第3話 25年前の夢を見る真一…『優香の異変』②

(回想・夢の中)

夕方、真一は一人で下校し、高校駅に向かっていた。しばらくすると、後ろから優香が真一に手で目隠しをする。




優香「だーれだ?」

真一「……えーっと…、誰だっけ?」

優香「だーれだ?」

真一「………あ、わかった。優香ちゃん」


優香は笑う。


真一「どないしたん(どうしたの)?」

優香「何が?」

真一「『だーれだ?』って目隠しなんかして…。ハイテンションやなぁ」

優香「そうかぁ? こんなもんやろ」

真一「そうか…」

優香「先生のお手伝い、忙しそうやなぁ」

真一「うん…急いでるみたいやから」

優香「そうなんや…」



真一は自動販売機で冷たいミルクティを2本買って、1本優香に渡す。



優香「ありがとう」

真一「おう」



その後2人は他愛もない会話が南駅に電車が着くまで続き、南駅で真一が降りて別れるまでずっと話していた。




土曜日、真一は白木の家にお邪魔して、パソコンを借りてワープロソフトで保健室・大川先生の資料作りにとりかかっていた。すると白木は、どこかへ電話している。そんな事は構わず、真一はワープロソフトで資料作りに専念している。白木は電話の後、昼飯を買いに出ていった。


1時間後、白木は誰かと一緒に帰って来た。



白木「おい、昼飯」

真一「あ、すまん。金払うわ。ナンボやった?」

白木「500円」



真一は白木に500円支払い、頼んでいた唐揚げ弁当を手に取った。すると、白木の後ろから声が聞こえた。



村田「ヤッホー」

優香「こんにちわ」

真一「あ、いらっしゃい。散らかってるけど、まぁあがって」

白木「おい、ここは俺んや(笑)」



優香と村田は笑う。



真一「え、ところで2人どないしたん(どうしたの)?」

村田「白木くんがゆうちゃんに電話して、たまたまゆうちゃんの家に私もいたから、ついてきたんや」

真一「そうかぁ…。まぁこの部屋散らかってるけど、ゆっくりしていって」

白木「だから、俺ん家や❗(笑)」

優香「みんなでごはん食べよう」



そう言って、4人は昼食をとる。

昼食をとったら、白木は話す。



白木「あ、村田、そういえばこの間、携帯用音楽プレーヤーの事聞いてたよな」

村田「あ、うん、そうそう。見てもらおうかと思って…」

白木「オレがいつも行ってる電気屋のおっちゃん、めっちゃ詳しいんやけど、行って話し聞くか?」

村田「そうやなぁ…。ごはんも食べたし、行こうかなぁ」

白木「ほな行こか。加島はどうする?」

優香「私はいい。留守番してる」

白木「わかった。そうともなれば早速行くか」



そうして白木と村田は電気屋へ出かけた。真一は資料作りを再開した。優香は白木と村田が出ていった事を確認すると、真一のとなりへ移動した。それもかなりの至近距離。真一が振り向けばキスしてしまうくらい接近していた。



優香「何してるの?」

真一「…あ、あぁ、大川先生の資料作りや」



真一は優香がかなりの至近距離でビックリしていた。キーボードで文字入力も、手がおぼついていない。明らかにドキッとしていた。



優香「いつもエラいなぁ、しんちゃんは」

真一「何が?」

優香「先生のお手伝い」

真一「しゃあない(仕方がない)わ」

優香「何の資料作ってるの?」

真一「性教育」

優香「そうかぁ…。えーとなになに…性交について…か」

真一「………」

優香「しんちゃんは性交したことある?」

真一「…なぁ、あると思うか?」

優香「さぁ」

真一「したことあるんか?」

優香「あると思うか?」

真一「あるんか?」

優香「ないわ❗」

真一「経験済みやから聞いてきたんかと思うやん」

優香「じゃあ、私と経験してみる?」

真一「…なぁ、自分で何言うてるかわかってんのか? 『私とエッチしてみるか?』って言うてんねんで。女子高生というか、女の子が簡単に言うことか?」

優香「しんちゃんやで言うたんや(笑)」

真一「冗談キツいわ」

優香「なぁ、顔赤いで(笑)」



優香は困った顔した真一を見ながら笑っていた。



優香「しんちゃん、女の子とキスしたことあるの?」

真一「なんやねん、急に」

優香「キスしたことあるの?」

真一「…聞く以前の問題やろ。あるんか?」

優香「…この間断った」

真一「あ、そう…」

優香「というか、したかった」

真一「なんやそれ」

優香「しんちゃんと…」

真一「はぁ? 何言うてんの?」

優香「なぁ、まだ顔赤いままやで(笑)」

真一「優香ちゃんだって、人の事言えへんやないか(笑)」

優香「なぁ、今したらアカンか?」

真一「なんでや?」

優香「今のうちに私のファーストキス奪っといて欲しいし、しんちゃんのファーストキス奪いたい」

真一「冗談キツいなぁ…」

優香「マジやったらどうする?」

真一「こんな状況で? しかもここは白木の家やで。アイツの事やで、ひょっとしたら隠しカメラ設置してるかもしれんぞ。見られたらどうすんねん?」

優香「あー、なんとなくその気持ちわかるわぁ。白木くん怪しいもんなぁ…」

真一「そうやろ?」

優香「じゃあ、ココ以外で2人っきりになったらしよっか(笑)」

真一「だから、なんでそこへ話が行く? 最近テンション高いなぁ…」



優香の大胆発言(冗談?)に真一は困惑していた。

優香は真一に甘えていた。



真一「優香ちゃん、どうした? 何かあったんか?」

優香「何が?」

真一「『何が?』やないって。今日はめっちゃ甘えてるけど、何かあったんかいな?」

優香「別に…。ただ、しんちゃんと居たかっただけ」

真一「そうか…」

優香「あ、しんちゃんの仕事の邪魔してるよね。ゴメン」

真一「白木がおらんから、優香ちゃんが甘えたけりゃ甘えたら…? オレは続きしてるから…」

優香「ええの…?」

真一「する事無いんやろ? さっき村田さんと一緒に行ったら良かったのに…」

優香「ええ(いい)の…。白木くんとくーちゃんの邪魔したら悪いと思って…。それに幼なじみだけで居たかったから…」

真一「そうか…」

優香「なぁ、ワープロソフトってどうやって文字入力してるの?」

真一「情報学科の優香ちゃんならやってるやろ? ローマ字漢字で入力してるで」

優香「どうやってするん? してみたい。教えて❗」

真一「いや、教えんでも知ってるやろ?」

優香「教えて❗」



優香はキーボードの前にいる真一を退かして、優香が座ったら、その後ろから真一に二人羽織のようにキーボードをタイプしてもらおうとしていた。



真一「なぁ、この状態、オレが優香ちゃんを後ろから抱いてる状態になるんやけど…」

優香「抱いたらええやんか❗」

真一「いやいや、おかしいおかしい」

優香「ええやん別に、幼なじみやし」

真一「いや、幼なじみやからとかの問題やないやろ」

優香「しんちゃんやから、いいの❗」

真一「なんでオレやったらええねん? 白木ではアカンのか?」

優香「アカン❗」

真一「どうしたん? 今日はヤケにオレにグイグイ誘惑してるやないか。この間凹んでたの、何かあったんか?」

優香「…何もないよ」

真一「誰もおらん今やから聞いてんねん」

優香「何もないって」

真一「南駅で何があったんや?」

優香「え?」

真一「あの時、オレ毎日優香ちゃんが南駅から電車乗ってきたのを、オレが電車降りるとき見たんや」

優香「見てたん?」

真一「うん。凹んでた事と関係してなかったらええなぁ…とは思ってたんやけど。まぁ、オレが首突っ込むことやないから、オレの方から聞くつもりはない。ただ、あの頃から優香ちゃんの様子が変わったから、気になってただけや」

優香「あのな、私…」

真一「詳しく言わんでもええよ。言いたくないんやろ? 辛い思いしたんやろ…?」

優香「しんちゃん…」

真一「あの南高校の男の子か?」

優香「見てたの?」

真一「見かけただけや」

優香「どこで?」

真一「駅で」

優香「…ずっと見てたんか?」

真一「見かけただけや。ずっと見てたらストーカーやろ?(笑)」

優香「はぁ…、しんちゃんに見られてたんか…」

真一「詳しいことはもちろん知らんで。ただ、あの男の子が原因なんかな…とは思ってた。みんなの前では『何も知らん』って通してるから大丈夫や」

優香「しんちゃん、実はな…」

真一「もう言わんでええよ。どうせ迫ってきたとかいうオチやろ?」

優香「…うん」

真一「まぁ、そんなことやろうと思た」

優香「しんちゃんには何もかんもお見通しやな…」

真一「誰やと思ってんねん。幼なじみのしんちゃんやで(笑)」

優香「幼なじみにはかなわんわ(敵わない)…」

真一「どうだ、参ったか?」

優香「…じゃあ、このまま後ろから抱いてよ❗」

真一「意味がわからん」

優香「抱くこともようせんのか?(笑)」

真一「幼なじみがすることやない。恋人にしてもらいな(笑)」



真一は優香の頭を撫でた。



優香「しんちゃん」

真一「ん?」

優香「心配してくれてありがとね」

真一「おう」







真一と浅田がスマートフォンで話している。


浅田「そんなことがあったんや…」

真一「あぁ…」

浅田「グイグイ誘惑してきちゃったんやから、全部受けたら良かったのに(笑)」

真一「全部て…(汗)。あんなこと言われても、実際はやっぱり女の子や。南高校の男の子と何かしらあったかどうかは知らんけど、とにかく傷ついてた感じやったから、無理してたんかもしれんし、あんたが思うようにホンマにオレと(キス)したかったんかもしれんし…。それはわからんなぁ…」

浅田「オレはどっちもやと思う。無理してたんやろうし、あんたと(キス)したかったんやと思う。どっちにしてもあんたと一緒に居たかったんやな…。しかし、よう(よく)わかるなぁ、あの人(優香)のこと」

真一「まぁ、だてに『幼なじみ』を10年程やってたんでねぇ…(笑)」

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