第47話 お仕置き……。
結局俺のクラスは初戦敗退という結果で終わってしまった。
朝から長かったクラスマッチも終わり、グラウンドに取り付けられているアナログ時計に目をやると、午後三時過ぎ。
ちょっとした片付けと閉会式を終え、俺は帰宅するために荷物を取りに一旦、教室の方へと戻った。
今日はクラスマッチということもあって、全部活休みとなっている。
制服に着替えてから家に帰るというのもありだが、めんどくさい。
帰宅したらそのままシャワーでも浴びようかなと考えている中、隣の席で同じく帰る準備をしていたスズちゃんに声をかけられる。
「かーくん。途中まで一緒に帰ろ?」
「あ、ああ……わかった」
誰かと一緒に帰る……学力検査の時の雪平以来か。
スズちゃんが準備を終えたところを見計らって、俺とともに教室を出る。
廊下を歩いている最中、まだクラスマッチの熱気が収まりきれていないのか、各教室からの騒ぎ声が耳に届く。
相変わらず、青春豚野郎だ……そんなことを思っているうちに靴箱へとたどり着いた。
「そう言えば、スズちゃんの家ってどのあたりになるんだ?」
「市街地方面」
「となると……校門でお別れだな」
一緒に帰るにしてはあまりにも短すぎる。
とはいえ、スズちゃんの家まで俺がついていくわけにもいかないため、こればかりは仕方がない。
やがて靴に履き替え、俺たちは校門前へと向かう。
「じゃあまたな」
「うん、また明日」
スズちゃんは小さく手を振ると、煌びやかに太陽の光を反射する銀髪を翻した。
――さて、俺も帰るか……。
そう思った矢先だった。
「お兄、ちゃん……」
今にも息絶えそうな声が近くから聞こえ、俺は辺りをきょろきょろとする。
が、どこにも声の主は見当たらない。
気のせいかと思い、後ろの方に振り返った瞬間……
「うわぁあ?!」
俺は思わず、何歩か後ずさってしまった。
そこにいたのは生気のない瞳をして、やつれた表情をした桜。
「ど、どうしたんだ?」
俺は付近を見渡す。
いつもなら友だちと一緒にいるはずなんだが、今日に限っては違うようだ。
「一緒に帰ろ? ふふふ……」
「……っ!?」
ちょ……何その不気味な笑み。マジで怖いんすけど……。
とにもかくにも一緒に帰ろと妹から誘われたからには断るわけにはいかない。
ひとまず俺と桜は二人並んで帰宅路を歩く。
いつもと雰囲気が違う桜。
隣からは黒々しいオーラというのだろうか? とにかく闇を感じる……。
「お兄ちゃん……」
「は、はい」
「お兄ちゃんはなんでいっつも他の女の子をたぶらかすのかなぁ?」
「べ、別にたぶらかしてなど……してない、です……」
恐怖のあまりだろうか。なぜか妹相手に敬語を使っちゃってるよ……。
桜は俺を確かめるかのようにジロジロと顔を覗き込んでくる。
「じゃあ、なんでまた“一匹”増えてるの?」
「そ、それは俺に聞かれましても……」
なんとも言えない。
だって、俺からアプローチをかけたというわけでもないし、その前にスズちゃんは幼なじみなわけだから、普通に話しても不思議ではないと思うんだが……。
桜は盛大なため息をつくと、「ふふふ……」とまたしても不気味な笑みを浮かべる。
「この後どうされたい?」
「ど、どう……と、いうのは……?」
「もちろんお仕置きのことだけど?」
「いやいや待て! それは理不尽すぎるだろ!」
なんで何もしていない俺が……。
って、なんか女の子の口から出る"お仕置き"って、エロくね?
そんなくだらないことが頭の中をよぎる中で桜は堪えきれなくなったみたいに吹き出す。
「冗談だよお兄ちゃん! それくらいの常識は持ってるから安心して」
「安心できるかよ……。マジで怖かったんだからな?」
「え? 桜そこまで怖がらせるつもりはなかったんだけど……」
となると、あれは素ということになるんだが?
「まぁ、桜が怖い女だということだけはわかった……」
「えぇ……!?」
桜は困惑した表情を浮かべる。
「でも、お兄ちゃん」
「ん?」
「桜、まだ諦めてないからね?」
「……ああ」
桜と一緒に帰るのはどれくらいぶりだろうか?
随分と久しぶりな感じがする。
最近では、部活とかでずっと帰りが遅くなっていたからなぁ……。
たまには妹と一緒に帰るのも悪くないな……。
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