第47話 初討伐
翌日、予想通り遠足が楽しみ過ぎて、ほぼ寝なかったと思われるキララとエルがあくびをしていた。
ミュースによれば寝入ったのは深夜で、今日は朝早くから起きて街の外にきているため、睡眠はいつもの半分くらいしか取れてなさそうだ。
背中におんぶしているエルに至っては涎を垂らしてまだ夢の国の中にいるらしい。
「ふぁぁあーー。ねむーい。楽しみ過ぎて寝られなかったよぉ……。うぅー眠いー」
「だから、パパは早く寝なさいって言っただろ。キララは明日の準備を何回してた?」
「えーっと、えーっと、五回くらい?」
ちょっとだけ顔を傾げて、ニコリと笑うキララ。
その笑顔は百点満点だけど、準備を五回もしたら、そりゃあ寝る時間も遅くなるわけだな。
「で、忘れ物何かないか?」
「え!? 全部持ってきたよー」
俺の言葉に、キララが背負っていた荷物を地面に置いて広げ始めた。
一つずつ取り出して確認しているキララだが、肝心の武器を忘れているのだ。
「キララ、これを忘れてるぞ」
俺が見せた愛用の木剣を見て、キララが照れた笑いを浮かべていた。
「えへへ。忘れちゃった。そっか、武器忘れてたよー」
「装備までは気が回っていたようだけど、肝心の武器を忘れたら魔物と戦えないぞ」
はしゃぎすぎて注意力散漫になっていたのだろうが、これが本番だったら大惨事になっている。
今後、外出する際は装備チェックをちょっと厳しくしないとな。
まぁ、何度も街の外に出れば賢いキララだから忘れものも無くなるだろうけど。
「さぁ、キララ。出した物をしまうのはママが手伝ってあげるわ」
「ありがとー、ママ」
木剣を手にしたキララが、ミュースと共に片づけを始めていた。
その間、俺は周囲に
アレフティナ王国には強い部類の魔物はいない。
だが、外にいる以上安心はできないのだ。
周囲には七つほど魔物反応があるが、最弱のスライムと判定されていた。
「キララー! そろそろ、敵のお出迎えだぞー! 準備はできてるかー!」
「えっ!? パパ、まだ準備できてないよー。待ってー!」
広げた荷物をミュースとしまっている最中のキララが慌てていた。
そんな間にも、ふにょふにょと揺れながらスライムが近づいてくる。
「接敵、構えー!! 待っては無しだぞ」
命に係わる可能性がある戦闘に関しては、キララに甘えさせるわけにはいかない。
「ふえええぇ! パパ、待ってー!」
「ダメ、荷物整理は諦めなさい! もう、来るぞ!」
ふにょふにょと揺れているスライムがキララの目の前にきていた。
「キララねーたんの近づくのは、メーなの!」
俺の背中で涎を垂らしていたエルが、いつの間にか目を覚ましていたようで、スライムを火柱で炙って瞬時に溶かしていた。
「あら、残念。エルに持っていかれちゃったわね」
「ふぅうう、エルちゃん、ありがとうぅ!! あたし、パニックになりそうだったよ。助かったぁ」
キララが目をこすっていたエルの頭を撫でていた。
魔王級の力を持つ、エルの魔法(制御できていない)ではスライム如きではひとたまりもなかったようだ。
「キララ、次来るぞ! 今度はしっかりとな」
「うんっ!!」
「魔物は待ってくれないぞー」
「分かってる」
キララは剣を構えると、向かってくるスライムに対峙した。
今回の敵であるスライムは、鉄をサビさせる体液を内包しているため、使い慣れた木剣で戦わせている。
「たぁあああっ!!」
今までの基礎訓練で、キララの実力は衛兵たちにも引けを取らない程度まで成長をしている。
なので、スライム如きでは触れることすらできず、木剣で叩きのめされていた。
体力を使い果たしたスライムが光を発して消え去ると、紫色の澄んだ小さな宝石が転がり落ちる。
「パパー、これが魔結晶なの? スゴイ綺麗ー!!」
すかさず、魔結晶を拾ったキララがこちらに向けてニコリと笑っていた。
「よしっ! よくやった! ああっ!! しまった!! 『
「待ったはなしだってパパが言ったよー。だから、ムリー」
「そ、そんなぁ。キララの雄姿を撮り忘れたパパがどれだけショックを受けているか分かってくれていると思うんだ」
初めての魔結晶を拾ったキララがミュースに飛び込んでいくと、プレゼントの相談をし始めていた。
「ママー、これでリーファ王妃のネックレスとか作れるかなー。とっても綺麗じゃない?」
「あらー、いいわねー。いっぱいスライム狩らないと無理だけど、やってみる?」
「エルもミーたんと手伝う!!」
背中におんぶされていたエルもミーちゃんを抱えると、キララの隣に行ってしまった。
うむ、パパ一生の不覚……。
だが、まだ『
まだ、慌てる時じゃない。
落ち着け、俺。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます