第15話 鬼畜
午前の授業を終え、昼休み。
俺はいつも通り、校舎の屋上へと向かい、昇降口前のちょっとした段差に腰を下ろしながら昼食の弁当を食べているのだが……今日もまた隣には雪平の姿があった。
ここ最近ではずっと俺の隣で何気ない表情をしながら弁当をつついている。
さっさと自分の陣地に戻るか、新しいところを探すなりすればいいのに……もしや俺のことが――
「寝言は寝てからしてもらえるかしら?」
「……俺、何も言ってねーだろ」
雪平は尻目で嫌そうな顔をしつつ、睨んでいた。
もしかして俺の心読まれてる、とか?
いやいや、そんなわけないか。エスパーじゃあるまいし。
「そう? 心の中で私が昼休み毎日ここへ来るのはあなたに好意を寄せているからと、聞こえたのだけど?」
「……一体何者だよ!?」
そう簡単に人の心なんて読み取れねーぞ? しかも一言一句その通りだったし。
「普通のJKだけど?」
「なんでアダルトチックに言うんだよ……。てか、普通の女子高校生が他人の心なんて読まないだろ……」
「そうかしら?」
「……え、そうなの?」
だとしたら、女子高校生マジ恐るべしなんだが……もうわかんねえ。
わからないついでに雪平という人間も少しずつ喋るようにはなってきたが、いまだにどういう生態でどんな奴なのかがあまり掴めていない。
それにこいつとは今後とも長い付き合いになりそうだ。当初はならないとばかり思っていたのにな。例の推薦枠をかけた戦い……。もちろんライバルは雪平以外にもたくさんいる。
部活動を通じてどれだけ自分の功績を増やせるか……と、言ってもほとんどはあのクソ担任の手伝いだとは思うけど。
まぁ今後の社会勉強と思えばいいか……。
「あ、そう言えば和“鬼畜”ん」
「……おい。今“鬼畜”って強調してなかったか?」
「してないわ。和“鬼畜”ん」
……やっぱりしてんじゃねーか!
と、ツッコみたいのは山々なのだが、現状したところであまり意味がない。
ここはあえてスルーすることにして、その先の話を促す。
「……なんだ?」
「クラスの雌豚野郎が噂してたのだけど……あなた実の妹に手を出したってほんと?」
雪平はなぜか俺との距離をさらに取ろうとする。
「誤解だ。手を出すわけがないだろ。というか、桜は実の妹じゃなくて義妹だ」
「え?」
「俺も昨日初めて知ったんだけど、久しぶりに家へ帰ってきた親父と母さんが実は再婚同士だったんだよ。その頃は俺と桜もまだ小さくて記憶が当然ないんだけどさ」
「そうだったの……。じゃあ、鬼畜じゃないのね?」
「それで言ってたのかよ……。ああ、俺は真っ当だ。ただ、桜の方が異常なんだけどな」
実の兄妹と思い込んでいた時から俺に対するアプローチはすごかった。
セックスを強要してきたり、夜這いをかけられそうになったり、はたまた入浴中に乱入してきたり……普通の男女ですらそういうことはあまりしない。
俺のことが好きすぎるが故に暴走し続けている妹……うーん。俺って罪深い男だぜ。
そうおどけて見せたものの、本当にどうしようか……これから。
「まぁあなたたち兄妹の血が繋がっていようがいまいが、セックスをしてようがどうでもいいんだけど」
「……なら、聞くなよ……」
興味がないのなら、なんでわざわざ聞いたんだよ……。
なんと言うか……雪平には散々振り回されているような気がする。
こいつ一体何を考えているのか……それを探ろうとしたところで俺には到底無理だ。
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