第3話 ぼっちの日常
ひとまず学校へと登校し、一限から四限目まで普通に授業を受けたのだが……昨晩の出来事といい、今朝のことがずっと頭の中をぐるぐると回り続けていたため、あまり内容が頭に入ってこなかった。
そして何事もなかったかのように昼休みを迎え、俺はいつものように売店で惣菜パンと紙パック式のカフェオレを購入し、屋上でぼっち飯を楽しむ。
ここは意外にも生徒が来ない穴場で入学当初からお世話になっている。
昇降口目の前のちょっとした階段に腰を下ろすと、春のちょうどいい暖かさに身を癒やされながら惣菜パンの外装を破る。
――ほんとここっていいところだよなぁ……。
むしろ人が来ない方が不思議に思えるくらいだ。
清々しい青空を見つめながら、俺は心を落ち着かせる。
一旦頭の中を整理しつつ、桜と今後のことについて考えてみる。
まさかの隠れブラコンだったということが発覚した桜とどう接していくか。
やはり一緒の家に住んでいる以上、毎日顔を合わせるわけだし、そもそもが兄妹だ。
こういう場合は何事もなかったかのようにいつも通りな感じで接すればいいのだろうか?
兄妹間の問題というものは時としてものすごくシビアなものもあったりする。
今回がまさにそれなのだが……うーん、難しい。
無視……という行為はまさに論外だし、だからと言って逆にベタベタしすぎてもいろんな意味で誤解を招きかねないし……とりあえずは俺自身の気持ちを言ってからだよな。でないと、先に進まないと思うし……
「今夜、桜ともう一度話してみるか……」
こうなってしまったのもたぶん俺のせいでもあるし、ここは“兄として”妹を正しい道に矯正せねばならない。
俺は惣菜パンをものの一分で食べ終えると、カフェオレを一気に飲み干し、屋上を後にした。
☆
午後三時半。
本日も長かった学校が終わり、放課後を迎えた。
終礼が終わるや否やそそくさと教室を出て、靴箱へと向かう。
そしてシューズから靴に履き替え、校門までの道のりをとぼとぼと歩いている時。いかにもクラスの中心人物と思わしき男女のグループに混じっている我が妹、桜を見かけた。
これから一緒に帰るのだろうか? 一人の男子がふざけてはみんな楽しそうにケラケラと笑っている。
――あー……。俺もあんな学校生活が送りたかったよ……。
なんでこんなぼっちになってしまったのか……。やはり性格が関係してくるよなぁ……クッソ。やかましいわ!
心中ちょっとした劇団ひとりをしつつ、ぼんやりと眺めていると、ふと桜と視線があってしまった。
桜は俺のことに気が付いたらしいが、すぐに視線を逸らされてしまう。
学校や周りでは兄嫌いのフリを見せつつ、俺との二人っきりの時だけは積極的にアプローチをかけてくる、か……。
これが義妹だったら、みんなの知らない一面を俺だけが知っているという優越感でグッと萌えるんだけどな。
兄としてはなんとも言い難いくらいに複雑な気持ちに囚われてしまう。
別に俺のことを嫌いだったとしても構わないのだが、隠れブラコンを知ってしまった以上……正直、嬉しいという気持ちもないことはない。
やがて桜が属しているグループは校門を先に抜け、家とは反対方向に歩いて行ってしまう。
――今日も帰ってくるのが遅いんだろうな……。
遅いと言っても日が完全に暮れる前には帰ってくるけど……リア充たちの付き合いというものはなんともめんどくさそうだ。相手の機嫌や話などには合わせないと、ハブられてしまうと思うし、リーダー格相手ならなおさらだろ。
その点、ぼっちは気ままに生活をすることができるし、基本自給自足だ。今日の六限目に行われた掃除決めや各委員会決めもそうだが、一人でできそうなことを前提で選んでいる。これがいい、やりたいという感情で決めることは学校生活においてほとんど皆無。その結果もあってこれまで誰に対しても迷惑などをかけたことは一度もない。
まぁただ単に問題が起こってないだけだと思うんだけどさ。
さて。
俺も少し遅れて校門を出ると、桜とは真逆……つまり自宅がある方向へと足を進める。
――今日の夜ご飯は何にしようか……?
そんな主夫らしいことを考えながら、頭の中にさまざまな料理のレパートリーを浮かべていく。
ある程度、今家にある食材は把握している。
――カレーにするか……。
たしかじゃがいもとにんじんが今日までに使わないとマズかったはず。
そうと決まれば、さっさと家に帰って支度をしなければ……。
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