第29話
部活が終わって自宅へ帰り着くと、制服の上にフリフリの可愛いエプロンを身に付けた桜が出迎えてくれた。
「お兄ちゃんおかえり! ……って、何かあったの? やつれた顔して……」
手におたまを持った桜は一瞬にして、心配そうに眉をひそめる。
実を言うと、あの修羅場的な状況は部活が終わる直前まで続いていた。
終始、雪平とスズちゃんの小競り合いというか……ほんと勉強に集中できなかった。
スズちゃんもさっさと帰ればいいのに互いにつつき合ってはいがみ合っての繰り返し。
それを傍観していた俺は一切勉強に集中できず、精神的に疲れてしまった。
「やっぱり桜が好きだなぁ……」
一緒にいて、疲れないわけではないにしろ、長年の付き合いということもあって、なんだかんだで落ち着くというか……。
「……え?」
「ん? どうした?」
ふと桜の方に視線を向ければ、なぜか顔を真っ赤にして口をわなわなとさせている。
––––俺、何か言ったか?
ぼぉーっとしていたこともあって、何を口走ってしまったのか覚えていない。おそらく無自覚だったのだろう。
桜は次第に顔を隠すように俯いてしまう。
「……バカ」
「え?」
「お兄ちゃんのバカぁぁぁあああ!!!」
「ええええ!?」
桜はパッと背中を向けると、階段を上って二階の方へとかけていく。
「い、いきなりの不意打ちはズルいよぉぉぉおおお!!!」
「え? 何の話!?」
俺は一体……何を口にしてしまったんだよおおおおおお!
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