第40話 学力検査当日②
天高くまで登った太陽の日差しを浴びながら、俺は学校の校門へと立ち寄る。
「遅かったじゃない」
そこにはすでに雪平の姿があった。
「あなたいつも私を待たせるわよね? 男としてどうなの?」
「今回はたまたまだろうが……。まぁ遅れて悪かったとは思っている……」
そう言うと、雪平は校門から離れる。
「早く行きましょ? で、ないと間に合わないかもしれないわよ?」
「……それもそうだな」
俺は急いで雪平の横へとつく。
「ちょっと隣を歩くのやめてもらえるかしら?」
「なんでだよ」
「それくらいわかるでしょ? 和樹くんと恋人もしくは親しい仲だと思われたくないのよ」
「……よく本人の前で言えるな。その根性すげーわ」
「そう? たぶん和樹くんのことをゴキブリ以下だと思っているからかしら?」
––––こいつ……ッ!
「……前々から気になってたんだが、俺ってお前になんかしたか?」
「いいえ。別に何もされてないわ」
「じゃあ、なんでいつもそんな態度なんだよ」
「これが私のデフォルトだからよ」
「ウソつけ! 俺、知ってんだぞ! 他の人には社交的な態度をとってんの!」
「あの人たちは”人間”だからよ」
「……」
「あら? 反論がないということは認めたということかしら?」
「いいや、断じて違う。ただこれ以上話したところで無駄だなって思ったからだ」
「……和樹くんにしては利口な判断ね」
「それはどうも……」
全然嬉しくねーけどな。
俺は言われた通り、雪平から少し離れた後方を歩く。
「和樹くん」
「……あ?」
「私の後ろをついてくるのやめてくれるかしら?」
「は? お前が隣を歩くなって言ったんだろ?」
「……あれは冗談よ」
「その一瞬の間はなんだよ……ったく……」
ツンデレかっつうの。
まぁ雪平に際してはツンデレもクソもねーけどな。素で言っているような感じだし。
というわけで、せっかく気を利かせて後ろを歩いていたのに結局また雪平の隣へ移動する羽目になってしまった。
「今回のテストはどう?」
「どう……って、言われてもなぁ……」
「あら、和樹くんにしては珍しく弱気だわね?」
「そうか?」
「そうよ。いつも私から学年一位を
「別に掻っ攫っているわけじゃ……」
「それくらいわかってるわよ」
「じゃあ、口にすんなよ」
なんなんだよ……。
毎回のように雪平に振り回されているよな俺。
「で、結局どうなの?」
「……テストのレベルにもよるが、だいたいは記憶してきた」
「……そう」
雪平は
「そういう雪平はどうなんだ?」
「私は……いつも通りよ」
「その答え、ズルくないか? 俺だけには明確に答えさせようとして」
「そうかしら? あなた男でしょ? 小さいことは気にしない方が女の子にモテると思うのだけど?」
「うるせっ! 大きなお世話だ!」
べ、別に女子からモテたいとか思ったことないし。女子とか扱いが面倒だし、桜で十分だっつうの。
そんなことを話しているうちに気がつけば、市役所の前へとたどり着いていた。
俺と雪平は身を引き締めながら、自動ドアをくぐり抜け、エレベーターを使って二階へと上がる。
そして会議室前へと向かうと、そこには他学校の生徒が大勢いた。
人数にして約四十名というところか……。
ほとんどの人が会議室前の廊下で壁にもたれかかりながら参考書などに目を通している。
「私たちも最後の復習をしましょ?」
「そ、そうだな……」
見た感じで頭が良さそうな奴らばかりで圧倒されながらも、カバンの中から同じく参考書を取り出す。
ふと、スマホで時間を確認してみれば、テスト開始まで二十分弱ある。
最初に行われるのは数学。
これまでに習ってきた方程式などは全て頭の中に叩き込んできた。
ただ……絶妙に問題文がひねられてたりしていなければ、間違いなく百点は取れると思うのだが……。
そんな心配をよそに隣で同じく参考書を開いている雪平は、先ほどとは打って変わって黙々とページに目を通しながら、方程式でも反復しているのか唇を微かにぱくぱくと動かしている。
特別推薦枠において、学力は審査の対象外とはいえ、下手に点数を落とすわけにはいかない。
主催者が小松原大学ならば、ここでほんの少しでも爪痕を残したいところだ。
これまでぼっちだった分、余った時間をすべて勉強に費やしてきた俺を舐めんじゃねーぞ……。
【あとがき】
今年もクリぼっちか……。
全世界のリア充……爆発しねーかなー。
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