第17話 夕暮れ

 一階へと降りてみると、出入り口付近に新品の長机が置かれていた。

 かなりデカいと聞いていたものだから、どんなデスクなんだろうと思っていたんだが……まさかこれだとはね。大きく予想と期待を覆された。

 とりあえず長机をどうにか手に持つと、慎重に二階へと運んでいく。

 そして、部室に運び入れると……うーん。なんか見たことがあるぞこれ。

 何がとは言わんが、部室の風景というか……もうそんな感じだ。

 ひとまずボランティア部の活動拠点は完成したんだが、スマホで時間を確認すると午後五時半。

 窓から差し込む光も徐々に薄れ、外は淡い橙色の光に包まれていた。

 もうすぐで日が落ちてしまう。

 一応部活動時間はこの時期だと午後六時半。それ以降は完全下校時刻となっている。

 今から活動を始めようにも何をすればいいのかわからないし……。

 そう思っていると、雪平が俺の方に近づくなり、一台のノートPCを差し出してきた。


「これ、和樹くんのものよ。どうやら学校支給のものらしいわ。特別推薦枠を受ける生徒のみ配布される特典みたいなものかしら?」

「ほぉ……結構太っ腹だなぁ」


 俺が通う高校は私立ではなく県立だ。

 だというのにこんなことをしていいのだろうか?

 まぁその決定を下すのは学校ではなく、もっと正確に言えば県教委なわけだし、市教委も関連しているのだろう。

 学校があげると言っているのだから、俺たちは黙って受け取ればいいだけの話だ。


「今後それで仕事とかをこなしてもらうみたいよ? ワード、エクセルとかはインストールされているみたいだから」

「……勉強のためじゃないのかよ」

「まぁそれも一応あると思うけど……市内の特別推薦枠を受ける生徒には全員配布されているみたいだしね」


 そう言うと、雪平は自身のノートPCを持ちながら部室の出入り口へと向かう。


「今日はもうこれで帰っていいみたいだから私はこれで失礼させてもらうわ。さようなら」

「……そこは“またね”とかじゃないのかよ」


 雪平は部室を出ていくと、次第に足音がどんどんと離れていき、一分後には聞こえなくなってしまった。

 俺はしばらくの間、クラスの教室で雪平と鉢合わせたくないという気持ちから近くにあった椅子を持ってきて長机の上にノートPCを置く。

 それからして起動ボタンを押して、ものの数秒でデスクトップ画面が表示される。

 そういや、Wi-Fiは繋がっているのだろうかと心配になったのだが、それもご無用らしく、学校のネットに自動接続されていた。

 本体情報も念のため確認すると、容量やRAMもよく、CPUも最新版。もはやゲーミングPC同等の性能だ。

 ――一体これにいくら金を使ってるんだ?

 新しい制度とはいえ、そのうち無駄使いだの周りの人から苦情が来るぞ?

 そんなことをしているうちに雪平が部室から出て十分以上が経過していた。

 俺はノートPCを閉じると、部室をそそくさと出ていく。

 廊下はすでに日が暮れているということもあって、薄暗い。

 これからはこんな時間帯に帰ると思うと……ちょっと嫌になってくる。

 これまでがこれまでだったからこそ、そう思ってしまうのだと思うのだが……。


【あとがき】

何か……違う。何か……どんどんある作品の風景に似てきちゃってる……。

あれ? なぜだ? 想定してたものと実際に書いてみた感じがちがーう!

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