第55話 合宿初日①

 約十五分後。

 待ち合わせ場所である校門前へと到着したんだが、その目の前にはワゴン車が横づけられており、すでに中野先生と雪平の姿がそこにはあった。


「遅いぞ工藤」


 中野先生が俺に気がつくや否や、第一声がこれである。


「いや、まだ約束時間まで十五分くら時間があるじゃないですか……」


 むしろ待ち合わせ時間の八時よりだいぶ早めに来た方だ。

 それなのに遅いだなんて……なんか理不尽!


「でも遅いことには変わりないだろ? 雪平なんて七時から待っているんだからな?」

「いや、早すぎだろ」


 旅行前日の子どもか。

 俺はそう心の中でツッコミを入れつつ、思わず雪平の方に視線を向けてしまう。

 雪平は俺に対し、鋭い目つきをしながらガンを飛ばしていた。こえーよ。


「まぁ……工藤も待ち合わせ時間内に来たことだし、今回に限り、許してやろう。寛大な私に感謝するんだな!」


 中野先生は高笑いをする。

 ――ダメだこの先生……。

 ここはあえて無視することにした。


「で、雪平と工藤も揃ったことだし、そろそろ出発したいんだが……いいか? 忘れ物とかないだろうな?」

「ええ、私は大丈夫ですけど……」


 雪平はじとーっとした目で俺を見る。


「俺も朝、ちゃんと確認したから大丈夫だ。いらん心配してくれてありがとな」

「心配? この私が和樹くんのことを?」

「……んだよ。違うのか?」

「当たり前じゃない。というか、その逆よ。忘れろって念じてたわ」

「性格悪っ!」


 本人(俺)の前で言うことかよそれ……。


「はいはい、二人とも一旦落ち着け。とにかく今から出発するから車に乗り込め。喧嘩はその後だ」

「べ、別に喧嘩しているというわけでは……」

「じゃあ、なんだ? それが喧嘩じゃなかったらイチャイチャか?」

「「それはもっと違(います)うッ!」」


 俺と雪平の声が見事ハモった。


「うーん、もうわかったからいい加減早く車に乗らんか!」


 中野先生は若干、怒った感じでいい、俺と雪平は仕方なく言われるがまま、黙って車の中へと乗り込んだ。

 それから間もなくして、窓の景色が流れ出す。

 車内は陽気な音楽と中野先生の鼻歌だけで、後部座席側はシーンとしていた。

 そりゃあそうだよな。俺と雪平ってなんとなくだけど犬猿の仲みたいな感じだし……。

 そんなことを思いつつ、早起きしたせいか、次第に眠気が襲っていき、俺の意識はぷつんと糸が切れるかのように途絶えた。

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