第7話 仲のいい兄妹②
と、思っていたのだが……時は過ぎて午後九時前。
俺と桜はダイニングテーブルに向かい合う形で座っていた。
昨晩に続き、今日もまた話し合い。
「で、なんで俺が入浴中に風呂へ侵入してきた?」
「お兄ちゃんとの仲を深めるためです♡」
「やたらとベタベタしてくるのは?」
「お兄ちゃんとの仲を深めるためです♡」
「キスをやたらと迫ってくるのは?」
「お兄ちゃんとの仲を深めるためです♡」
もはや何を聞いても同じ文言が返ってくる。
「じゃあ、さっき言ってた「セックスしよ♡」って言うのは?」
「もちろん! お兄ちゃんとの仲を深めるためです♡」
桜は頬を赤らめながら、少し息を荒くする。
俺はそんな妹を目の当たりにして、つい大きなため息をついてしまう。
「あのな……桜にとって仲のいい兄妹ってなんだ?」
「大好きなお兄ちゃんとイチャイチャすることしかないでしょ? 逆にお兄ちゃんはどう認識してるの?」
うーん……。そう問われてしまうと、やはり説明が難しい。
自分の中では“仲のいい兄妹”がどういうものなのか理解はしているものの、それを実際に口に出して説明しろと言われてしまうと、語彙力の問題か、説明がしづらい。
「まぁ……一般的な兄妹だよ。普通に遊んだり、時にはケンカしたりして、でも仲がいい関係と言うか……」
「じゃあ、今のままでもいいじゃん。言っとくけど、桜はお兄ちゃんにアプローチも含めてやってるんだからね! これは桜にとって死活問題なの!」
「また大袈裟な……とにかくだ。今後から風呂に侵入してくることとキスやセックスをせがむことは禁止だからな! いいな?」
「そ、そんなぁ……。じゃあ、桜はこれからどうやってお兄ちゃんにアプローチをかければいいの? 桜にはもはや体しかないと言うのに……」
「体以外に何もないって……」
他にもいっぱいいいところはあるのだが……これを口に出してしまえば、桜が調子に乗ってしまう。
「とりあえず、アプローチはしなくていいからな!」
「……チッ。お兄ちゃんの部屋に近親相姦もののエロ漫画があった時はいけると思ったのに……」
「……え?」
いきなりなんの話をしてるんだ?
俺は一瞬話の内容についていけなくなる。
が、それが何を意味しているのかすぐにわかった。
「お兄ちゃんがベッドの下にエロ本隠してるの桜知ってるんだからね? しかも妹を凌辱するものばかり。桜あれを見た時は本当にびっくりしたなぁ……」
完全に立場が逆転してしまった。
俺は背中に冷や汗をかきつつ、しどろもどろになる。
「あ、ああああれは友だちから預かってたもので……」
「お兄ちゃん友だちなんていないじゃん」
「ぐっ……」
たしかに。言われてみればそうだ。俺は孤独な一匹狼。
「まぁお兄ちゃんが妹に興味があるってことだけでも知れたからいいんだけどね」
「ち、違う! 俺は決して桜をそんな目では……」
「あ、ちなみにエロ本は全部燃やして捨てたから」
「……はあああああああああ!? 何してんの!?」
「何って、桜がいるんだから必要ないかなって思ってね。おかずが欲しいんだったらいつでも言ってもらえれば……グヘヘ♡」
いかれてる……。
こんな妹……アニメとかの世界では萌えるけど、現実世界ではなんと言うか……恐怖を感じざるを得ない。
ああ……。
それにしても燃やされたエロ本……。
あれ入手するのに結構苦労したんだからな? それとお金も使ったし……。
全部で十冊程度か? 俺のコレクションが……ははは。
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