第4話 25年前の夢を見る真一…『友達以上恋人未満』①

(回想・夢の中)

真一、優香たち2年生は、秋になって黒部ダム~室堂~白馬へ修学旅行に行った。


修学旅行が終わり、週明け月曜日。

真一たちはいつものように登校の姿があった。

真一は南駅から電車に乗る。6両編成の電車の先頭車両に真一は毎日乗っている。

真一はいつものように乗ると、そこに優香が乗っていた。


優香「おはよう」

真一「あれ、おはよう…。どないしたん? 珍しいやん、先頭車両て…」

優香「たまたま北町駅から乗ったとき、ここが空いてたから…」

真一「という口実で、みんなのおらんところで話があったんやろ?」

優香「…うん。しんちゃん、修学旅行の時ゴメンな。色々気使わせて…」

真一「別に気にしてないで」

優香「しんちゃん、ひっちゃん(加藤)の話聞いてあげてたんやな」

真一「あぁ。話聞いた?」

優香「うん」

真一「話聞いてビックリしたわ」

優香「何か天然ボケキャラ同士らしいやん」

真一「ええんとちゃうか?」

優香「うん(笑) 付き合うことになったらしいよ」

真一「そうか、よかったやん」


加藤は真一と同じクラスの福田と付き合うことになった。

真一と優香は普段と変わらず話していた。電車が道淵みちぶち駅に着くと、優香のクラスの角山が乗ってきた。


角山「おはよう」

優香「あ、おはよう」

角山「あれ、加島さんって先頭車両に乗ってたっけ?」

優香「今日はたまたま」

角山「あれ、彼氏?」

優香「違う。幼稚園の時の同級生」

真一「幼なじみです」

角山「角山です。よろしく」

真一「堀川です。よろしく。ウチの優香がお世話になってます」

優香「父親か(笑)」

角山「幼なじみにしては、めっちゃ仲良さそうやな」

真一「そうかぁ?」

優香「こんなもんやで」

角山「そうかなぁ。幼なじみでもここまで仲良しはなかなか見ないなぁ…」

真一「気のせいやろ」

優香「うん」

角山「不思議な2人やなぁ…」


角山は首をかしげながら2人を見ていた。


高校駅に着くと、真一と優香はいつものように話ながら登校していた。

学校に到着し、図書館にて…


優香「しんちゃん、この間カンペン(鉄製の筆箱)が錆びて、何かないかって言うてたやんか?」

真一「え、うん。どうしたん?」

優香「はい、これ」

真一「え? どないしたん?」


優香は、真一に自分が使っていて今は使っていない某テーマパークのキャラクターのカンペンを渡した。


優香「私、もう使わんから、あげるわ」

真一「大事に使ってるやつやないんか?」

優香「昔使ってたやつで、今は全然使ってないからあげるわ」

真一「ホンマにええんか?」

優香「しんちゃんやから、いいよ」

真一「ゴメンよ、おおきに、ありがとう」

優香「いいえ、どういたしまして。これくらいは別にいいよ」

真一「ありがとう。男がこんなかわいいの使ってて大丈夫かなぁ…」

優香「嫌やったら捨ててくれていいから…」

真一「いや、大事に使わせてもらうわ」


下校時も優香は、真一が先生の手伝いを終わるのを待って一緒に帰っていた。真一はいつも自動販売機か学校下の食堂のおばちゃんの所でミルクティを、おばちゃんの所が開いていて、あればドーナツも買って、優香にも渡していた。


真一「はい」

優香「ありがとう。今日はドーナツもや(笑)」

真一「うん」




ある木曜日の放課後、図書館で真一と優香も交えて皆で話していたときのこと。


白木「修学旅行も終わったし、どっか行きたくないか?」

藤岡「行きたいなぁ」

村田「行きたい」

滝川「行きたいねぇ」

寺岡「行きたいぞ」

佐野山「行きたいに決まってる」

村田「京都とかどう?」

白木「お、いいねぇ。京都行きたいなぁ」

藤岡「みんなの都合が良い日に行こうや」

白木「じゃあ、今度の土曜日とかどうや?」


ほとんどのメンバーは『行く』と返事した。


白木「おい、堀川はどうする?」

真一「オレは今、よりによって金欠病やで、行きたいけどパスするわ」

白木「金欠病か…かわいそうに。加島はどうする?」

加島「私もお小遣いがないから行かない」

白木「そうかぁ…。じゃあ、行く人は土曜日によろしく❗」


そして帰りの電車にて。真一と優香は一緒に帰っていた。


優香「もー、なんで急に京都行こうなんて言うんや❗ 行きたかったのにー❗」

真一「(笑)。しゃあないやん、オレら金欠病なんやで」

優香「それでも急に決めるんやから…」

真一「えらいご立腹やなぁ(笑)」

優香「行きたかった…」

真一「そうやな…」

優香「もう、ホンマに行きたかった❗」

真一「わかったわかった」

優香「この悔しさ、どこにぶちまけたらエエんや?」

真一「言い出しっぺの白木とか、白木とか、白木とか…」

優香「白木くんばっかりやん(笑)」

真一「他にいたか?」

優香「そうやなぁ…。でも京都行きたかった」


真一は悩んでいた。優香があまりにも機嫌が悪いので、何か落とし所がないか考えていた。そして、悩んだ末の結論が…


真一「なぁ、今度の土曜日は予定あるんか?」

優香「ないよ。どうしたん? 皆で京都行くんか?」

真一「京都は行かん。…金無い人間だけで京都は行かれんけど、地元でどっか行くか?」

優香「うん❗」


と、優香は満面の笑みで真一に笑顔を振りまいた。真一と優香は土曜日に地元で遊ぶことにした。真一はやれやれ…と思いながら優香の様子を見ていた。初めてデートする2人だった。


翌金曜日、真一は藤岡と話していた。


藤岡「堀川、明日はどうするんや?」

真一「あんたら京都行くんやろ? オレは金欠病やで、のんびりするんちゃうか。誰かさんが、昨日えらいブリブリ言うてご立腹やったわ(笑)」

藤岡「誰かさんがね…(笑)」

真一「そう、誰かさん」

藤岡「お前、その誰かさんと会わへんのか?」

真一「なんでや?」

藤岡「金欠病同士で会わへんのか?」

真一「とにかく『急に決めるんやから…』言うて怒ってたなぁ。機嫌とるのに難儀したで」

藤岡「そうか(笑) どうやって機嫌とったんや?」

真一「茶シバき(飲み)に行くことにした」

藤岡「そうか。デートやんか(笑)」

真一「そんなエエもんちゃうわ❗ 所詮、機嫌とりや」



翌日土曜日、白木達は京都へ遊びに行った。

一方、金欠の幼なじみ2人はというと、昼前に北町病院のバス停で待ち合わせ、真一はバスで、優香は自宅から自転車に乗ってバス停へ向かう。予定通りバス停で2人は会い、さっさと昼飯食いに幼稚園近くのファミレスへ向かった。

ファミレスでは2人とも日替わりランチならドリンクバーも付いていて、何とかなりそうだったので、日替わりランチを注文した。


優香「金欠でも、大丈夫なん?」

真一「まぁ、なんとかなるやろ」

優香「ホンマ大丈夫?」

真一「まぁ、細かいこと気にせんと…」

優香「うーん…」


優香は涼しい顔して話す真一を心配していた。

日替わりランチが来たので、早速食べる。


真一・優香「いただきます」


黙々とランチを食べ終わり、コーヒーを飲む真一。優香はミルクティを飲む。


優香「しんちゃん」

真一「ん?」

優香「みんな、今日京都行ってるんやんなぁ?」

真一「そう聞いてるけど。どないしたん?」

優香「ひょっとしたら、ワザと京都行く話をしたんやないやろか?」

真一「なんで?」

優香「京都行く話して、私らも行くって話になったら京都行って遊ぶ。行かんって言ったら、今の私らっていう風に仕向けたんかなぁ…と思って」

真一「そもそも、京都行く話したんは誰が言い出しっぺやった?」

優香「確か…くーちゃんや」

真一「そもそも『どっか行きたい』って言うたのは誰やった?」

優香「誰やったっけ?」

真一「確かなぁ…、白木とか、白木とか、白木…」

優香「白木くんか…って、白木くんばっかりやん(笑)」

真一「アイツら何がしたいんやろなぁ…」

優香「まぁ、いいんじゃないの。私はしんちゃんとごはん食べてますから(笑)」

真一「アイツ、何か変な気ぃ使うなぁ」

優香「それなら甘えたらいいんじゃないの」

真一「なんで?」

優香「幼なじみやから」

真一「そんな理由で?」

優香「あまり気にせんかったらええやん」

真一「まぁね…。気にはしてないけど…」

優香「あー、お腹いっぱいになったし、予定のお茶も出来たし、この後どうする?」

真一「どっか行く言うてもなぁ…」

優香「お小遣い無いしなぁ…」

真一「散歩する?」

優香「どっかブラブラしますか…」


そして2人はファミレスを出て、街の方へ向かった。


真一「何かして遊ぶ?」

優香「ゲーセンもなぁお金使うし…」

真一「ボウリングは?」

優香「お小遣い大丈夫なん?」

真一「ええやろ」

優香「ホンマか?」

真一「なんとかなるやろ」

優香「じゃあ、ボウリング行く」


2人はボーリング場へ向かった。真一がボウリング場のサービス券をなんと4枚も持っていたのだ。2人で2ゲーム遊べる事ができた。


優香「さすがやな(笑)」

真一「捨てずに持っといて良かった(笑)」

優香「ボウリング、私へたくそやで」

真一「オレもへたくそやで。なんせ不器用やからね(笑)」

優香「まぁ楽しめたらいいよ」

真一「うん」


真一と優香はボウリングを楽しんだ。スコアはともかく…。


ボウリング場を後にした真一と優香は、真一がバスの時間を見るが、バスが行ったあとだった。仕方なく次のバスまで待つことに。優香は一緒にバスを待つことにした。時間までの間、本屋で立ち読みをすることに。


真一「何見てんの?」

優香「お菓子の本」

真一「次は何か(お菓子)作るの?」

優香「うーん、何しようかな…って見てた。美味しそう」

真一「そうやなぁ」

優香「じゃあ今度、しんちゃんに作ってもらおうかなぁ…」

真一「しんちゃんって、弟のしんちゃん、それともオレ?」

優香「しんちゃんはしんちゃん」

真一「いやだから、しんちゃんって、弟のしんちゃんなのか、オレなのか?」

優香「だから、しんちゃん(笑)」

真一「だから、それは分かっとんねん。オレ? 弟のしんちゃん? どっち?」

優香「しんちゃん(笑)」

真一「えー…。オレは不器用やっちゅうねん」


2人は笑いあった。

季節は秋、夕方になると肌寒くなってくる。


優香「寒くなってきたね」

真一「ホンマやなぁ。大丈夫か?」

優香「うん」


真一が優香の手をさわる。


真一「冷たい手やなぁ。ほら、手袋」

優香「ありがとう」


真一は照れながら持っていた手袋を優香に渡した。優香も少し照れていた。


優香「寒いね…」

真一「うん。大丈夫か?」

優香「うん、大丈夫」


真一と優香はバス停のベンチに座る。バス待ちの人がいるにもかかわらず、優香は寒そうにしていた。


真一「寒いから、はよ帰った方がいいんやない? 風邪ひくで」

優香「大丈夫。しんちゃん見送ったら帰る」

真一「わかった。マフラーは?」

優香「大丈夫やから…」

真一「寒そうにしてるがな」


真一は優香の首にマフラーを巻いた。


優香「ありがとう」

真一「うん」

優香「しんちゃんは寒くないの?」

真一「大丈夫や」

優香「一緒にマフラー巻かへん?」

真一「大丈夫や」

優香「巻こう」


優香は真一のマフラーを少しほどいて、真一に半分巻いた。


真一「ゴメン、優香ちゃん」

優香「ううん、いいよ、しんちゃん」

真一「オレら密着してるけど、いいの?」

優香「いいやん。幼稚園の時とあまり変わらんやろ」

真一「そうかなぁ…。甘えたかったんか?」

優香「しんちゃんが私に甘えたいんでしょ?(笑)」

真一「いや、オレ何もないけど」

優香「顔赤いで(笑)」

真一「優香ちゃんも顔赤いで(笑)」

優香「しんちゃん」

真一「ん?」

優香「ありがとう」

真一「…うん」


優香は頭を真一の肩にもたれていた。真一は何も言わずに受け入れた。このときお互い、一瞬『幼なじみ』を越えた気がした。

そして、ようやくバスが来た。


真一「長いこと待ってくれてありがとう」

優香「ううん、楽しかったで(笑)」

真一「また、行くか?」

優香「うん」

真一「今度こそ、京都か?」

優香「そうやな(笑)」


真一がバスに乗る。

バスのドアが閉まり、優香が手を振る。真一も車内で手を振って答える。すると優香が『チョキ』を出す。真一は『グー』を出し、手を振ったのがじゃんけんに変わった。お互い爆笑していた。

優香は真一の手袋とマフラーをして家路につく。優香は自転車をこぎながら、嬉しい気持ちを隠せなかった。








浅田「あの人(優香)とデートはしたんや…」

真一「あの時、白木らが急に『京都行く』って言うたから、優香さん機嫌悪かったからなぁ…。機嫌とりに金欠やったけどメシ食いに行ったんや」

浅田「あ、そう。やっぱり、あんたのこと気になってたんやなぁ…」

真一「当時のオレは、幼稚園の時と愛想が何ら変わってなかったから、『普通』やと思ってたんや」

浅田「それが『幼なじみ』特有の現象や。本人たちはいつも通りやけど、第三者から見たら、めっちゃ仲良しに見えて『付き合ってるんか?』って誤解されるんやなぁ…」

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