第30話 期末考査当日

 憂鬱な梅雨も明け、とうとうこの日がやってきてしまった。

 朝、登校するなり、教室……いや、学校全体は殺伐した空気に支配されていた。

 いつもなら騒がしい時間帯なのに、今日は隠キャ、陽キャに限らず、みんな自分の席に座って、ノートや教科書、問題集などを血眼になって眺めている。

 まぁ普段から特に勉強をしていない奴からしてみれば、かなりヤバい状況なのかもしれない。

 なにせ今日から四日間にかけて“期末考査”が行われる。

 一学期最後のテスト……。

 これまで学習してきたところがすべて範囲になっているため、それはそれは焦っても仕方がない。

 だが、毎日コツコツと勉強を積み重ねてきた俺みたいな奴からしてみれば、そこまで焦燥感にかられることはないだろう。

 その証拠と言ってはなんだが、自分の席から雪平の方をちらりと見ると、余裕そうな顔をして、見直しをしている。

 ――俺も負けてられないな。

 これまで一年からずっと学年トップを守り続けてきた。今回ももちろんその座は誰にも譲る気はないし、テストもオール満点を目指すつもりだ。

 というか、いつもオール満点なんだけどな。

 とりあえず油断大敵!

 俺も自分の席に着くなり、すぐさま教材類を取り出して、見直しを始める。

 記憶上ではすべて覚えていると思うのだが、念には念を。特に苦戦していたところを中心的に復習していく。

 今回の期末考査はかなり難しく問題を作っていると各教科担任は口を揃えて言っていたんだが、果たしてどれくらいのものなのだろうか……。

 こちらとしては矛盾しているところはあるにせよ、ありがたいと思っている。

 難しければそれだけ自分の力を試せるということでもあるし、期末考査が終わって、一週間後くらいには小松原大学が主催する学力検査もある。

 ――今の俺はまだ見ぬ“ライバルたち”とどれだけ競えるのだろうか……。

 復習をしている間、頭の中には常にそのことがへばりついていた。

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