第38話 家族っていいなぁ
「パパ、ママ。『お付き合い』からってなにー?」
「あにー?」
「みー、みー」
俺がミュースに告っているところをいつの間にか脇でキララたちが見ていた。
「ひゃあ!? キララ、べ、別に何でもないぞ。ママともう少し仲良くしよっかってお約束してたところだ。うん、そう仲良くしようってな。なぁ、ママ」
「え!? あ、あはいぃい!! そうですわね。パパともう少しだけ仲良くしましょうってお約束してました」
俺もミュースもキララたちに見られていたことに動揺して狼狽えていた。
キララが両方の顔を見て、にやりと笑っている。
キララに釣られるようにエルもミーちゃんも俺たちの顔を見てにやりとしていた。
「パパもママも仲良しになるんだねー。いいなぁ、キララも仲良しになりたいなぁー」
「なかおしー、なりたいー」
「みー、みー」
動揺から先に立ち直ったのはミュースの方で、ミーちゃんを抱いたエルを自分の膝の上に乗せると、キララの方に向き直る。
「ええ、みんなでもっと仲良しになりましょうね。もちろん、エルもね。キララ、よく聞いて、パパとママはエルの身寄りが見つかるまでキララの妹として育てようって決めたの。キララはエルのお姉ちゃんになれる?」
「え!? ほんとに! エルちゃんも一緒なの? ほんと? パパ、ママ!」
俺は喜んでいるキララに対し、エルの秘密を打ち明けておくことにした。
頭の回転のいいキララであれば、エルの秘密を知っていれば、周りにバラすこともなく協力してくれるはずである。
そのことを伝えるため、キララを手招きする。
「なにー? パパ」
『実はキララに教えておかねばならないことがある。エルのことなんだが、どうやら魔物らしい。でも、危害を加える気もないみたいだし、パパもママもエルのことを知ってて育てようって決めたんだ。キララもお手伝いしてくれる』
俺の耳打ちを受けたキララは、ミュースの膝に抱かれたエルを見ていた。
すると俺の方に向いて大きく頷いてくれた。
「分かったー! キララもお手伝いするー! エルちゃん、今日からキララがお姉ちゃんだからねー。よろしく」
キララがミュースの膝に抱かれているエルに抱き着いていた。
「キララねーたん、しゅきー」
エルもキララが大好きなようで、ニコニコと笑っていた。
魔物だと思われるエルであるが、外見は普通の幼児にしか見えず、俺は自分の魔法の判定が間違っていたのかもと思いつつあった。
「あらー、キララもエルも仲良しさんね。ママもギューってしていいかしら?」
「いいよー!」
「マッマもしゅきー」
「みー、みー」
三人が抱き合っていたので、スペースが無くなったミーちゃんがするりと抜けて、俺の方に来ていた。
「おや、ミーちゃんはパパの方に来てくれたのか。いい子だなー。パパもギューってして欲しいなぁ……」
ミーちゃんを胸に抱いて三人を見て呟いていた。
「二人とも、パパもギューってして欲しいんだって。してあげる? どうする?」
ミュースたちが俺の呟きを聞いて娘二人に聞いていた。
ミュースに抱き着いていた二人がチラリとこっちを向いて見てくる。
さぁ、パパにギューってしてもいいんだぞ。
ウェルカム、愛しい娘たちよ!
俺はミーちゃんを抱きつつ、二人がくるのを待っていた。
「今日はママの気分ー!」
「エルもマッマのきぶんー」
おふぅう……今日の二人はママの気分だったらしい。
二人が抱き着いてくるのを待っていた俺は寂しくミーちゃんを撫でていた。
「嘘だよー。パパにもギュー」
「エルもギュー」
二人が不意打ちで俺の腰に抱き着いて来ていた。
「じゃあ、今日はママもパパにギューってしちゃう」
そして、ミュースも俺の胸に飛び込んで抱き着いて来ていた。
「みー、みー」
ミーちゃんが推し潰されないように咄嗟に腕を持ち上げると、俺は三人にされるがままに抱き着かれていた。
三人の体温が感じられると、俺は幸せに包まれた気がしていく。
俺は苦しみしか与えてこなかった異世界で、こんな幸せな生活ができるとは思ってもみなかった。
ああ、ちくしょう……家族っていいよな……。
思わずこみ上げる涙を堪えきれずに滴となって零れていた。
「パパー、泣いてるの? どこか、痛いの? お腹?」
「パッパ、泣いたらメー」
「あら、パパはけっこう涙もろいのかしらね」
「ち、違うぞ。汗が目に入っただけだから。泣いてなんてないぞ。さぁ、パパも元気をもらったから帰るとしよう。エルのことを王様にも報告しないといけないからな」
俺は泣いたのがちょっとだけ恥ずかしかったので、みんなに悟られないように嘘を吐いて誤魔化しておいた。
「はーい! エルちゃん、キララのお家に行こう。ほら、おてて繋いでー」
「キララねーたん、おててー」
キララがヨチヨチ歩きのエルの手を握ると、ゆっくりと二人で王城に向けて歩きだしていた。
「二人とも転んだらダメよー。ママも行くから待ってー。パパ、ミーちゃんとこの荷物お願いしますね。二人とも人がいるから気を付けてー」
「お、おぅ。任された」
ミュースが荷物を俺に渡すと、先に歩きだした二人の後を追って駆け出していった。
「みー、みー」
俺もミーちゃんと荷物を持つと、三人の後を追って王城に戻ることにした。
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