第23話 娘と猫が可愛すぎて幸せ
「だっはー、ミーちゃん。そろそろ歯が生えてきてて甘噛みちょー痛いんですけども」
拾ってから一週間ほどが経ち、ミーちゃんの体調は回復魔法の効果もあり、元気があり余るほどまで回復していた。
もふもふの白い悪魔は俺の指を美味しそうに甘噛みしてきている。
くっ、可愛すぎて怒れねぇ……。
キララも可愛いが、ミーちゃんの可愛さはまた違う可愛さだぞ。
なんだ、この超絶可愛い魔物は……。
こ、この可愛さで人を堕落させる魔物なのか……。
こんな魔物、ゼペルギアでは一度も見たことがない。
俺は甘噛みしているミーちゃんに目を細めていた。
「ミーちゃん、パパの指噛んじゃ、ダメー」
そろそろ四週目に入るミーちゃんは、離乳の時期も近づいているため、ミュースがこしらえてくれた離乳食を俺が与えている。
その様子を隣でキララも真剣に覗いていた。
「みー、みー、あむー」
「あの、ミーちゃん。私の指はご飯じゃないよ」
「あー、ミーちゃん。めー! 今度はキララの番ー。こっちの方が美味しいよー」
キララが俺の手からミーちゃんを受け取ると、指に付けた離乳食を食べさせ始めた。
この一週間、キララは孤児院での勉強や俺との練習に加え、ミーちゃんの世話にも手を抜かずに頑張っていた。
すかさず俺は『
今回のタイトルは『キララ、初めてミーちゃんの餌を食べさせる編』だな。
もふもふと可愛い我が娘の組み合わせ。
これはアレフティナ全土興行ランキングナンバーワンの大ヒット間違いなしだぞ。
ちなみにアドリー王とリーファ王妃に献上した『キララ、初めての勇者認定式典編』は、宮廷魔導師たちによって複製され王国内にバラ撒かれている。
おかげで国民たちも、新たな勇者としてキララを受け入れてくれているようだと王からは聞いていた。
「みー、みー、みー」
「ひゃあ、くすぐったいよ。ミーちゃん」
そんなキララの指に付いた餌をミーちゃんが一生懸命に舐めていた。
「キララ様、ミーちゃんのお世話もよろしいですが、自分のお食事も済ませてくださいね。ドーラス師もミーちゃんを見てデレデレしないでお食事済ませてください」
夕食を運んできたミュースが、テーブルに食事を配膳していく。
その顔には『やれやれ、二人ともミーちゃんに夢中で困ってしまいます』的な表情が浮かんでいる。
これは、ミーちゃんのご飯をあげるのに夢中になっているとミュースに怒られるパターンだ。
「キララ、ミーちゃんの食事は一旦中断だ。自分たちの食事を先に済ませよう」
「キララ様、ドーラス師。お二人ともミーちゃんを触っておられますので、お食事前には絶対にきちんと手洗いだけはしてきてくださいね」
「あー、うー。ミーちゃん、ちょっとだけ待っててね。すぐ戻ってくるからね」
ミーちゃんに食事を与えていたキララは、寝床にしている藁と毛布を敷き詰めた木箱に戻し、俺と一緒に手を洗いに手洗い場に行った。
「まぁー、ミーちゃん。本当に可愛いですねー。わたくしも昔にみんなで飼ってた
「あー、ミュースさん! ずるいー! ミーちゃんにご飯あげてるー!」
手洗い場で手を洗い終えて戻ってきた俺たちが遭遇したのは、ミーちゃんにご飯をあげて顔を蕩けさせているミュースの姿だった。
ミュース、そう言えばお前もミーちゃんの魅力にメロメロだったな……。
「キララ様がお食事をされている間、わたくしがしっかりとミーちゃんの面倒を見ておりますのでご安心を。さぁ、ミーちゃんもどうぞ」
「うー、すぐにご飯食べるから! ミュースさん、わたしの分も残しておいてー!」
「キララ様、食事はきちんと三〇回咀嚼して食べると、わたくしとお約束したはずですよ」
「うー、ちゃんと噛んで食べるよ。ミーちゃん、待っててね。あむ、あむ、うー。待ってて、ミーちゃん」
テーブルに置かれた食事を、キララがものすごい勢いでモグモグと咀嚼して食べていた。
せっかく美味い料理なんだから、楽しんで食べた方がいいぞ。
ミーちゃんは一応懐いてくれたから逃げたりはしないはずだ。
それに順番に面倒を見るんだから、慌てなくてもすぐにご飯当番はやってくる。
自分のご飯くらいはゆっくりと食べた方がいいんだがな……。
「キララ、食事の時くらいはゆっくりとした方が……」
と、言いつつも俺も早くミーちゃんとモフモフタイムしたいっ!
俺もキララと同じく猛烈な勢いでミュースの作ったご飯を咀嚼し、味わう間もなく胃に納めていた。
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