機械神概要

(注・後続作品のネタバレも含みます)


【禍誕せし機械仕掛けの神】

 十垓米ある物体の牽引機が必要となった。

 十垓米の物体の牽引、それは十数機の複数で行う事とされ、最低の許容範囲として一垓米の大きさは必要とされた。

 しかして、普段からその大きさで運用するのはあまりにも害が大きすぎるのは明白であり、通常は極限まで縮小しておくのが第一条件とされた。

 限界まで縮小可能だった大きさから、最終的には百米程度とされた。これでも待機状態としては大きすぎるのだが、これ以上の縮小化は無理であると判断され已む無しとされた。

 待機状態の牽引機の雛形は頭頂高百米の人型と概要は決まる。そしてそれの原型としての候補に該当するものは少なく、それは星喰機を元にして作られることとなった。

 星喰機は人と人工知能の戦いにおける遺産である。

 人に対してほぼ勝利を確定させた人工知能は、これ以上の人の消去は意味がないと判断して、多くの人工知能は、その活動の場を祖先である人工衛星や惑星探査機がいる場所である黒き星の海へと移した。

 それでも戦場となったこの星に残った一部の人工知能は、人の完全殲滅の前に、一つの和平案を提示していた。

 人と機械が融合した大いなる叡智の創造を、人工知能は夢想していた。

 プラズマ、と呼ばれる第四の物質に命を吹き込み、新たな生命にしようと。

 人は種としての限界に達していた。

 人の代替として生み出された人工知能も、人に代わる種としての限界はすぐに訪れた。

 人工知能は人に代わる新たな種が生まれるまでの間、命の糸を繋ぐ存在が必要だと提示した。それがプラズマ生命体。

 何千という人の意識を混合させ、集合意識というものを作り出し、その数多の意思で、なにものにも代えられぬ第四の物質を制御できる心を作り出す。そして心を持ち生命体となったプラズマを機械仕掛けの人形――自動人形オートマータに封じる。

 人と機械の合成。そして人の進化の行き詰まりを違う形で突破させるその可能性。

 生み出されたモノは、人と人工知能の次の進化体が生まれてくる過程を、見守るもの。

 人はそれを生け贄と考えるか、新たな命を産み落とすための必需と思うか。

 正しい答えはわからない。

 しかし戦いに疲れ果てた人々は、自らを集合意識の一つとすることを望む者が出始め、それは生き残った殆どの人間に伝播することになる。

 人工知能の手により星喰機が建造される。千以上の集合意識を搭載し黒き星の海ウチュウへ飛び、恒星丸ごと一つを吸収してプラズマ塊を作り、それに集合意識を注入させプラズマ生命体を作り出し、自動人形という入れ物に入れて完成させて母星に持ち帰る。

 その制作期間千年。

 自動人形を完成させた星喰機は母星に帰還し永久凍土を溶解させて機体を冷却し、整備が終われば再び黒き星の海へと飛び立つ。

 最盛期では百機以上の星喰機があったのだが、事故や戦闘に巻き込まれて消失を繰り返し、現在では一機の稼働が確認されているのみ。

 しかしてその間に、数万年の時の繰り返しにより自動人形の数は増やされ、星喰機の冷却施設兼整備場には数千体以上が安置されることになる。

 その場所は不可侵の場。魂の安らかな眠りの場所。

 プラズマ生命体を介した人と機械の静かな融合。もう争いは起こらない。自動人形の頭の中の集合意識同士で戦争を続けているかもしれないが、それは外の世界のものからすれば関係のないことだ。

 だが、一人の狂人が、不可侵である筈のその場所に立ち入った。

 必要時に一垓米の大きさに展開する空間機動機械――機械神。

 この狂えし機械仕掛けの神を動かすには何が必要なのか。機械神の創造主はこの星に散らばるあらゆるものを精査したが、結局はこの自動人形以外に最適解が無いのを知っただけだった。

 自動人形たちは眠りから目覚める。人の次の進化を担う生命が現れたのかと機械神の創造主に問う。

 しかし創造主はお前達が機械神の創造、そして常態維持に必要だから目覚めさせたと答える。

 されど、我等を目覚めさせたのであるならば、それは無意味な事では無いだろう。次なる生命誕生の監視者に匹儔する役があるのだろう。

 自動人形は機械神の創造主の言葉を聞き入れ、機械神の常態維持機構となることを了承した。その過程で新たなる生命の息吹の顕現を求めたか。

 いや、元々、機械神を生み出すために星喰機により千年に一度増えていく、この狂った循環サイクルは用意されていたのだろうか――?



【機械神概要】

 一垓米への展開能力を有す。

 以下、待機状態。

 頭頂高100メートル、重量10万トン(基準値――三号機)

 胸部、腰部、右肩部、左肩部への分離機能を有し、各分離部に動力炉を一基ずつ有する。

 頭部内に主操作室、胸部に副腕、腰部両側に副脚を装備。副脚を展開により多脚形態への変形能力。

 内部に自動人形を100~200体搭載。



【一号機】

 まず最初に建造されたのが機械神一号機・アスタロトである。

 星喰機の設計を元に主炉の換装と、一垓米への展開能力の付与が大まかな設計変更となったが、殆ど新設計に近い程の改編が加えられている。設計がそのまま流用されたのは基本骨格フレームくらいなのではないだろうか。

 設計段階初期から機械神本体は、胸部、腰部、両肩部の計四つの部位が分離するように設計されている。

 機械神は四基の動力炉によって駆動するのを基本として設計され、それには封印炉(縮退炉)が用いられている。

 機械神本体が四つの部位に分離するようになっているのは、この炉が暴走してしまったさいに肩と腰の接合を解き、物理的に動力を遮断するのが目的である。

 機械神の設計を進める内にこの機構を緊急回避用としてではなく、個々の機動機械として可変機構を盛り込む案が出てきた。只でさえ巨大な機械神をある程度の大きさに分割して、秘匿効果を高めようという計画案である。

 この草案はそのまま採用され胸部、腰部、右肩部、左肩部の四部位が個々の機動機械への可変機能を加えられる。

 しかしそれでも分離機の図体が大きいのは大して変わらず、更なる小型化が進められる事になった。

 肩部と腰部から伸びる四肢も分割したのである。両腕、両脚を分断し、その数十二。元の胸部、腰部、両肩部を合わせれば総数十六。

 四肢の分離機には補助動力として原子炉(核融合式)が搭載され、大きさ的な問題を度外視すれば巡洋戦艦級の機動機械である。

 機械神は基本的には戦闘兵器ではないのだが(あくまで機械神は牽引機であり、装備された武装は自衛用である)、戦力指数に概算すれば一個艦隊に匹敵する規模である。

 頭頂高にして百米を越える鐘塔ほどもある大きな機体を迅速に移動させるために十六の機体へと分離できるようにし、秘匿しての作戦行動は迅速に行えるようになった。

 しかし余りにも多くの部位へ分割してしまったために、機体強度が低下すると言う欠陥も露呈してしまい(これはあくまで機械神という構造体においての弱さであり、通常の機動機械の範疇からすれば頑健である)、これだけ細かい分離機構は後続の機には取り入れられていない、良くも悪くも試作機としての性能を持たされた機体である。


 機体名 アスタロト

 形式 機械神一号機

 頭頂高100メートル

 重量11万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  副脚内に近接用ナイフ

 備考

  16機に分離


 黒龍師団においても最初期から存在する機であり、永らく機械神操士選定の選定機として用いられていた。

 しかし、一人の少女の選定の際に少女が放出した火の力により大破、その損傷修理が終わるまでは十一号機が選定機として扱われていた。

 一号機はフィーネ台地攻防戦直前に修理完了し、五号機の自動人形やグレモリーの回収に活躍、その後は再び選定機として就役している。



【二号機】

 分割を基本としたために設計が華奢になってしまった前機の反省を踏まえて、機体を繋げたまま移動・秘匿を行うべく、可変機能を特化させたのが本機、機械神二号機・リヴァイアサンである。

 設計自体は機体全体に複雑な可変機能を設けるのではなく、中心となる胸部はそのままに、分離する両肩部と下半身の方へ多くの変形機構を盛り込んでいる。

 機械神としての存在を秘匿しての行動時は、下半身が機械神とは別の巨大機械として振舞い、此方も機械神とは分からぬよう変形した両肩部が、胸部を護衛するような形で隠蔽しながら運用される。

 実験的要素を多く含んだ設計思想は、やはり初期型の機体所以である。


 機体名 リヴァイアサン

 形式 機械神二号機

 頭頂高100メートル

 重量11万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  副脚内に近接用ナイフ

 備考

  両腕と下半身に多段変形機構搭載


 歴史的局面としてフィーネ台地攻防戦が転換点として挙げられるが、二号機はその時点において黒龍師団は未取得である。

 目した捜索中であるが、その特徴的な機構を利用して、他組織に分離して運用されているのではないのかと予想されている。



【三号機】

 試作機としての一号機、実験機としての二号機を経て蓄積されたデータから有効な要素を残し不要な要素を削ぎ落とした機械神の完成機。これ以降に建造される機体の基準となるもの。

 非常にシンプルな機体形状であり、様々な巨大増加装備も考えられたが軽快さを優先して見送られた。

 前二機で分離時に個別機体の腕部や脚部として装備されていた可動部位は、副腕や副脚として補助作業用に残されている。副脚を展開することにより多脚形態へと変形も可能で隠蔽しての行動などに使われる。

 分離機能としては胴体、両腕、下半身の封印炉を搭載する四つの部位へ分かれるという、一号機設計初期段階と同じに必要最小限に留めた。

 本機、機械神三号機・ガンガグラーマは機体設計に置き一貫して、万能よりも確実性を高めた正に基準機として就役する。

 試作機としての一号機、実験機としての二号機、基準機としての三号機の完成を持って建造計画第一段階ファーストステージは終了し、計画は第二段階へと進む。


 機体名 ガンガグラーマ

 形式 機械神三号機

 頭頂高100メートル

 重量10万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  射出鉄拳ロケットアーム 二基

  副脚内に近接用ナイフ


 本機、三号機は、フィーネ台地攻防戦以前より黒龍師団副師団長の乗機として用いられている。



【四号機】

 機械神四号機・アーリマンは建造計画第二段階セカンドステージの初番機である。

 この第二段階は、基準機である三号機の徹底的改造を主眼としている。四号機はその計画の中でも静的進化を盛り込んでいる。

 鐘塔ほどもある巨体を、本機は恒久的な基地として擬装する。そのために、特に軌道施設の輸送を重視した。

 背部に列車を走行させる折り畳み式の軌道設備を有し、基地形態に変形の際に展開させる。装備する軌道は一般的な軌間の路線と、軸幅120インチの広軌鉄道ブライトシュプルバの二種からなる。支線用の15インチ軽便軌道も内部には施設されているがそれは表には出てこない(この軌道施設の裏側には粒子加速器が偽装されている噂があるが詳細は不明)

 この広軌鉄道は機械神級の大型部品を運搬できるように採用されたものであり、32輪からなる超大物車は駆逐艦クラスを積載して運べるほどで、機械神の部品という超重量物も運搬可能。

 通常は線路施設用の資材を積んだ支援機が随伴するが、その必要がない場合、自動人形が外に出て周囲の木材や岩石を用いて線路に見えるものを擬装して作る。

 また、背部軌道施設を展開状態でその上に車輌が載っており、更にその状態で緊急に動かなければならない場合に備えて、背部軌道施設とそれに隣接する両腕を切り離してその場に残し、胴部と下半身のみで行動することも可能である(その際は副腕を展開させる)。

 この機能を利用して腕部と背部軌道施設を前線基地、胴部と下半身を本拠地として二つの基地を揃えることも可能(逆も可)。

 背部軌道施設であるのだが、人型時では格納されたまま装着されているのは不経済であるという考え方から、板状の大型破砕腕として使用できるように補強が成され、中距離において攻防共に運用できる近接兵装となっている。

 この両腕及び背部装備とそれ以外の本体を大まかに二つに分けるという考え方は後続の機に受け継がれ、五号機という最恐の機体を完成させることになってしまう。


 機体名 アーリマン

 形式 機械神四号機

 頭頂高100メートル

 重量15万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  副脚内に近接用ナイフ

 備考

  前線基地型への可変能力

  背面に折畳式軌道設備を装備


 黒龍師団が機械神の管理組織として運用が始まってから最初に取得されたのが本機であり、その時に四号機の側にいた九尾の狐レベッカも一緒に黒龍師団に招かれ、機械神操士としての資格も有する彼女が最古参の乗り手となる。



【五号機】

 機械神五号機・ディアボロス。建造計画第二段階セカンドステージ次番機。

 試作機としての一号機、実験機としての二号機、二つを統合しての完成機としての三号機が生み出され、機械神の基準となるものは出来上がった。

 それ以降は三号機を雛形として派生していくことになるのだが、まずは静的進化ということでその容積を生かした移動拠点として運用できるよう四号機が建造される。機械神という巨大機械をそのまま基地施設として擬装もできる訳で、運用方としては正統進化といえる。

 派生型の最初の機である四号機の成功により、今度は動的進化を盛り込み五号機が建造される。動的とはその機動力を活かし機械神を戦闘兵器として特化させる――ある意味こちらも正統進化。

 機械神より全高が若干低い女性型の人型大型機械が建造され、これにはグレモリーと名付けられる。なぜ女性型なのかというと、機械神本体に格納する必要があるので細身に設計する必要があったからである。五号機の両肩には尖塔のように突き出した格納庫が取り付けられグレモリーをここへ収容する。

 機械神が人型のまま戦う場合は格納されたままか護衛を行うくらいだが、その真価を発揮するのは機械神本体を分割しての戦闘である。

 五号機は上半身と下半身の大まかに二つへと分離変形できるようになっており、二機のグレモリーがそれぞれを装着して戦う。機械神という武装兵器としても超常の存在を別個の大型兵器が、機動する兵装庫として装着するのである。戦力としては想像を絶する。グレモリ――機が分割された五号機を背部に並列装着し、残った一機を予備機として残すことも可能。

 ここで一つの問題が生じる。戦闘兵器として特化させ過ぎてこの機への対抗手段が無くなってしまったのだ。機械神はあまりに強い力を持つ存在であり、常に暴走の問題も抱えている。その際は同じ機械神が討伐を行うのだが、五号機が全力で力を発揮した場合、前段階の四機では対抗は難しいとされた。

 そのため一度は建造中止も考えられたが、自己保存のための自衛手段と考えれば最高の機能であるので、建造は強行され最恐の機体は完成してしまう。

 対抗手段に関しては後続の機、六号機を装甲で、七号機を速力で、八号機を火力で上回る機体として設あ計し一応の解決を見るが、五号機が危険な存在であるのは変わらない。


 機体名 ディアボロス

 形式 機械神五号機

 頭頂高100メートル

 重量12万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  射出鉄拳ロケットアーム 二基

  副脚内に近接用ナイフ

 備考

  搭載機 グレモリー二機


 五号機は分離した状態で信仰国家の御神体として祭られていた。

 フィーネ台地攻防戦の際に、帰還する星喰機に戦いを挑もうとし、黒龍師団がその時点で動かせる全ての機械使徒を相手取り、最終的には機械使徒四番機・プルカロルと相討ちとなって撃破された。

 自動人形は本体撃破以前に全台が脱出しており、黒龍師団の機械神格納施設において新五号機が建造され、新規に運用されている。



【六号機】

 機械神六号機・ツェルノヴォーグ。建造計画第二段階セカンドステージ参番機であり最終機。対五号機用として作られた機体としては初号となる。

 六号機は機械神の中でも特に防御力を重視して建造された機である。

 元々機械神には主脚の他に腰側面に副脚が備えられており、これを昇華させてもう一対の脚、二対の脚を持たせた多脚型の機体。

 機械神級の大型人型兵器は横転させられた際の復旧が難しく、敵対者も定石として転倒を狙って仕掛けてくる。それを逆説的に捉え、最初から転倒しにくい数の脚で支えていれば良いという考えで建造されたのが本機である。

 安定した下半身に身合うように、両腕も巨大なものが設えられ、戦闘時には盾代わりに振り回す。

 一応前後の脚を合わせ野太い二脚状にし、擬似的に人型となることも可能であるが、低空を飛んでの突進くらいにしか用途がないとされる。

 他には脚部を一対ずつ前方と背後に展開し両腕を後ろに回し、機体前後に細長い陸上戦艦の形態へ変形することが可能である。

 対五号機用としては防御力で上回るのを主眼とした機体だが、それは概ね達成されている。


 機体名 ツェルノヴォーグ

 形式 機械神六号機

 頭頂高85メートル(二脚直立時100メートル)

 重量13万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

 備考

  陸上戦艦型への可変能力


 フィーネ台地攻防戦以後は「雲」の移動制御や、細かく千切る作業に従事していたため、陸上での行動が主である本機が空を飛んでの行動が多くなり、操士のカイン・レイシュナーも難儀していた様子である。



【七号機】

 徹底的に改造を施す建造計画第二段階セカンドステージは終わり、本機、機械神七号機・ティアマットから建造計画第三段階サードステージ機となる。

 未だ所在不明となっている機械神七号機は、建造計画第三段階サードステージの初番機であり、五号機への対向機の弍号である。

 第三段階に於いては完成機であり基準機である三号機の設計を殆ど変更しないで流用するのが設計主旨とされ、七号機も頭部と両腕を新設計のものにされた以外は、三号機の設計とほぼ同一である。

 大きく設計変更されている両肩は巨大な推進機となっており、檣塔ほどもある巨体を

音速第四段階マッハ4まで加速させる。これは七号機は五号機を速度で上回ることを目指して設計されたためだ。

 また膝部や脛上部などの機体の一部を分離させ、塔機と呼ばれる人型兵器に組み合わせることも可能である。これは巨大な推進機を装備するにあたって大振りになってしまった機体を護衛するためでもあり、五号機のグレモリーへの対抗手段を用意するためでもある。失われた部品の場所は折り畳まれた代替装甲によって補完されるが、体裁を整えるためだけの紙細工に等しきものなので防御力は無い。


 機体名 ティアマット

 形式 機械神七号機

 頭頂高100メートル

 重量16万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  副脚内に近接用ナイフ

 備考

  搭載機 塔機二機


 黒龍師団は七号機を未入手でありその動向も掴めていない。



【八号機】

 建造計画第三段階サードステージ次番機であり、最終機。そして五号機への対抗機の参号であり最終号機でもある。

 五号機を火力で上回る事を主眼とされ、機械神の搭載能力のほぼ全てを劫火砲の搭載へと回されている移動砲台のような機体である。

 劫火砲とは本来地上で運用される規模のものではなく、黒き星の海での使用が前提の空間破砕機であり、それこそ深遠部開拓の為に障害となる星を丸ごと除去するといった用途ぐらいにしか使い道がないものである。

 当時の建造当初から劫火砲は、自分自身が生み出す力の殆どを自分自身の力の対消滅に使うように調整がされている。

 それでもとてつもない破壊力を示すものであり、もし制限リミッターが外れた状態で撃ち放った場合、それは最早、世界創世の為の炎禍と同じことである。

 世界創世級破壊兵器を八号機が積む理由はただ一つ、五号機を火力で上回る性能を持つことにある。

 本機の就役により、防御は六号機、速力は七号機、火力は八号機が上回ることになり、五号機への対抗処置は一応の完成を見る。


 機体名 ワルキューレ

 形式 機械神八号機

 頭頂高100メートル

 重量13万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  射出鉄拳ロケットアーム 二基

  副脚内に近接用ナイフ

  劫火砲 二基

 搭載機 塔機二機


 黒龍師団は八号機も未入手であるが、その動向はある程度掴んでいる。

 方舟艦隊の周辺に稀に両肩に大きな筒のようなものを背負った巨人が現れ消えていく事象があり(方舟艦隊ではそれが災害指定されている)、それが八号機であると仮定し目した専門の師団員が追跡中である。


 搭載する劫火砲に関しては幸いにして地上において咆哮した記録はないが、もしそうなれば余波熱だけで大地は融解してしまう筈である。

 非常に危険な機体となったが、対抗すべき相手である五号機もそれだけ危険な相手であり、フィーネ台地攻防戦においては五十機以上の機械使徒で襲い掛かり何とか屠ったが、それは五号機建造時では想定外の戦術であったから可能だっただけで、作り直された新五号機相手に再び通用するとは考えられていない。

 やはり世界創世級の炎禍が火を噴く時が来てしまうのだろうか。



【九号機】

 機械神九号機・グラシャラヴォラス。建造計画第四段階フォースステージ初番機。

 機械神は完成機体を重ねる上で、結果的とは言え五号機から八号機に至る四機種が戦闘特化の機体となってしまったため、機械神を支援する機械神が必要という考えの元建造されたのが建造計画第四段階フォースステージの機体である。

 その初番機となる本機は、機械神の機能の殆どを輸送力に転化させるという、ある意味「最恐」とされる五号機などよりも思い切った設計の機。

 その機体形状は胸部だけは他の機と同じ形状であるが、他の部位は大きく人型を外れる。

 両腕は大きな翼状になっており、揚力は生み出さないが大柄な機体を安定させる。上部には円形の盤が設えられているが、これは偵察機に付く回転式電探などではなく、護衛機などの待機用テーブルである。

 翼の部分は目標と高速で接触した際に、外皮や主骨を切り裂ける程に頑丈な作りだが、このような超巨大輸送機型の巨体で、翼衝角機並の格闘機動が出来るのか、甚だ疑問ではある。

 下半身は大型格納庫を二段重ねた物の下に、他の機械神の足部を前後に伸長ストレッチしたものが付いた三段構造となっている。これを背部へと展開させることにより輸送機形態へと変形する。

 格納庫内もかなりの容積があるが、入りきらないものは機体上部に載せるか、下部に懸架して運ぶ。元々が並の戦艦などよりも重い機械神が擱坐した際に迅速に回収出来るようにと建造されたのが本機であるので、運搬方法は様々なものが設定されている。


 機体名 グラシャラヴォラス

 形式 機械神一号機

 頭頂高100メートル(輸送機型時全長300メートル)

 重量18万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 搭載数不明

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  格闘機動用翼衝角 両翼

 備考

  輸送機型への可変能力

 

 本機も四号機とほぼ同時期に黒龍師団が入手した機体で、それ以来様々な輸送任務に従事し、黒龍師団の発展や勢力を伸ばすのに大きく貢献している。



【十号機】

 機械神十号機・ファーヴニル。九号機・グラシャラヴォラスに続く支援機能特化型の建造計画第四段階フォースステージ次番機で最終機。

 長い首に背には羽根、大型の下半身の四周に一本ずつの脚部という魔獣のような姿をしているが、簡易的な人型になることも可能。

 更に大型の下半身を展開させて艦船収容型船渠ドックと工作艦を統合させた移動工場となり、その姿は蠍に似ているとされる。

 機械神は自分自身で修理・部品新造を行えるが、大規模なものは機外に造作施設を作らなければならない。十号機はそれを簡便に済ませるべく、一定以上の大型部品の修理・新造も自力で行えるようにしたのが設計仕様である。

 十号機は機械神以外のものを建造する用途に転用してしまえばありとあらゆるものを作り出せることになる。

 それを危険な要素と判断するか、機械神以上に危険なものなど存在しないと捉えるかは、この機体の本質を知ってからでも遅くはない。


 機体名 ファーヴニル

 形式 機械神十号機

 頭頂高100メートル

 重量16万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 搭載数不明

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

 備考

  胴体部に工場施設を搭載。


 方舟艦を作り続けていたのが本機である。しかし方舟艦が一隻完成する度に十号機常駐の自動人形も十号機を新造し乗り換えていたらしく、方舟艦一隻に対して空の十号機が一機存在している。

 自動人形が常駐するの十号機の行方は未だ持って不明。



【十一号機】

 機械神十一号機・ベルゼヴュート。建造計画第五段階ラストステージ初番機。

 本機はこれまでに作られた一号機から十号機に至る建造情報片の粋を集めた機体であり、各機を統率する指揮駆逐機として生み出された。

 機械神の基準となる三号機を基礎に全体的な性能の底上げが行われており、動力炉も二基増やされ六基、高性能だがそれに比例するようにとてつもなく扱いにくい機体となる。

 この機体の特徴的な装備として統一行動指示装置の搭載が上げられる。単純な操作であれば他の機械神を遠隔で動かすことが可能であり、操士のいない機体の移動などに使われる。他機でも腕部や下半身の分離機を胸部本体から遠隔で動かす機能はあるが、機械神そのものを操れるのは本機だけである。原理的にはそれ以上の行動、例えば戦闘行為をさせることも可能であるが、それは二機以上の機械神で同時に複雑な動きをさせることであり、人間のできる行為ではない。

 この装備も含め、ただでさえ成り手の難しい機械神操士を更に選ぶほどの機体となってしまい、黒龍師団でも特に師団長機として運用されるのみで、殆ど動かされることもない。

 また、偽装を主目的として艦艇型に可変することが可能であり、その際はドクス・エクス・レクス(王たる指導者)という艦名で戦艦として行動する。


 機体名 ベルゼヴュート

 形式 機械神十一号機

 頭頂高100メートル

 重量12万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  射出鉄拳ロケットアーム 二基

  副脚内に近接用ナイフ

 備考 統一行動指示装置搭載

    動力炉は六基搭載

    戦艦型への可変能力

    搭載機 塔機二機


 師団長が十年に渡り不在であったため、大破した一号機の代わりに機械神操士選定の選定機として用いられたり、フィーネ台地攻防戦においては代替の操士の手により『雲』の制御に参加するなど運用されていた。



【十二号機】

 機械神十二号機・アムドゥシアス。指揮駆逐機である十一号機・ベルゼヴュートと同型で、形状的な差異は頭部の両脇から一対の巨大な角が生えているのみであり、他は全く同じ。最強とされる乗り手を選ぶ扱い難さも同じな、もう一つの最強の機体である。

 十一号機と同様に偽装を主目的とした艦艇への可変能力も同じでオルタネイティブ・フォルテシモ(もう一つの最強)という艦名になり、ドクス・エクス・レクス級戦艦二番艦として就役・活動する。

 建造計画第五段階ラストステージ次番機であり最終機である本機の完成を持って、機械神建造計画は完全に終了する。

 機械仕掛けの神が十二柱創成されたことにより世界は随分と歪んでしまった。だから世界はこれ以上の過ぎた力の具現化を望んでいない――のだが


 機体名 アムドゥシアス

 形式 機械神十二号機

 頭頂高100メートル

 重量12万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  射出鉄拳ロケットアーム 二基

  副脚内に近接用ナイフ

 備考 統一行動指示装置搭載

    動力炉は六基搭載

    戦艦型への可変能力

    搭載機 塔機二機


 本機は永らく空の街の動力炉として用いられていたのだが、機械神操士二名がこの空の街へ侵入を果たして奪取、それ以降は黒龍師団所属の正規機械神として運用されている。

 一対の巨大な角には主任操士の希望により魔力を増幅させるための、解析機関が内蔵されている。



【十三号機】

 詳細不明。

忘却舞台オブリビオンステージという言葉のみが伝えられる)



【仮設七号機】

「雲」が出来たことにより航路が妨害され姿を表した空の街に乗り込む為に建造された仮設機。

 黒龍師団本拠地地下に眠る機械神予備部品を三号機に近い形に組み上げ、両肩に移動部品保管庫(機械神十三号機)から取り外した七号機用主推進機を取り付け、頭部を七号機に似せて新造したもの。


 機体名 仮設七号機

 形式 準機械神型機動機械

 頭頂高100メートル

 重量16万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

 (自動人形の搭載は無し)

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  副脚内に近接用ナイフ

 備考 塔機の搭載は無し



【封印機】

 擬似星喰機を伴った黒孔生命体の襲来に備えて用意された準機械神型機動機械群。

 黒龍師団地下施設に保管されている予備部品を機械神一号機から十二号機の形に仮設機として組み上げ、その全ての機体に十六基ずつの封印炉を搭載したもの。

 操作は仮設十一号機と仮設十二号機に乗った意思を持ちし自動人形が行い、総数192基もの封印炉(縮退炉)を使い超重力制御を具現化させ、黒孔生命体の封印に成功する。

 封印としての速効性が必要であるならば星舟による運搬が必須である。


 機体名 封印機

 形式 準機械神型機動機械(仮設機)

 頭頂高や重量は元になった機体に準じる

 一垓米への展開の有無は不明

 兵装 元になった機体に準じる

 総数 十二機

 備考 起動に際しては意思を持ちし自動人形が最低でも二体以上必要



 ――◇ ◇ ◇――



【十三号機】

 機械神十三号機・クロキホノオ。忘却舞台オブリビオンステージという開発類称で呼ばれる機体。

 正規の機械神は全十二機で開発終了している。十垓米ある物体を牽引する一垓米の牽引機としての役目も予備機も含め十二機の定数であれば充分とされている。

 では何故、十三番目の機体があるのか。

 機械神の原型となった星喰機の主炉には龍焔炉という機関が積まれている。

 龍焔炉は零点放射と呼ばれる真空から力を取り出す技術理論によって動く。

 真空と言う状態は「強力な正の力と強力な負の力が拮抗して無を作り出している状態」であると言う理論に基づき、もしこの真空に込められた力を完全に解放できたならば、黒き星の海の一角(銀河系と呼ばれる領域)を丸ごと消滅させることが出来るという凄まじい学術理論である。

 もっともその様に完全解放できるだけの技術は確率されていないのだが、それでも封印炉(縮退炉)等に比べれば桁違いの出力であり、本来は地上での運用される機械の炉に採用されるものではない。移動要塞級の星舟の機関エンジンに使われる規模のものである。

 移動要塞級星舟ほどの大きさではない星喰機の主機関として積まれているのは、その機体名称通りに、恒星ほしを喰らってプラズマ塊へと変化圧縮するために膨大な出力が必要だからである。

 機械神は展開能力を含めてこれ程の危険を伴う大出力機関は必要なしと判断され採用は見送られたが、もしもこれだけの力が未来の世界で必要になった時の為にと、過去の世界から送り込まれた遺産が機械神十三号機である。

 十三号機という機体は機械神の剛性を利用した、その龍焔炉の出力に見合う容器でしかない(それでも出力過多であるが)

 その様に十三号機は最初から余剰として作られた機体であるので、他の正規機体の主要装備を常時装着して運搬する移動部品保管庫としての役割を担っている。

 また、偽装を目的として空母型への可変能力を有し、その際にはアーティフィシャル・アノニマス(人の作りし名も無きもの)という艦名になる。


 機体名 クロキホノオ

 形式 機械神十三号機

 頭頂高100メートル

 重量28万トン(基準値)

 機能

  一垓米への展開

 主要装備

  重力制御機構

  電磁誘導機構

  内部に自動人形を百~二百体搭載

 兵装

  18インチ単装砲 二基

  11インチ連装砲 十二基

  擬似火電粒子射出装置 多数

  各種砲塔 多数

  射出鉄拳ロケットアーム 二基

  副脚内に近接用ナイフ

  備考

    龍焔炉搭載

    封印炉は十二基搭載

    空母型への可変能力

    搭載機 塔機二機

  装着運搬部品

    二号機用予備部品 両腕部

    四号機用予備部品 軌道設備(板型破砕腕)

    五号機用予備部品 グレモリー(二機)

    六号機用予備部品 破砕盾(四基)

    七号機用予備部品 大型推進機(二基)

    八号機用予備部品 劫火砲(二門)

    九号機用予備部品 格納庫(二基)

    十号機用予備部品 工場施設

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龍焔の機械神10 ヤマギシミキヤ @decisivearm

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