第24話 転入生

 今年の梅雨はやけに雨量が多いなぁ……。

 六月も中旬に差し掛かった頃。

 朝、登校するなり教室までの廊下を歩きながら、窓に映る景色をぼんやりと眺めていた。

 空には黒々とした分厚い雲が辺り全体を覆い、まだ午前八時だというのに外は街灯が点くほど薄暗い。

 そんな中、雨の日特有のじめじめとした空気と匂いが充満した校舎内を歩き続け、クラスの教室へと入る。

 もちろん俺には友だちという存在がいないため、誰からも「おはよ」などといった挨拶や声をかけられることはない。

 これに関してはだいぶ慣れたため別に気にはしてないが、最初の方は結構凹んだことを覚えている。

 とりあえず自分の席へと向かい、教材類を机の引き出しにしまっていく。

 ――そういや、そろそろ期末試験だったな……。

 ふと、周りを見れば、全員ではないにしろ、ちらほらと席で勉強をしている輩がいる。

 その中には当たり前のように雪平も含まれており、いつもより騒がしくはない。

 俺も少しだけ勉強した方がいいだろうか……と、周りの行動に流されそうになっていたちょうどその時。SHRが始まる予鈴とともに、担任のロリ巨乳(中野)先生が教室に入ってきた。

 みんなはそれぞれ中野先生の存在を視認すると、すぐさま自分の席へと戻っていく。


「よし、全員来ているな」


 中野先生は教室内を見渡すと、満足そうな笑みを浮かべながらうんうんと頷き、出席簿にチェックを入れていく。


「今日はみんなに報告したいことがある」


 出席簿への記入を終えた先生は神妙な面持ちをしながらそう口にした。

 ――おっ? もしかして……。

 と、誰もが思ったはずだ。俺だけじゃない。うん、きっとそうだ。

 だが、その予想は次の瞬間、裏切られる。

 中野先生は教室前方の出入り口に目を向けると、こほんといかにもわざとらしい咳払いをする。


「今から紹介したい人がいるんだが……入ってこい」


 教室の引き戸がガラガラと音を立てながら、開けられる。

 そしてゆっくりと入ってきた人は……美少女だった。

 銀髪のショートカットにジトっとした瞳。肌は驚くほどに白く唇は薄い桜色と全体的に整っていて美形。ただ……身長が低い(おそらく百五十前後)のと、胸はたしかにあるように見えるが、ほぼ真っ平らなところが強いて言うなら残念なポイントではある。

 けど、身長はともかくとして、胸の大きさなんて関係ない。ここでおっぱいの定義を発表させてもらうのだが、俺的には女の子についていればそれは立派なおっぱいだと思う。そもそもなぜ俺たち男は女のおっぱいに惹かれてしまうか……そんなことを一度は考えたことないだろうか? 誰しもが一度は考えたことはあるだろ? な? な?

 だが、この疑問の先に行き着く答えは、たぶん一つ……“女という生物のおっぱいだからこそ“俺たち男は魅了されてしまうのだろう。

 ……結局よくわからんわ。

 とにもかくにも銀髪美少女が転入してきたという事実(まだ中野先生は何も言っていない)にあまりの美しさからなのか、教室内はシーンと静まり返っている。

 というか、固まっているようにも見えた。え? 石化してる?


「もう察しがついていると思うが、転入生だ。じゃあ、自己紹介を頼む」


 教卓の横で立ち止まったその子は一旦、教室全体を見渡し……俺と視線がぶつかった瞬間、ジトっとした目が大きく見開かれる。


「……どうした?」


 中野先生はいつまで経っても自己紹介をしないその子に優しく問いかける。

 その子は我に返ったかのようにビクッと体を震わせると、小さく口を開く。


「初めまして。隣町から転入してきました涼宮凛すずみやりんです。よろしくお願いします」


 覇気のない自己紹介を終え、涼宮さんは軽く頭を下げる。


「うん。というわけだから、涼宮と今後とも仲良くしてやってくれ。それじゃあ……おっ? ちょうど工藤の隣が空いているから何かわからないことがあったら、彼に聞くといい」


 しれっと面倒なことを押し付けられたような気がしたんだが……とりあえず社交的な感じで接すればいいだろう。

 一応、人と話すのは苦手なんだが、社交的なコミュニケーションに関しては大丈夫だ。というか、これさえも苦手だったらそれはもう社会不適合者と言って過言ではない。

 涼宮さんは中野先生に言われた通り、俺の隣の席に腰を落ち着かせる。

 それにしても……本当に白いなぁ。

 よくよく見れば、瞳は碧眼だし……もしかするとヨーロッパ系のハーフなのかもしれない。

 ――また学校が騒がしくなりそうだなぁ……。

 銀髪碧眼の美少女が二年二組に転入してきたという話は瞬く間に広まり、しばらくの間は休み時間になるたびに二組前の廊下に人だかりができるだろう。

 雪平の時もそうだったような気がする。

 去年、入学したばかりの時。

 クラスがその時から一緒だったんだが、めちゃくちゃ可愛い新入生が入ってきたとでも広まったんだろう。入学して翌日から約一ヶ月の間は教室前の廊下に人だかりができて、非常に困った記憶がある。

 今回も……なるんだろうなぁ。

 そんなことを考え、憂鬱になっている間にSHRは終わった。


【あとがき】

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

おかげさまで現在、総合週間16位となっております。初めての出来事……ああ、脳が震えるぅぅうううううう!!!


というクソつまらないことは置いといて、こちらも少しずつ加筆修正もしくわ改稿していこうかなと思っていますが、物語自体は変わりませんので、引き続きよろしくお願いしますm(_ _)m

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