第36話 クソ上司

 カチッ。

 カチッ。

 カチッ。

 職員室の端っこにある長机にて。

 俺と雪平は大量にある五枚一組のプリントをホチキスで留める作業をしていた。

 なんで俺たちがこんなことをしなくちゃいけないのか……と、頭では考えつつも、ひたすら無心になりながら同じ作業を繰り返していく。

 ふとプリントの表紙に視線を落とすと、夏休みの過ごし方など注意事項が記載されていた。

 まぁ長期休業期間では毎回のように全生徒へ配られるものなのだが……これってはっきり言って必要あるのだろうか? 口頭でもいいと思うんだけど?

 と、常に思っている。なにせ守るやつなんてほとんどいないだろうしな。

 高校生なのにゲーセン禁止とかまずあり得ないし。じゃあ、どこに行けばいいんだよっていう話だ。

 それはそうと……プリントの量がエグい。

 おそらく全生徒分あると思うのだが、ホチキス留めが未完了のプリントがまだまだある。

 ――これ……今日中に終わるか?

 てか、そもそもなんでやってねーんだよ。これってたしか先生か職員の仕事だろ?


「おっ? 結構進んでるな!」


 自分のデスクで何かしらの仕事をしていた中野先生がこちらへと近づいてきた。


「どこがですか……」


 完了した分は全て段ボールの中へと入れているのだが……たぶん五十部程度だろうか? この作業を始めてから三十分は経過しているというのに……。

 一方で雪平は中野先生の存在を無視しているかのように、黙々と作業を続けている。


「というか、中野先生」

「ん?」

「俺と雪平、明日“大事なテスト”があるんですけど?」


 俺は嫌味たっぷりにそう吐き捨てた。

 が、中野先生はまったくと言っていいほど気にした風もなく、


「わかっている。が、私の仕事も見ての通り多いんだよ。今は少し休憩しているだけなんだが、この後も文書作成等で忙しくてな」

「なら、これ。俺たちじゃなくて他の先生に頼めばよかったじゃないですか」

「そうしたいのは山々なんだが……他の先生方も忙しくてな。結局やる人がいないとかで全て私に押し付けられたんだよ。まったく……クソ上司め……」


 中野先生はこの後も何かぶつぶつと愚痴りながらも、自分のデスクへと戻って行った。

 愚痴りたいのはわかるけど……それを言うんだったら中野先生もやっていることがその“クソ上司”と変わらないと思う。現にこうやって押し付けてるし、謎のボランティア部を創部した理由も半分は自分の仕事を俺と雪平にやらせようという趣旨があったし。

 カチッ。

 カチッ。

 カチッ。

 俺はリズム良く淡々とプリントにホチキスを留めながら大きなため息を思わず吐いてしまう。

 明日の午後一時。

 小松原大学が主催している学力検査があるというのに……目前で控えている俺たちにこんなことをさせる中野先生……やっぱりおかしいよね!?

 やってられない気持ちでいっぱいなのだが、隣を見れば、今なおも集中した様子で淡々とホチキスを留めている。

 早く帰宅するためにも……これを終わらせなきゃなぁ。


【あとがき】

この作品……面白くできてるだろうか……?

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