第5話 25年前の夢を見る真一…『友達以上恋人未満』②
(回想)
ある日の夜、真一とみつきが就寝する。
真一(今日も続き見るんかなぁ…)
(夢の中)
ある日の夕方、下校するため、高校から高校駅へ向かう真一に、後ろから優香が抱きついてきた。
真一「うわぁ…」
優香「こんにちわ」
真一「ビックリするやんか」
優香「そうかぁ?」
真一「おもいっきり抱きついてきたよなぁ…」
優香「嬉しかった?(笑)」
真一「…別に」
優香「素直じゃないねぇ…顔に書いてあるのに❗ 『優香ちゃんに抱きつかれて嬉しい~』って(笑)」
真一「あのなぁ、そんなわけないやろ…。ビックリしただけやんか。急にやもん」
優香「かわいくないねぇ…。女の子に抱きつかれて『嫌』って言う男の子はまずそうはないと思うけど…」
真一「中にはおるかもしれんやんか」
優香「嫌やったん?」
真一「別に…」
優香「しんちゃんはウソつけないんやからね。顔に書いてあるし、顔赤いし(笑)」
真一はいつものように自動販売機でミルクティを2本買って、1本を優香に渡す。
真一「はい」
優香「ありがとう」
真一「おう」
しばらく沈黙が続いた。
優香「なぁ、しんちゃん」
真一「ん?」
優香「私な…好きな人がおるんや…」
真一が夢の中で呟く。
真一(そういえば、そうや。こんなこともあったなぁ…)
真一「…あ、そう。青春してるなぁ(笑) どうしたん急に?」
優香「え…、ううん、別に…」
真一「そんなこと村田さんとか、女の子同士で言うのならわからんでもないけど、よりによってオレが聞いてもよかったんかいな?
ナンボ何でも幼なじみとはいえ、オレ男やで… 」
優香「しんちゃんはええんや…」
真一「そうなん?」
優香「うん…。……しんちゃんは好きな人いないの?」
真一「えっ、オレ? おると思うか?(笑)」
優香「さぁ…(苦笑)」
真一「キライな人間以外は、みんな好きやで。…でも、優香ちゃんはそういう意味で聞いてるんやないんやろ?」
優香「……………」
真一と優香はどちらも緊張している。
真一「…オレ、みんなの前では『興味ない』って言うてるけど、いま優香ちゃんとしかおらんから、ここだけの話にして欲しいんやけど、厳密には『わからん』というか、『考えたことがない』っていうか…そんなんなんや…」
優香「一回も考えたことがないん?」
真一「…うーん、一回だけ考えたかもしれん」
優香「最近考えた?」
真一「昔や」
優香「昔って?」
真一「もう忘れたけど、考えた記憶があるようなないような…」
優香「………そうか…」
優香は真一ののらりくらりとした返事にガッカリした。『女っ気』がない真一なので、長い目で見ないと…と自分に言い聞かせていた。本当は優香は幼稚園の時から真一のことが好きだった。
一方の真一は、本当のことが言えなかった。ただ恥ずかしい、照れくさいからという理由ではなかった。
でも本当は真一も優香のことが幼稚園の時から好きだった。つまり両思いなのだ。
それでも真一が本当の事を優香に言えなかった。そう、この当時の真一には例の『トラウマ』があったからだ。
真一と優香は『核心』の話題からそらして、日常の話に花を咲かせていた。普段の話をすると、2人とも仲がとても良い。
翌朝、真一が南駅から電車に乗ると優香が乗っていた。
優香「おはよう」
真一「おはよう」
優香「ここ座って」
真一「かまへんのか? オレ体デカいから場所とるで」
優香「大丈夫」
真一「おじゃまします」
優香と真一は幼稚園の時のように2人で電車の座席に座った。
途中駅を過ぎた頃、優香が話す。
優香「なぁ、チョコレート食べる?」
真一「チョコレート? 朝っぱらから?」
優香「おいしいよ」
真一「全く食べへん事はないけど、まだ朝8時やで。よう入るなぁ」
優香は駄菓子のチョコレートキャラメルを1個口にいれた。
優香「食べてみな? はい、あーん…」
真一「『あーん』って、他の高校生見てるで❗」
優香「ええやん別に。はい、あーん…」
真一は恥ずかしがりながら優香に言われるがまま、優香からチョコレートキャラメルを口にした。
真一「
優香「このチョコレート、昔はキャラメル味しかなかったやんか?」
真一「うん」
優香「今なぁ、ビスケットとかミルクチョコレートとか色々あんねんで」
真一「そうなんや。全然買わんよなったもんなぁ、チョコレートキャラメル。しかし、口の中が甘い。お茶が欲しいなぁ(笑)」
高校駅に電車が到着し、優香はまたチョコレートキャラメルを1個口にした。
優香「しんちゃん、あーん」
真一「え❗」
優香「はよ、あーん」
真一「……」
真一はまた恥ずかしがりながら渋々優香からチョコレートキャラメルを口にした。優香はご満悦だった。
真一と優香の行動はクラス中の話題になっていた。
真一はクラスメイトから『お前、どこで見つけたんや?』と聞かれても『ただの幼なじみや。誤解してるで』と返事していた。
真一は、職員室でも先生方から質問攻めにあっていた。
『付き合ってんのか?』『付き合ってません。ただの幼なじみです』の繰り返しだった。
2時間目の授業が終わり、少し時間がとってある中休み。廊下に出た真一は坂本と、となりのクラスの白木と話す。
白木「なぁ堀川、お前、加島のこと、どう思ってんの?」
真一「どうって、何が?」
白木「何が?やないで。加島のこと好きなんやろ?」
真一「そらぁ、キライやないわな。幼なじみやでなぁ。キライやったら、今頃口きいてへん」
坂本「いや、そんなことオレらもよう知ってる。そうやなくて、加島さんのこと好きかって聞いてる」
真一「いやぁ、好きも何も、幼なじみやでなぁ。昔からこのテンポで話してる」
白木「うん、仲が良いのはよう知ってる。じゃあ質問の仕方を変える。お前から見て加島は幼なじみなのはオレらもわかってる。お前、加島を女として見たことあるか?」
真一「見るも何も、優香さんは女の子やんか」
坂本「ちゃうちゃう(違う違う)、お前が加島さんを一人の女性として見ないのか?って聞いてんねん」
真一「一人の女性? 女性やん」
真一は当時、本当に女っ気がなく、それを男連中は重々承知の上だったので、根気よく丁寧に説明する白木と坂本だった。
白木「あのな、例えばや。かわいい女の子がおったとする。で、お前がその子のことを好きになったとする。例え話やで。『あぁ、あの子と付き合いたいなぁ、一緒になりたいなぁ…』とか考えたことない?」
真一「ない」
白木「…じゃあ、この例え話で言う『かわいい女の子』を加島にあてはめて、この例え話でいくと、お前はどう思う?」
真一「そんなんではないなぁ。だって幼稚園からずっとこの調子でいってるから、全然変わったこともしてないで。もし優香さんがオレの事をそういう風に見てるって言うんなら、話は別や。何か言うとってんか?」
白木「いや、そうやないけど…。もしお前の言うように『ただの幼なじみ』やったとして、加島のことが好きやって言う男が現れて、加島がその男と付き合うことになったとき、もう今までのようにはできんよなるで。それでもええんか? オレらだけやなくて、みんな、お前らのこと心配してるんや。めっちゃ気にしてんねん❗ 絶対お前らは付き合うべきやと…」
坂本「そうやで。オレらは冷やかしてあんたに言うてるんとちゃうんや。ホンマに心配してるんや。加島さんの気持ちも考えてやれよ。オレと真逆のお前は、女っ気が全くないのは仕方がないとしても、加島さんのことを考えてやれ。女の子やからホンネは言うてないと思う。お前が直接言うたらホンネも答えてくれるわ」
真一「いや、オレらの知らんところでそんな妄想言われてもなぁ…。それにナンボ言われても、オレこういう話は、ようわからんのや」
白木「あーもう、何て言うたらわかってくれるかなぁ…。時間無いで、もうかまへんわ」
坂本「あのなぁ、少しは興味持とうと考えんか?」
真一「考えんし、興味はない。優香さんは幼なじみであって、それ以上も以下もない」
話にならなかった。
しかし、なぜ真一がここまで頑なに恋愛に興味を持たないのか、白木と坂本は考えていた。
そして、真一は夢から覚めた。
真一(なんやねん、相変わらず時系列で夢見てるやないか…)
浅田「あんた、それはもう、あの人があんたを待ってたんやな」
真一「そうやろなぁ…」
浅田「例の『トラウマ』やったんか?」
真一「そうや…」
浅田「こんなことなら、あんた、なんでオレに話して
真一「そうやったんや…」
浅田「あんた、あの頃は『トラウマ』のこと、誰にも言ってないからなぁ…。オレにでも言うてくれたら、あんたを説得してたのに…。あんたにだけは『幸せになってほしい』って」
真一「いずれにしても、あの頃のオレは『根性なし』やったし、『トラウマ』から解くことも全く考えられんかった。それだけ『不信』やったんや。けど本当のことは、とてもやないけど言えんかった。あんたにも相談しようかとも思ったけど、できんかった。優香ちゃんがオレに言い寄ってきたとき、その都度一人辛かった…」
浅田「なんかなぁ…」
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