第43話 オムライス

「おかえりお兄ちゃん!」


 自宅へと帰るや否や颯爽とリビングから飛び出して出迎えてくれた桜。

 相変わらず今日もフリルが付いた可愛らしいエプロンを身につけている。


「ただいま……」

「夜ご飯できてるからお兄ちゃんは手を洗ってすぐに食べたら?」


 そう言って、桜は俺の手からカバンを掻っ攫う。

 こうしてみると、なんと言うか……新婚の夫婦という感じがして少しむず痒い。

 俺は言われるがまま、家へと上がると、洗面所へと向い、手を洗う。

 今日はぶっ続けのテストだったし、一日くらい勉強しなくたっていいよな……。

 時には休息というものも大切だ。無理をしちゃ、いつかそのツケは回ってくる。

 再び廊下を歩いて、リビングへと入ると、いつもの所定位置にラップがかけられた状態で放置された夕飯が置かれていた。

 ――今日はオムライスとわかめスープか……。

 触った感じまだ温かい。冷めてたら電子レンジで温め直そうかと思っていたが、このままでも良さそうだ。

 さっそくラップを外して、スプーンに手をかける。


「あ、お兄ちゃんどう? 美味しい?」


 リビングに戻ってきた桜が後ろから声をかけてきた。

 俺はふわふわの半熟卵が乗ったオムライスを口にしながら、サムズアップする。


「うん、美味い」


 桜は俺の目の前の席に座ると、頬杖をつきながら、嬉しそうな笑みを見せる。


「よかった。実は初めて作ったんだよね。テストで疲れたお兄ちゃんに美味しいものを食べさせてあげたいなって思って、昼間めちゃくちゃ試行錯誤したんだからね? あ、お礼ならキスとかでいいよ? なんならこの後……グヘヘ♡」

「一応、わかっていると思うけど、キスも何もしないからな? ご褒美が欲しいなら物を言え。何か買ってやるから」

「えぇ〜……お兄ちゃんの愛情が欲しかったのに……」

「それなら毎日やってるだろ? 兄妹愛」

「桜が欲しいのは“夫婦愛”ですっ!」

「まだ夫婦でもなんでもないのにか……」


 思わず鼻で笑ってしまった。

 それに対し、桜はむっとした表情をする。


「いいじゃん別に」

「とにかく物だからな? それ以外は一切受け付けません」

「ちぇ……お兄ちゃんのケチ」

「はいはい……」


 とはいえ、感謝していることは事実だ。

 桜が家事を積極的にしてくれるようになってからものすごく助かっている。

 そのおかげもあって、学力検査にも万全の体制で挑むことができたしな。


「わかめスープのおかわりが欲しかったら言ってね?」

「ああ」


 これで一学期に控えていた大事な行事は全て終わった。

 明日は日曜日だし、この後風呂に入ったらすぐに思う存分寝るとするか……。


【あとがき】

カクヨムコン……今回参加作品三つになりそう。

そして、新作のプロット。現在真面目に作ってます。たぶん今回が初めてかもしれない……細かいところまで決めるの。とりあえず投稿にはまだまだかかりそうです。

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