第2話 25年前の夢を見る真一…『優香の異変』①

真一と浅田は、電話で真一が見た高校時代の夢について話していた。真一が浅田に高校2年の時の話をしはじめた。





(回想・夢の中)

あっという間に真一たちは高校2年生になった。

真一は、2学期になっても相変わらず先生の手伝いや高山の科学部の手伝いをして、夕方に帰る日々が続いていた。大抵、白木・佐野山と一緒に帰るパターンになっている。 電車が南駅に着いた。


真一「じゃ、帰るわ」

白木・佐野山「おー、お疲れ❗」


車両の前扉から真一は降りる。すると、車両の後ろ扉から優香が乗ろうとしているのがホームから見えた。


真一(買い物でも行ってたんかなぁ…)


真一はそう思いながら、何事もなく改札口を出た。


次の日も真一は白木と一緒に電車に乗り、南駅で降りると、優香が電車に乗るのを見た。


その次の日も、そのまた次の日も、あくる日も、優香が南駅から電車に乗るのを見かけた。


真一(毎日買い物してるようではなさそうやなぁ…)


そう思いながらも、真一は気にすることなく改札口を出た。


次の日、真一は一人で電車に乗って帰る。南駅に着くと、優香がまた南駅から電車に乗ろうとしていた。すると、優香の隣には南高校の男子生徒の姿があった。上野という男だった。真一は上野のことはもちろん知らない。優香が電車に乗ると、優香と上野はお互い手をふって別れた。


真一(優香ちゃん、男ができたんか?)


と少し思いながら、改札口を出た。

優香は南駅を発車した北行きの電車から改札口を出る真一の姿を見かけた。



土曜日、真一は北町にいて、白木の家に遊びに来ていた。遊びに来ているというよりも、保健室の大川先生の仕事の手伝いをするのにに、パソコンソフトで入力するのに真一はパソコンを持っていない為、パソコンを持っている白木の所へおじゃましていたのだった。


白木「しかしお前、休みの日でも仕事か?

高校生やったら、ゲームとかはたまたア◯ルト◯デオとか見てるやろ? 」

真一「100歩譲ってゲームは良しとしよう。後のア◯ルト◯デオって、どういうことやねん❗」

白木「男やったら見るやろ(笑)」

真一「そんなもん見たって、虚しいだけやろ」

白木「なんで?」

真一「そらぁ、見たい奴は見たらええ。見たない人間かておるんや」

白木「ほなお前は見たくないんか?」

真一「見たってしゃあないやん」

白木「見たことあるんか?」

真一「無い言うたらウソになるけど、今のオレは手伝いでいっぱいや」

白木「オレもやけどな(笑)」

真一「オレら高校生なんやけどなぁ…、なんでこんなことになったんやろ?」

白木「そういや、そうやなぁ…。どこで歯車が変わったんやろ…。それより、お前最近加島と一緒に帰ってないけど、何かあったんか?」

真一「知らんで。はよ帰ってるみたいやな。この間も加藤さんと滝川さんと帰りが一緒やったんやけど『先に帰っちゃった』って言ってたなぁ…」

白木「お前、本人からは聞いてないのか?」

真一「聞いてへん(ない)」

白木「なんでやねん。聞けよ」

真一「そこまでオレ干渉せんなんのか? おかしいやんか❗ 聞きたけりゃ、あんたが直接聞きないなぁ」


真一は、本当はこの間の南駅で見たことを思っていた。『あの時の南高校の男は彼氏か?』と。しかし、白木には言えなかったというよりは言ってはいけないと思った。



月曜日の高校駅。電車を降りた真一は白木と一緒に当校する。

駅前で優香を囲んで心配している村田・加藤・滝川の姿があった。


白木・真一「おはよう」

村田・加藤・滝川「おはよう」

白木「加島、おはよう」

優香「…………」


真一と白木は優香の様子がおかしいことに気づく。


白木「村田、加島何かあったんか?」

村田「それがわからんのや。何も言ってくれなくて…」


心配している3人と、白木。真一はそれを黙って見ている。


白木「堀川、お前何か知ってるか?」

真一「いや、知らんで」


真一はしばらく優香の様子を見ていた。




翌朝、高校駅でのこと。真一と白木、それに坂本は優香たちに挨拶する。


白木「おはよう」

村田・加藤・滝川「おはよう」

白木「加島、おはよう」

優香「…………」


坂本・真一「おはよう」

村田・加藤・滝川「おはよう」

優香「…………」


坂本「おい堀川、加島さん、何かあったんか?」

真一「知らんねん」

坂本「知らんってどういうことやねん?」

真一「知らんもんは知らん」

坂本「お前、幼なじみなんやから気づいてやれよ」

真一「昨日からあの調子や」

坂本「何かあったんやろか?」

真一「どうせまた、貧血なんとちゃうか?

とりあえず村田さんらに任せるしかないやろ…」


優香は真一たちが声をかけても、終始しょんぼりしていた。次の日も、そのまた次の日も、朝はこの調子だった。真一は黙って様子を見ていた。

昼休みのこと。真一は廊下で滝川に出会う。


真一「滝川さん」

滝川「あ、堀川くん」

真一「どうや、優香さんの様子は?」

滝川「変わらんなぁ」

真一「そうか。何か心当たりもないか?」

滝川「わからんなぁ」

真一「そうか。また何かあったらいつでも言うて。迷惑かけるけど…」

滝川「ううん。ありがとう」


真一と滝川が別れる。真一は夢の中で思い返していた。


真一(そうやった。こんなこともあったなぁ。確か南駅で見た男と何かあったなぁ…。けど、それはオレが立ち入ることではないから、村田さんらに任せるしかなかったような…。夢の中でも様子見てみるか…)


その後も、優香は相変わらず凹んでいた。真一は坂本と一緒に高校駅から当校していた。駅前で凹んでいる優香を囲んで村田・加藤・滝川がいるのを見かける。


坂本「まだわからんのか、加島さんのこと」

真一「わからんのやない、知らんのや。男が立ち入ることやないんやろ…」

坂本「お前なぁ、自分から声かけてみたら?」

真一「かけてるがな」

坂本「ちゃう(違う)、『何があったか知らんけど、調子悪いんやったら保健室にでも行ったらどうや?』って言うてあげたらどうや?」

真一「いや、そう思うんやったら、あんたが言いないなぁ」

坂本「ちゃう、オレやなくてお前が言わなあかん」

真一「なんでや?」

坂本「幼なじみやからやん。こういう時こそ、オレよりも幼なじみから言った方が嬉しいんやって」

真一「ハッタリかましてるやろ?」

坂本「ウソやと思うなら、加島さんに言うてみな」

真一「あのなぁ、何でもかんでも幼なじみに押し付けることないやろ? あんたがそう思うんやったら、あんたが言いないなぁ」

坂本「いや、これは幼なじみが言わなアカンのや。オレみたいな第三者より、第三者でも幼なじみのお前の方が説得力あんねん。だから、一回言うてみてくれ。頼む❗」

真一「もう、困ったやっちゃなぁ…。わかったわかった…」


坂本「おはよう」

村田・加藤・滝川「おはよう」

真一「おはよう」

村田・加藤・滝川「おはよう」

真一「どうや、まだアカンか?」

村田「うん…」

真一「そうかぁ…。まぁ何があったか知らんけど、そんなにしんどいんなら、保健室の大川先生の所へ行った方がエエで、あぁ…。まぁまた何かあったら、悪いけど頼むわ…」


そう言って、振り向くと坂本はいなかった。


真一「なんやねん、おらへんやないか❗」


そう独り言を言う真一。仕方なく一人で登校することに。すると、真一が持っていた傘を後ろから誰かがひったくってきた。


優香「えーい…」


前を見ると、優香だった。

真一はさっきまで凹んでいた優香が、ものの1~2分しか経っていないのにこんなに明るくなっていることに、思わず立ち止まって呆気にとられていた。そして村田たちがいない。


優香「どうしたん?」

真一「いや、それはこっちのセリフや。さっきまで凹んでたやん❗」

優香「え? そう?」

真一「そうやんか❗ 凹んでたやん❗」

優香「そうやったかいなぁ…」

真一「そうやんか❗ どないしたん?」

優香「何が?」

真一「何がって、みんな心配してたんやで❗」

優香「そっかぁ…。ゴメンな」

真一「というか、さっきまで凹んでて、今手のひら返したかのように機嫌良くなって、なんかオレ、狐につままれてるような感じなんやけど…」

優香「そうか?(笑)」

真一「いや、笑い事やないで」

優香「ゴメンゴメン」

真一「で、貧血ではないんやな?」

優香「大丈夫やで」

真一「芝居してたんか?」

優香「違うよ、しんどかったよ」

真一「ほな、なんで急に変わったん?」

優香「まぁ、いいからいいから、ね(笑)」


優香は満面の笑みを真一に見せた。それを見た真一は、優香の気持ちを察して、これ以上は聞かなかった。


真一「もう大丈夫なんやな?」

優香「うん。ゴメンな。ありがと」

真一「おう。みんなにも心配かけさせてるから、特に村田さんたちには、よう言うときや」

優香「わかった。…さすがしんちゃんやな」

真一「なんやねん、急に」

優香「私の事だけやなくて、周りの人の事も考えて言ってるなぁ…って。感心するわ(笑)」

真一「だって、ホンマにみんな心配してたで。白木と坂本に関しては毎日オレに聞いてきたんやから。『加島さん、何かあったんか?』って。知らんちゅうねん。何でもかんでもオレに聞いてきやがって…」

優香「そうやったんや。ゴメンな、しんちゃんに迷惑かけて」

真一「オレはいいから、白木らにも言っときなよ」

優香「わかった」

真一「ホンマに大丈夫なんやな? 無理してへんのやな?」

優香「大丈夫。無理してないよ」

真一「わかった」


そして真一と優香は高校に着いた。

そして優香はこれを機に、いつもの優香に戻った。





そんな夢を見た真一は目が覚めた。


真一(夢か…。えらい昔の話の夢やったなぁ…。もう四半世紀も前の話やのに…)






そんな出来事の話を真一と浅田がスマートフォンで話している。



浅田「そんなことがあったんや…」

真一「うん…。当時は『狐につままれた』状況やった。もう何がなんだかわからんかったわ」

浅田「それ、あの人(優香)がその頃からあんたのこと、気になってたんやないか?」

真一「知らんけど…。ただ、南駅で見た南高校の男の子と何かあったんやと思ったんや」

浅田「そうなんや…」

真一「後になって優香さんとその事で話したことがあったんや」

浅田「どうやったん?」

真一「それがなぁ…、優香さん、あの時えらいテンション高かって、オレにグイグイ来ちゃったから…。オレが確か白木の家で、保健室の大川先生の仕事をしてたときやったわ…」

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