第65話
やっとピークが過ぎ、店内がガラガラになった頃にはもうすでに午後二時を迎えていた。
海の家から外を見渡すと、パラソルの下でゆったりと過ごす人もいれば、逆にスイカ割りやビーチバレー、遊泳などといった海ならではのアクティビティーを楽しんでいる人もいる。
そんな中で俺を含めた中野先生と雪平はテーブル席に座るなり、ぐったりとうつ伏せになっていた。
先ほどまでクソ暑い中、休憩なしに働いていたということもあって、体はくたくた。正直、もう動けないというところまできている。
「みんなお疲れ様! はい、これ賄いの焼きそばと飲み物ネ! それとかき氷は食後に持ってくるネ」
テーブルのちょうど真ん中に三人分の皿に盛られた焼きそばが運ばれてきた。
俺たちはそれを見るなり、渋々と近くにあった箸立てから割り箸を手に取る。
腹は減っているが、疲労感のせいか食欲がない……俺はこんな状態なのだが、おそらく中野先生と雪平も似たような感じなんだろう。
「「「いただきます……」」」
中野先生が焼きそばを食べるために一時的に背筋を伸ばしたんだが……おっぱいテーブルの上に乗っちゃってるけど?
その光景に目のやり場に困りつつも、改めて焼きそばを口へと運ぶ。
「和樹っち、味はどうかナ?」
「……疲れた体にはいいかもしれませんね」
思っていたよりも味が濃い。
まぁ海の家のメニューなんてどこもこんな感じだろう。汗で塩分を多く消費してしまうから、それを補うためにわざと濃い味つけにしている。
特段美味しいというわけでもないが、なぜかついつい食べたくなってしまう……そんな味付けだ。
「もぉ〜そこは美味しいってちゃんと言わないといけないヨ?」
海江田さんは腰に手を当てながら不満げな表情をする。
「あ、そうだ。これはワタシにとって悪いことであり、みんなからすればいいことだと思うんだけど、今日の分の食材が全部なくなちゃった。というわけで営業はこれでおしまいだヨ!」
「そ、それは本当か!?」
いきなり焼きそばを口に咥えながら席を立つ中野先生。
表情は嬉々に満ちていた。
「そんなに喜ばれると、ちょっと凹んじゃうけど……うん。今日、仕入れた分の食材は切れてしまったからまた明日だネ」
「じゃあ、もうこの後は帰ってもいいってことなんだな!?」
「うん、お疲れ様。あ、約束してたやつは後ほど渡すから安心してネ!」
「わかった!」
一気に元気が戻ったなぁ……。
中野先生は焼きそばをものすごい勢いで胃の中へとかきこむと、キンキンに冷えた缶ビールを流し込む。
それにしても……約束してたやつってなんだ?
なんとなくだが、少し気になってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます