第35話 学年順位発表

 学力検査まで翌日と迫った今日。

 全教科の答案用紙が返却されたということもあって、一日置きで上位二十位までの各学年順位が一階の職員室前の掲示板にて放課後、発表される。

 終礼後、荷物はそのままにさっそく一階の職員室前へ足を運んでみると、すでにたくさんの生徒で埋め尽くされていた。

 もはやここを通ろうにも人の荒波に揉まれ、通ることはできないだろう。

 てか、いつも思うのだが、なんで発表がここなんだろうな。

 廊下の幅的にもそこまで広くはないのに、わざわざこんなところで発表することはないだろ。

 するんだったら、もうちょっとゆとりがある場所でしてほしいわ。

 そんなことを考えているうちに職員室の出入り口から二人の若い男女の先生が大きな紙をそれぞれ協力しながら持って、掲示板前へと移動する。

 そして、貼り付けが終わった瞬間、周りの生徒たちはみんな前のめりになるかのように掲示板へと近づいていく。

 ちなみに俺は後方からでも大丈夫だ。なにせ張り出された瞬間に二年の学年トップの方に俺の名前が記されているのを確認したからな。その下には合計点数が記載されているのだが……うん、今回も満点だ。


「チッ……」


 と、いきなり隣の方から舌打ちする音が聞こえ、俺はそちらの方に視線を向ける。


「……って、いつの間に来てたんだよ?!」


 悔しそうな表情を浮かべつつ、俺を鋭い視線で睨みつけている雪平の姿がそこにはあった。


「まさか今回も負けるとはね……」

「……まぁそう言ってもほぼ互角みたいなものだろ」


 雪平の順位は二位なのだが、合計点数が俺と一点しか変わらない。

 ほんと僅差ギリギリで勝つことができて、俺自身内心ほっとしている一面はある。

 が、そう言っても俺は満点だから、どちらにせよ負けることはない。


「だけど、今回のテストって本当に難しかったんだな」

「そうね……」


 雪平に次いで三位の人の点数を見てみると、俺たちより八十点ほども差がついていた。

 それより以下の順位を見ても、かなり合計点数がいつもよりかは低い。

 たしかに各教科の学年平均は五十点を下回っていたし……何はともあれ、現段階での俺たちの学力を少しは試せることができたのかもしれない。

 一応、順位は確認することはできたし、そろそろ部室の方へと向かうか……と、その場から立ち去ろうとした時。


「工藤! 雪平! ちょうどよかった!」


 職員室の出入り口付近でニコニコとしながらこちらを見ている中野先生が立っていた。

 ――嫌な予感がする……。

 きっとこう思ったのは俺だけではないはず。現に尻目で雪平の様子を窺ってみると、同様に嫌そうな顔をしていたし……。


「二人して何ぼぉーっと突っ立ってる? いいから早くこっちに来い」


 ニコニコ顔で手招きをする中野先生。

 俺たちは一度互いの顔を見合わせたが、深いため息とともに渋々と中野先生のもとへと向かった。

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