第6話 25年前の夢を見る真一…『友達以上恋人未満』③

(回想・夢の中)

毎年秋に行われる合同展示会は、公立高校が一同に介する催し物である。今年も行われ、真一達が在籍する工業高校も展示会に参加する。

寺岡は相撲ロボット競技大会で地区大会を優勝し、本線である全国大会に出場が決まっている。本線の全国大会は山形県で開催される。立会人として佐野山も出席する。

村田・滝川・加藤は生徒会役員として競技大会の司会進行を任せられた。優香は3人の裏方に入る。

真一は3年生が製作したボール競技ロボット大会で、当の3年生がボイコットし、急遽呼び出されたのである。

白木もアンプスピーカーの展示やNゲージと呼ばれる電車模型を、じゃんけんで勝った方が次の駅に進むことができるゲームの準備を担当。

公立高校は、真一達が在籍する工業高校の他にも農芸高校や商業高校、普通科進学高校とそれぞれの高校の色を出した展示が目白押しだった。

真一達は先生数名の引率と共に電車で京都へ向かった。

真一は、優香と白木と村田の4人でボックス席に座っていた。


白木「この土日は忙しいなぁ」

真一「泊まれんってどういうことやねん。こんなん出張やろ? 出張伝票書いてホテルとっておけよっていう話やんか❗」

白木「それを言われてもなぁ」

真一「せいぜい、特急使わしてほしいわ。鈍行(普通電車)て…。人をバカにしてるわ❗」

白木「お前らしいなぁ(笑)」

真一「2時間のサスペンスドラマで出張伝票のハンコを上司にもらうのに『経費かけるな』って突き返されるで、『土産やったら買うてきますやんか』って、土産を条件に出張許可もらうんやから、あれくらいせなアカンやろ? あの教務部長か? 言うといたらよかったなぁ。『土産やったら買うてきますやんか。京都やで、八ツ橋でエエでしょ?』って。『さすがに祇園にある南座の顔見世興行のチケットは高こうおまっせ』って言うたら、どないなるやろなぁ?」

白木「お前なぁ…(笑) 高校生がそんな事言うか?(笑)」

真一「言うてナンボやないかい❗」


優香と村田は笑っていた。


優香「くーちゃん、チョコレートキャラメル、はい」

村田「ありがとう」

優香「ちーちゃん、ひっちゃんもチョコレートキャラメル、はい」

滝川・加藤「あ、ありがとう」

優香「白木くんも」

白木「サンキュー」

優香「はい、どうぞ」

真一「ありがとう…って、なんでオレはイチゴ味なん?」

優香「食べたことないやつやろ?」

真一「こんなんもあるんや…」

優香「朝っぱらからではないから、大丈夫やろ?」

真一「けどイチゴって、甘ったるくないん?」

優香「大丈夫やろ」

真一「エエくらい(いい加減)に言うてるやろ?(笑)」

優香「大丈夫やって、食べてみなぁ」

真一「なんで皆は普通のやつやのに、オレだけイチゴなん? 何をまた良からぬことを考えてるんや?」

優香「ホンマ大丈夫やって。私が言うてんねんから間違いない」


渋々真一がイチゴ味のチョコレートキャラメルを食べる。


真一「甘んま…」


真一は激甘に悶えていた。


白木「そんな大げさな(笑)」

真一「大げさやない、マジで甘すぎる」

優香「こんなもんやで。しゃあないなぁ、私のクッキー味あげるわ」

真一「まだマシかな…けど甘い」


真一は電車で甘さに悶絶していた。


白木「しかし、お前ら息ピッタリやな」

真一「何が?」

白木「話のキャッチボールが、的確や」

村田「そうやで。次から次からポンポンと言葉が出てくるなぁ…」

優香「そうか?」

真一「こんなもんやろ。甘んま…」

村田「堀川くん、チョコレートにやられてるなぁ(笑)」

優香「辛くなくていいでしょ。甘い方がいいもんね。ねえ、真一くん(笑)」

真一「ただのオレいじりやん…」


白木たちは爆笑していた。


土日で開催された合同展示会も大盛況に終わり、日曜日の帰りの電車で途中駅から北町行きの電車に乗り換える、真一、優香、白木、佐野山、そして村田・加藤・滝川だった。


滝川「疲れたねぇ」

加藤「疲れた…」

村田「帰ってお風呂入ってご飯食べたらすぐ寝よ」

白木「ホンマやなぁ」

優香「今日はよく寝られそう」


村田たち3人は梅沢駅で下車し、優香たちと別れる。

3人が降りてからは白木と佐野山は寝た。真一は起きていて、優香は白木と佐野山が寝ているのを確認して、真一の右肩に頭をもたれかける。ひそひそ話くらいの小さな声で真一と優香が話す。


真一「どうした? 疲れたか?」

優香「うん。ちょっと甘えていい?」

真一「あぁ…」

優香「しんちゃんの肩、安心する」

真一「なんやそれ」

優香「幼稚園から知ってる肩やからかな(笑)」

真一「頭なでなでか?(笑)」

優香「今日は疲れたから、してもらってもかまへんけど…」

真一「してほしいんか?(笑)」

優香「しんちゃんがもっと甘えたいんでしょ?(笑)」

真一「向かいに、2人のオッサンがおるこの状況で?(笑)」

優香「どう、女の子とこんなことして嬉しかったやろ?(笑)」

真一「いつもオレのとなりにおって人やからなぁ、代わり映えせんなぁ…(笑)」

優香「ちょっと、どういう意味? いつもの私でよかったでしょ?(笑)」

真一「…うん。こんな人はなかなかおらんなぁ」


優香は真一の言葉が嬉しかった。

そして電車は南駅に到着し、真一は下車。優香だけ真一に手を振って別れる。

怒濤の合同展示会は幕を閉じた。









浅田と真一がスマートフォンで話している。



浅田「へぇー、いいじゃないですか(笑) あんたが『トラウマ』のせいで積極的になれんかった(なれなかった)のが悔い残るなぁ…」

真一「当時は割り切っていた。しんどかったけどなぁ…」

浅田「そうか…」

真一「それで、このあと触れたくない所を白木らが日を追うごとに迫ってきたんや」

浅田「それはどういうことや?」

真一「それはまたあとの話やけどなぁ…。確か、ホワイトデーの頃やなかったやろか…」





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