第82話 何気ない朝
旅行当日の朝を迎えた。
俺と桜は寝巻きから私服へ着替え、リビングにて朝食を摂っている。
準備に関しては昨晩のうちに粗方済ませ、宿への連絡と、そこへ向かうためのタクシーも手配した。
宿まではそこまで遠くはないにせよ、やはり運賃は結構かかってしまうだろう。財布には久しぶりなんじゃないかというくらい結構な額を仕込んでいる。
「ねぇお兄ちゃん。タクシーは何時に来るの?」
チョコをたっぷりと塗りたくったトーストをはむはむと食べながら、桜は訊ねる。
「そうだなぁ……。一応、九時とは言ってある」
今が午前七時三十分過ぎだから、約一時間半後か。
「そっか。で、お土産とかは買うんだよね?」
「ああ、親父たちには送っておいた方がいいだろうな。温泉に行けるのも親父たちのおかげなんだし」
「じゃあ、せんべいとかでいいんじゃない? パパならなんでも喜ぶと思うけど?」
「まぁ、たしかに」
そう考えると、お土産を購入する際、迷わずに済む。
「ごちそうさまでした。じゃあ、桜はもう一度荷物の確認をしてくるね?」
「おう。あ、ついでに頼んでもいいか?」
「ん、なに?」
「皿洗いは俺がしとくから荷物を玄関まで運んできてほしいんだけど……」
「わかった。運んどくね」
「うん、ありがと」
桜はキッチンの流し台に皿を置くと、リビングから出ていった。
俺もすぐにバターとマーガリンを塗ったトーストを食べ終えると、さっそく皿洗いに取り掛かる。
温泉……楽しみだなぁ。
日頃の勉強による疲れが一気に吹っ飛ぶと考えると、早く行きたくてたまらない。
そんなことを思いつつ、残る家事をすべてこなしていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます