第18話 バキバキ童貞です

 家へ帰宅し、リビングの方へ顔を出しに行くと、なぜか桜が裸エプロンをしていた。

 上機嫌に鼻歌を口ずさみながら出来上がったばかりの料理をダイニングテーブルの上に運んでいる。

 時折、顔をふにゃふにゃにしながら「グヘヘ♡」という気味の悪い笑みを溢しているのがまた気になってしまうと言うか……一体何を想像しているのやら。

 と、桜がようやく俺の存在に気がつくと、ふにゃふにゃした顔をぱんっと一回両手で叩いて引き締める。


「おかえりなさいお兄ちゃん!」

「あ、ああ、ただいま……」

「お兄ちゃん、ご飯にします? それともおふ――」

「ご飯」


 即答してやった。

 それに対し、桜は一瞬呆気に取られたような顔をするもすぐに頬をぷくっと膨らませる。


「もぉ! まだ最後まで言ってないじゃん!」

「言わなくても言いたかったことは想像つくし、答えは変わらん。てか、だいたいその格好どうしたんだよ」


 すると、桜は「これ?」と言って、一回転させて見せる。

 ――ブラもパンツも身につけてねーのかよ……。

 おかげさまで透明度の高い綺麗な肌とぷりっとしたお尻が脳内に焼き付いてしまった。どうしてくれんだよ……。


「今日ね、お兄ちゃんのこと仲のいい三人に話したんだぁ。ついでに好きということもね」

「ほーん……それで?」

「みんな応援してくれるってさ! 義兄ならむしろありなシチュエーションじゃね? って、盛り上がったし!」

「いや……」


 俺は思わず苦笑してしまった。

 今まで兄嫌いのキャラを演じていた桜の話をすんなり受け入れた上に義兄ならありって……


「ちなみに聞いていいか?」

「ん?」

「その三人って……結構バカなのか?」

「うーん……学年でワースト十位以内に入ってるかな?」

「……」


 予想してた通りアホトリオじゃねーか。


「あ、ちなみに桜は学年トップ二位だからね?」


 しれっと「私はバカじゃないよ?」アピールをしてきた桜。

 わかってるよ。それくらい。

 学年順位の発表の際は一階にある職員室前の掲示板に全学年張り出される。

 と、言っても全員分ではなく、トップ二十位までにランクインした人だけだけどな。


「で、その格好をしてるのもそのアホトリオ……じゃなくて三人に勧められたからか?」

「え? よくわかったね。そうだよ! みんなが言うには男の子ってこういうのが好きなんでしょ? 特に童貞には絶大的な効果があるって聞いたからさっそく試してみたんだけど……どう? ムラッときた!?」


 桜は体が密着するくらい近づいてくると、上目遣いをしながら期待を込めた表情を向ける。

 至近距離ということもあって、エプロンの襟元がちらっと開き、そこからは程よく育ったおっぱいがこんにちは!

 ――いかんいかん! 何変なことを考えてんだよ俺は!

 すぐさま顔を明後日の方向に逸らし、どのくらいか後ずさる。


「く、くくくくるわけないだろ! と、とりあえず着替えてくるから桜はちゃんと服を着ろ!」

「えー……」

「えーじゃない! 風邪を引くぞ?」

「その時はその時だよ。お兄ちゃんに看病してもらえばいいし……あ、これいいかも。看病してもらえれば体を拭いてもらったり……グヘ、グヘヘ♡」

「アホか! それくらいは自分でやれ! と、とにかく一旦部屋に行くからな! それまでに着替えとけよ!」

「ちぇっ……。はーい……」


 ったく……痴女か!

 桜の裸エプロン姿にバキバキ童貞の俺はたしかにムラムラしたし、とてつもない破壊力ではあったけれど……いつか抑制が効かなくなって襲いかかってしまっても知らないぞ?

 ……いや、桜からしてみれば、そっちの方がいいのか……はぁ。何か難しいなぁ……。


【あとがき】

裸エプロンをした可愛い月子ちゃんを間近で観察したい……(変態)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る