第34話 もしもし、ポリスメン?
「で、なんで二人は一緒にいるの!?」
比較的席が空いている二階の角側にて。
眉間にシワを寄せ、頬をむぅ〜っと膨らませている桜が目の前に座っていた。
目はじぃ〜っと俺の隣に座っている雪平に向けられているが、その本人はまったく動じた様子もない。
修羅場……先ほど桜の連れ二人がコソコソと言っていた通りの状況だ。
別にやましいことは何もしていないから雪平みたいに堂々としていればいいんだが……桜の連れ二人がさっきからウザすぎるッ!
一席分空けた隣の席に桜の連れ二人は座っているのだが、俺たちのこの様子を傍観して楽しんでいるというか……見せもんじゃねーぞお前ら!
桜とは少し違い、ギャルっぽい見た目をしている女子二人の視線がず〜っと俺に向けられている。
「先ほども説明したじゃないですか。少し用事があって一時的に呼び出しただけだと」
「そうなのっ!? お兄ちゃん!」
キッと視線を俺の方に移動させる桜。
「あ、ああ、そうだけど?」
その迫力に多少圧倒されてしまう。
桜は俺の反応を見た後、二階へ上がる前に注文しておいたコーラをストローで
ズズーっと飲んだ後、ポテトをむしゃむしゃと食べる。
「とりあえず、わかったけど……正直そんなことはどうでもいい」
「「……は?」」
俺と雪平の声が綺麗に重なった。
そのことに対し、尻目でチラリと雪平の方を見ると、とても不愉快そうな表情をしながら、俺を睨んでいる。いや、これくらい許してくれよ……。
「桜が怒っているのは、二人で密会していたことだよ」
「み、密会って……ただ呼び出されて、少し会話したくらいだぞ?」
それのどこが密会にあたるのだろうか?
しかも密かに会うには到底相応しくないファストフード店だ。ここはもちろん俺らが通っている学校の生徒も来るしな。
「たしかにお兄ちゃんの言う通りかもしれないけど、それでも雪平さんの格好を見たら誰だって疑いたくなるよ!」
「それはどういう……?」
雪平が素で小首を傾げる。
「めっちゃオシャレじゃん! そのシャツといい、タイトパンツといい……全部ブランド物でしょ!?」
「ブランド物と言われるほどでは……」
雪平の表情は若干引き攣っていた。
まぁそりゃあそうなるわな。服装だけであーだこーだ言われれば、俺だってそうなる。
「ウソっ!? そのシャツとか一枚八千円くらいするでしょ? 下のタイトパンツも一枚一万二千円くらいしてたはず……」
それに対し、雪平は微かに驚いた表情を見せるも、何も言葉を発することはなかった。
おそらく桜の言っていたことが正しかったのだろう。
「……なんでそんなに詳しいんだよ」
服なんてパッと見じゃ、ブランド物なのかどうなのか、常人には判断つかねーぞ?
ましてや値段なんてなおさらだ。
「ファッション雑誌で見たんだよね。いつだったか忘れたけど、めっちゃ可愛いっていう印象があったから覚えてた」
「それだけでわかるとかすげーな」
何かしらの才能があるんじゃね? 何で活用できるか知らんけど。
桜は「えへへ♡」と照れ笑いを浮かべつつ、ポテトを尋常じゃない速さで食べ終え、最後のビッグマッグハンバーガーに手をつける。
「とにかく……俺たちは桜が思っているようなことは何もないから。な? 雪平」
「ええ、こんなヒモみたいな男と付き合うくらいならゴギブリを愛でた方がまだマシだわ」
「……俺はお前にとってはゴキブリ以下、なのかよ……」
すると、雪平は悪びれた様子もなく、きょとんとした表情をする。
「当たり前じゃない。というか、世界的に常識よ?」
「俺は世界的に有名じゃねーよ。それとお前ぶっ殺すぞ?」
そう言った瞬間、雪平がなぜかスマホの画面を表示させると、耳に当てる仕草をする。
「もしもしポリスメン? 不審な男から脅迫を――」
「……って、何してんだよ!?」
「冗談よ」
「……」
俺は思いっきりテーブルに顔を埋めた。
――なんなんだよコイツ……。
雪平と会ってまだ三十分ほど。
それなのに授業六時間分の疲れがどっと大波のように押し寄せている。
――帰ったら勉強……できるか?
もうこのまま眠ってしまいたい……はぁ。
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