第44話 クラスマッチ当日①

 一学期の授業日も最後となった今日。

 外は朝から眩しいくらいに日差しが降り注ぎ、空を見上げると雲一つない晴天。

 グラウンドにはSHRを終え、体操服・学校指定のジャージに身を包んだ生徒たちが集まりだし、ほとんどがウキウキとしていて、やる気に満ち満ちていた。

 そう……。

 もうこの状況だけで察しがついてもおかしくはないと思うが、クラスマッチが本日開催される。

 競技はサッカーとバスケットボール。

 どちらかやりたい方に参加する形式になっているのだが……どっちとも参加しないという選択肢はないのかと毎度のことのように思っている。

 俺は一応、狭っ苦しいところは嫌いなんで、外で行うサッカーを選択したんだが……ちょっと男子はしゃぎすぎじゃなーい? 女子が隣のコートで同じくサッカーをするからと言って、いいところを見せようと躍起になっている。

 というか、むしろやる気がないやつなんて見た限りじゃ、俺ぐらいではないだろうか?

 ――みんな青春に夢中なんだなぁ……。

 そんなことを思いつつ、自分のクラスの出番が来るまで木陰の方で傍観していると、隣の方から誰かが近づいてくる気配がした。

 俺はそちらの方に横目を向ける。

 太陽の光を反射した銀髪が異様に目立ったショートカットに、碧眼で色白の肌……


「一人で見るの楽しい?」

「スズちゃんか……。いや、別に」

「じゃあ、なんでここにいるの?」


 この質問についてはおそらく“楽しくないならみんなと一緒にいればいいのに”というニュアンスが含まれている。

 決して雪平が言いそうな悪い意味合いではない。


「それは……ぼっちに対しては愚問すぎるなぁ」


 俺は戯けるようにして笑ってみせる。

 “ぼっち”だからここにいる……これしか答えがない。

 やがて最初の対戦が始まる。


「そう言えば、スズちゃんは女子のところに行かなくてもいいのか?」

「うん、まだ女の子とは馴染めてないから」

「なら、なおさら今行った方がいいだろ。こういう時に積極的に話しかけなきゃ……」


 と、言っているが、一番俺が人に言えない立場だよな。わかってる。うん。


「それはそうだけど……でも、今はかーくんと一緒にいたい……」


 スズちゃんは頬を若干赤らめながら忍び寄るようにして、俺との間の距離を詰めてくる。

 そして、肩同士がぴとっとくっついた。

 ――やわらけっ。

 瞬時的にそう思ってしまった。

 いや、別にやらしい意味とかじゃないよ? ただ、女子の体って毎回思うけど、見た目以上に柔らかいじゃん?

 ……って、この際に“毎回”って使うと、いけないな。それこそ変態に見えて仕方がない。


「あ、あんまくっつくなよ? 熱いし……。しかも誰が見ているかわからないから……」

「私は見られてても平気だよ?」

「俺は平気じゃないんだよ!」


 ほんと……久しぶりに再会したかと思えば、S級美少女に変貌しやがって……。

 そんな奴のことを誰が幼なじみだと気づけるものか……無理だ。

 試合はまだ前半戦。

 俺が所属しているクラスの対戦はもうしばらく後だ。

 その間、のんびりと空でも見つめていよう。

 目の前の光景なんてある意味、目に毒だしな……ははは。

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