…。堀川くんの『チャレンジ企画』何かある?」
白木「そらぁ、コイツは恋愛しかないやろ。けど怒るからなぁ…」
優香「うーん…」
藤岡・寺岡・坂本・村田・滝川・加藤もやって来た。
藤岡・寺岡・坂本・村田・滝川・加藤「おはよう」
優香・真一・白木「おはよう」
白木「なぁ、堀川の『チャレンジ企画』何かあるか?」
村田「この間言ってたやつ?」
白木「うん」
村田「堀川くんは…怒ると思うけど、恋愛やないか?」
白木「そうやろ」
藤岡「興味無さすぎや」
寺岡「普通は興味あるやろ?」
坂本「けど、鈍感・女っ気ない…って全くの重症やで。一種の病気みたいなもんとちゃうか?」
加藤「実は、私がフク(福田)と別れるとき、堀川くんに相談のってもらってたんや」
白木「はい?」
藤岡「えー?」
寺岡「よりによって、なんでこのおっちゃんなん?」
白木「堀川、どういうことや?」
真一「どうって、相談受けたから話聞いただけや」
加藤「私、相談のってもらってたとき、堀川くんがもし彼女おっちゃったら、彼女幸せもんやと思う。気遣ってくれてたから…」
村田「ゆうちゃんなら堀川くんのことよく知ってるもんなぁ」
優香「うん。どんな彼女が来てくれるんかなぁ…って思うわ」
滝川「なんか、ゆうちゃんが堀川くんのお姉さんに見えるわ」
真一「ウチの姉貴です」
優香「ウチに『しんちゃん』っていう弟は2人もいらんねん。うるさい弟と手先が不器用な弟」
村田「やっぱり堀川くん、女の子に興味持ってみたらどうやろ? 興味ないのはわかってるけど、『リハビリ』やないけど、少しずつ考えてみたら…?」
優香「私も思うわ」
加藤「私も」
滝川「うん、私も」
白木「オレもそう思うが、お前はトラウマみたいなんがあるんかもしれんけど、オレは何も言わんから…。まぁでも、女子にこう言われたら、さすがのお前でも断れんやろ?」
坂本「考えてみたら?」
藤岡「手先は使わんで大丈夫やろ?」
寺岡「興味ないっちゅうのが不思議やわ」
村田「みんなの意見は一致やな」
優香「大丈夫やって…な」
真一「うーん………」
真一は浮かない顔をした。
優香は真一の顔色を気にしつつも、そっと背中を押した。優香は真一に興味をもって欲しかった。『あの時』の失敗を乗り越えるためにも…。
あまり乗る気がない真一を見ていた坂本、寺岡、藤岡は声をかける。
坂本「そんな難しく考えんでもええで」
寺岡「そうや。気楽にしてたらええねん」
藤岡「不器用はしゃあないで、ボチボチでええんやな」
放課後、図書館で優香の息抜きに真一が話し相手になっていた。そこへ村田・加藤・滝川がやって来た。
滝川「あ、2人で何話してんの?」
優香「雑談やで」
真一「特にこれといった話はないで」
村田「堀川くんというより、しんちゃんは、どう考えてるの?」
真一「え、何が?」
村田「女の子のこと」
真一「さっぱりわかりません」
優香「私が教えといたらよかったかな…」
加藤「堀川くん、この前、私が相談のってもらったんはなぁ、詳しくない人に相談したかったんや」
真一「どういうこと?」
加藤「大体男子だって恋愛話は好きやからなぁ、全く知らん人に相談したらどんな返事が来るか、聞いてみたかったんや。そしたらな、堀川くんは誠実なこと言うてくれちゃったから、私、嬉しかったんやで」
優香「さすがやな、私の幼なじみ(笑)」
真一「何が?」
優香「ちゃんと、ひっちゃんの立場になって考えてたんやんなぁ」
真一「まぁなぁ…。相談されて、さすがに今回は坂本とかには助け求められんなぁ…と思ったんや。だからアホの頭で無い知恵絞ったまでや。頼んなかったと思うけど…」
加藤「ちゃんと考えてくれてたよ。ありがとう」
村田「堀川くん、優しいなぁ」
優香「昔から優しいで」
真一「なんやなんや、また担がれて突き落とされそうやなぁ…」
優香「突き落とさへんよ。ホンマのこと言うてるだけやで」
真一「そうか…」
村田「そんだけ考えられるんやったら、今度は堀川くんが考える番やない?」
優香「私もそう思う」
滝川「ホンマに」
加藤「ホンマやで。今度は堀川くんの番やで」
真一「え…、うーん…」
真一は女子4人に囲まれて説得される。
優香「大丈夫やって。少しの勇気だけやで」
村田「そうやで。一緒におって楽しかったらええやん」
加藤「あとは相性かな…」
滝川「そうやなぁ…。堀川くんはどんな女の子がタイプなん?」
真一「いやぁ、そう言われても…」
優香「自分の好きなタイプやな…」
真一「うーん…」
当時真一は優香と言いたいが、気持ちを抑えた。
真一「…とにかく考えたこと無いからなぁ」
優香「うーん…例えば『アノ子かわいいなぁ、ええ人やなぁ…』とかそんなんはないの?」
真一「ないなぁ…」
村田「例えば街歩いてて、『アノ人エエなぁ…』ってなったこと無い?」
真一「ないなぁ…」
村田「…うーん、もうちょっと意識して見てみたら?」
真一「うーん…、って言われても今まで考えたこと無いから、どないしたらいいもんか(どうしたらいいもんか)わからんから…」
村田「例えば、なんでもないひょんなことから『出会い』ってあるもんなんやで」
真一「うん」
村田「一目惚れって聞いたことあるやろ?」
真一「あるなぁ」
村田「あれもそうや。あとは何か一緒に手伝って仲良くなったりとか、たまたま友達と一緒におって、そこから仲良くなったりとか…」
真一「うん」
優香「どんなときでも『ひょんなこと』はあるから、気にしなくても自然とあり得るよ」
真一「うーん…」
加藤「私だって、フク(福田)からラブレターもらった時は、フクが一目惚れやったんやから。その後間に入って話してくれたでしょ」
真一「そうやったなぁ…」
村田「そうそう、ひっちゃんの時が良い例やわ」
真一「……」
村田「大丈夫やって。誰だって『ひょんなこと』から出会いは生まれてるから、堀川くんも絶対あるよ」
加藤「そうやで。絶対あるで」
滝川「堀川くん、絶対あるよ」
優香「焦らなくてもいいからね…。自然の流れで出会いはあるよ」
真一「…そうかなぁ…」
優香「まだ信じられない?」
真一「………」
優香「実感ないからわからんもんなぁ…」
真一「まぁね」
村田「堀川くん、出会いないから諦めて…なんて考えたらアカンで。堀川くんだって、絶対良い出会いがあって素敵な彼女が現れるって❗」
真一「そう言われてもなぁ…」
優香「大丈夫や。ちゃんと私がいる時は後ろで見といてあげるで」
真一「別にええって」
優香「ここで不器用発揮したら…って心配になるでしょ❗」
真一「しかし4人がかりで講習されるとなぁ…」
優香「説得力あるやろ(笑)」
村田「みんな、堀川くんのこと、心配してるんやからね」
真一「なんでここまで…?」
優香「一人っ子で手先が不器用で彼女いらん…って言うてたら誰かて心配するで(笑)」
真一「そうかぁ…」
5人はそのまま一緒に帰る。高校駅に向かった。真一はいつものように自動販売機でミルクティを買って、優香たちに1本ずつ渡す。
村田・加藤・滝川「ありがとう」
真一「はい」
優香「ありがとう」
真一「おう」
村田「私らみんなにくれちゃったけどええの?」
真一「今日の授業料」
優香「遠慮なくもらっときな」
村田「ありがとう。教える価値あるわ(笑)」
優香「しん…堀川くん…」
真一「別にしんちゃんでいいやん」
優香「…じゃあ、しんちゃん、これからもくーちゃんたちに教えてもらいなよ」
真一「…あぁ…」
村田「その帽子はやっぱりこう被らんと…」
村田は真一が被っている帽子を、後ろにツバ側を持っていきかぶり直す。
村田「ほらできた。やっぱりしんちゃんや(笑)」
滝川「しんちゃん…。くーちゃんのお気に入りやな(笑)」
村田「こうせんと、しんちゃんにならんわ(笑)」
真一「ボク小学生です」
優香「幼稚園ではないなぁ」
真一「ないなぁ。小豆色の帽子やないと幼稚園ちゃうなぁ」
加藤「幼稚園の時はゆうちゃんと堀川くんは手つないで幼稚園通ってたん?」
優香「バスやった」
真一「教室でも、背の低いもの順に並んでも、となり同士やった」
村田「ええなぁ、なかなかないでそんな偶然」
優香「たまたまやんなぁ」
真一「そうやなぁ。ところでこんな帽子のかぶり方してて合ってんのかなぁ?」
村田「合ってるで、しんちゃん(笑)」
滝川「えらいお気に入りやな、くーちゃん(笑)」
優香「くーちゃん、彼氏と別れていまフリーやから、くーちゃんに色々教えてもらいなぁ…」
真一「え?」
優香「それか、くーちゃんどうや?(笑)」
真一「はい?」
村田「ちょっとゆうちゃん…」
優香「なんなら、私が話の間に入ろか?」
村田「ゆうちゃん…」
真一「何企んでんの?」
優香「(笑)」
優香の強引な企みに困惑した真一と村田だった。
翌日も真一は帽子を後ろに被って登校した。
村田「おはよう、しんちゃん(笑)」
真一「おはよう」
滝川「おはよう、しんちゃん」
加藤「おはよう」
真一「おはよう」
村田「ホンマにこの帽子の被り方は堀川くんよりしんちゃんやわ(笑)」
滝川「ホンマにくーちゃん、しんちゃんお気に入りやな(笑)」
加藤「なんか嬉そうやな」
村田「こんな子供おったやんか」
真一「そうかぁ…? こんな格好してたら彼女なんて見つからんよな…(笑)」
村田「そんなことないよ。この格好がいいって言う女の子がいるって」
真一「………」
これ以降も、村田たちから色々と恋愛について話を聞いていた。優香はそれを見守っていた。
優香「この間から、堀川くんがくーちゃんを中心に、女子から色々『恋愛』の講習受けてるんやで(笑)」
森岡「アイツ、大丈夫なんか?」
優香「くーちゃんらに任せとこ(笑)」
森岡「まぁ様子見やな…」
優香「初心者やから大目に見てあげなアカン」
森岡「初心者て…恋愛に初心者ってあるんか?」
優香「不器用やから、大目に見てあげて❗」
森岡「幼なじみのこと知ってるから余計やもんなぁ…」
優香「そうやで。一人っ子の幼なじみが頑張って講習受けてるから…」
森岡「なんか、弟のことを長い目で見てる姉みたいやな」
優香と森岡のカップルは真一の様子を長い目で見ることに。
優香「ちょっと幼なじみだけの話してくるから、少し待ってて」
森岡「え?」
優香は森岡をさしおいて、真一の所へ。
優香「真一くん」
真一「え?」
優香「ちょっとかまへん?」
真一「何? 拓(森岡)の所へおったんやないんか?」
優香「ちょっと幼なじみで話があるの」
真一「何?」
優香「しんちゃん、くーちゃんのことどう思う?」
真一「どうって?」
優香「ほら、この間から講習受けてるやろ?」
真一「まぁなぁ…」
優香「この間から、くーちゃんがしんちゃんの帽子の被り方にこだわってるから、どうかなぁ…と思って…。『ひょんなことから』やんか」
真一「あ、あぁ…そういうことか…」
優香「そうやで」
真一「…どうなんやろなぁ…」
優香「今日も(帽子)被ってきてたでしょ?」
真一「うん」
優香「なんで被ってきたん?」
真一「え? 寒いのと、村田さんが昨日えらいお気に入りやったみたいやから、おかわりを…と思って…」
優香「くーちゃんのこと気にならへんか?」
真一「…うーん、どうなんやろなぁ…」
優香「まだピンと来ない?」
真一「わからんなぁ…」
優香「そういうのが続いたら、話が発展するかも…。少し意識してみて。あ、ちなみにくーちゃんはなぁ『特別扱い』されるのが好きやで(笑)」
真一「え、何それ?」
優香「くーちゃんアプローチしてみなよ(笑)」
真一「え❗ そんなこと言われても…」
優香「実戦やんか❗」
真一「でも…」
優香「ちゃんと私が見てるから…。私を誰やと思ってんの? 幼なじみの優香ちゃんやで❗」
真一「うん…」
優香「男の子なんやから、シャキッとせんと❗」
真一「ホンマにオレのお姉ちゃんやなぁ…(笑)」
優香「大丈夫。しんちゃん、自分に自信を持ちな」
真一「うん…」
優香は真一が今まで頭を撫でてくれていた事を思いだし、真一の頭を撫でて静かに微笑んだ。真一は優香にさりげなく背中を押された気分だった。
ある時、真一は男連中と話す。
坂本「どうや、梅沢駅3人組の『講習』は?」
真一「ボチボチ聞いてるで」
藤岡「女の子に囲まれて言われたら、逃げ場ないやろ?(笑)」
真一「参ったなぁ…」
白木「お前は幸せもんやぞ。普通、教えてくれる女の子はおらんなぁ。加島がいる手前もあるんかも…」
坂本「という訳で、今回はアノ3人とあんたの幼なじみに一任やからな…(笑)」
藤岡「オレらは遠くから見とくわ(笑) これであんたのに彼女できたらアノ4人に感謝せなアカンわ」
寺岡「で、心当たり候補はおるんか?」
真一「おらんで」
坂本「オレみたいに手当たり次第って探したらアカンぞ。説得力ないけど(笑)」
白木「お前が言うたら説得力ないなぁ(笑)。まぁ堀川はゆっくり考えたらいい」
真一「あぁ…」
この日の夕方、真一が帰ろうとすると、誰かが後ろから声をかけてきた。
村田「しんちゃん」
真一「え?」
声の主は優香ではなく村田だった。真一は帽子を後ろ向きに被っていた。
真一「あ、村田さんか…」
村田「うん。一人?」
真一「うん。皆帰ったみたいや」
村田「そうかぁ」
真一「珍しいやん、一人って。ほんで5:55の電車やろ?」
村田「うん。短大の入試の勉強してたんや」
真一「そうかぁ…」
真一は、優香の時と同じように、自動販売機でミルクティを買って、1本を村田に渡す。
真一「はい」
村田「ええの?」
真一「うん」
村田「ありがとう」
真一「おう」
村田「なんでそんなに優しいん?」
真一「え、何が?」
村田「ミルクティ、おごってくれたやん」
真一「あぁ、オレが飲みたかっただけ。1人だけ飲むのはなぁ…。ただそれだけ」
村田「そうなんや。ゆうちゃんが『堀川くんは優しい』って言ってたから…」
真一「そうかぁ…」
村田「なぁ、しんちゃん」
真一「なんか、優香さんに言われてるみたいやけど、新鮮やなぁ(笑)」
村田「私が言うても良かった?」
真一「大丈夫やで。『しんちゃん』って呼ばれるのは日常茶飯事やから。親族以外で『しんちゃん』って呼んだのは、優香さんが第一人者やけど(笑)」
村田「そうなんや」
真一「うん」
村田「どう、少しは恋愛に興味持てそう?」
真一「どうなんやろなぁ…。実感ないから…(笑)」
村田「そうやんなぁ…」
真一「しかしなんでみんな、オレの事をこんなに言うて来るんかなぁ…?」
村田「それは、一人っ子で恋愛に興味ないって言うたら、誰だって心配するやんか」
真一「別に養子もらったらええやん」
村田「いや、そういうわけにもいかんやん。家系が途絶えるんやで❗ それはどないしてでも恋愛せなアカンやんか」
真一「うーん、なんか不公平なんやなぁ…」
村田「なんで?」
真一「他人は兄弟がおって、自分の好きなように生きられる。でもオレは一人っ子やから、何があっても嫁さん見つけなアカンっていうのは…。で、オレは恋愛に興味ないって言うてるから、不公平感満載なんやって」
村田「一人っ子だろうが兄弟がいようが、恋はするやんか。恋愛って、そんな堀川くんが思ってるほど悪いもんやないって」
真一「意見って、人それぞれやんか。恋愛に興味があるって人は100人中100人ではないやん」
村田「そうやったとしても、不公平ではないよ。みんなが経験することやから。スキンシップだってするやんか」
真一「何かなぁ、矛盾してるようなんやなぁ…」
村田「堀川くんが思ってるほど、難しいことやないよ。片想いかもしれんって悩むときは悩むし、両思いかもしれんし…」
真一「どうなんやろなぁ…」
村田「ホンマに大丈夫やで。まぁ騙されたと思って興味もってみてよ❗」
真一「うーん…」
村田との討論は続いた。真一は優香が前に言った『くーちゃんはどう?』と勧められた事を思い出したが、『それはないやろ…』と心の中で否定した真一だった。
今年も公立高校が京都で一同に介する『合同展示会』の時期がやって来た。今年も真一たちは特例で出席となった。日頃の活動が評価されたもので、土日とも京都へ通った。
ゆきの電車で真一、白木、優香、村田がボックス席に座っていた。
真一は眠たくて寝ながら携帯用音楽プレーヤーでCDを聞いていた。
白木も半分寝ていた。優香と村田は話している。
電車が駅に着いたとき、少しブレーキが強めにかかり、真一の顔がカックンとなった。それで真一は目を覚ました。
優香「おはよ」
真一「お、おはよ…」
村田「眠たそうやなぁ(笑)」
真一「…うん」
優香「何時に寝たん?」
真一「12時はまわってたんやないかな」
優香「何してたん?」
真一「テレビ見てた」
優香「エッチな番組見てたんやろ?(笑)」
真一「ちゃう(違う)、ドラマ見てた」
優香「珍しいなぁ、ドラマ
真一「たまたま見てただけや」
優香「まだ眠いん?」
真一「うん…」
村田「眠そうな顔やなぁ(笑)」
真一「…うん」
優香「しんちゃん、くーちゃんと寝たら?(笑)」
真一「はぁ? 何言うてんの?」
優香「安心して寝られるかもしれんで(笑)」
真一「村田さんが困ってやで」
優香「大丈夫や。渦中の2人やからなぁ…」
真一「へ?」
村田「ちょっと、ゆうちゃん…」
真一と村田は優香の言動に困惑していた。
優香「最近の2人、仲がええやんか」
真一「普通やん」
村田「そうやで」
優香「いや違う。お互い意識してるわ」
真一「気のせいやって」
村田「そうやで、ゆうちゃん」
優香「おかしいなぁ…。この前から2人で仲良く帰ってるやんか」
村田「たまたまやって」
真一「そうや」
優香「しんちゃん、リードしないとアカンよ」
真一「だから、何言うてんの?」
優香の強引なやり取りに2人は困惑して、お互い意識した。
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