第68話 パシリ
再び起き上がる頃には午前八時を過ぎていた。
その頃には雪平もどうやら起きていたようでベッドの端に座りながら、自前のドライヤーで髪を乾かしている。
――朝シャンでもしてきたのか?
ほんのりとシャンプーの匂いが鼻を刺激しつつも、俺は上体を起こした。
「あら起きたのね」
「その言い方だとずっと目覚めなければよかったのにって聞こえるんだが?」
「That`s right」
「無駄にネイティブだな……」
「So? By the way, I`m hungry so I bought something at a convenience store(そう? ところでお腹が空いたからコンビニで何か買ってきて)」
「なんで英語なんだよ。日本語で喋れ」
「Oh? Maybe you don`t understand English?(あら? もしかして英語わからないのかしら?)」
「わかってるわ! 学年一位を舐めんなよ!」
というか雪平の英語が無性にイラッとくる。
相手が英語を使ってくるなら、俺も英語で返してみるか……。
「……What do you want to eat?(何が食べたいんだ?)」
「サンドウィッチでいいわ」
「……そこは英語じゃねーのかよ」
俺は大きなため息を吐きつつ、寝巻きから私服へと着替える。
「あなたここで着替えるつもり?」
「ここしかないんだから仕方ねーだろ。てか、振り返んな」
素早く上下着替え終えたところで財布とスマホを手に取る。
「一応、言っておくが、鍵をかけたりすんなよ?」
「……それくらいもうわかってるわ。どの道、足掻いたところで無駄だしね」
とはいえ、念のために部屋の鍵も所持する。
「じゃあ、十分前後で帰ってくるから。サンドウィッチだけでいいんだな?」
「ええ……あ、それと水もお願い」
「……わかった」
いいようにパシリに使われてしまったが……まぁたまにはいいか。
そんなことを思いながらも部屋を出て、まだ朝の静けさが残る廊下を歩いた。
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