第2話 現実【改稿済み】
ここで少しばかり自己紹介をさせてほしいのだが、俺の名前は
趣味・特技は勉強することで友だちもいなければ恋人もいないいわばぼっち。
自分で言うのも悲しいものなのだが、顔はそこそこいい方だと思っている。
というのも、妹の桜は校内でも有名になるほど美少女で容姿端麗な上に性格もリア充そのもの。理想の女子高生を絵に描いたようなやつだ。
だからその遺伝子の一部を引き継いでいる俺がブサイクなはずがない。妹が美少女で兄がブサイクな兄妹なんてそもそも見たことがないだろ? ……と、まぁそんな理屈だ。
とはいえ、女子から告白を受けたことも話しかけられたことも一度たりともない。成績は一年の頃から学年トップの高スペックだというのに……見る目ないのかなぁ?
とは思いつつ、実際には怖がられてる、のだろうか? 避けられてる感はある。
桜は陽キャで俺は陰キャ。
兄妹でここまで違ってくると実は血の繋がりなんてないんじゃないのかと疑いたくもなるが、それはそうと翌朝。
スズメの囀り《さえず》が微かに聞こえてくる自室。
カーテンの隙間からは明るい朝日が差し込み、俺はベッドの傍に置いてあったスマホのアラーム音で目を覚ます。
――なんか変な夢を見たなぁ……。
まだ気怠さが残る上体を何とか起こしながら昨晩見た“夢”について思い出していた。
妙に鮮明なのが不思議なのだが、それはともかくとしてベッドから立ち上がる。
すぐに制服へと着替え、顔を洗うために自室を出ると、一階にある洗面所へと向かう。
階段を下りる際、制服姿の桜とすれ違ったが……
「ふんっ!」
思いっきり顔を逸らされてしまった。
やはりあれは夢だったか。そうだよな。俺のことを長年嫌っている桜がブラコンなわけがない。
そのまま気にすることもなく、洗面所へと向かい、顔を洗い終えると、リビングの方へと移動。
適当に食パンをトースターでこんがりと焼き、表面にバターとマーガリンを塗って、ダイニングテーブルの所定位置に座りながら、朝食を済ませる。
ふと、リビングの出入り口の方から何やら視線を感じ、俺は振り返り見る。
すると、顔の半分だけをちょこんとひょっこりさせた状態で眉間にシワを寄せながらフグのように頬をぷっくりとさせている桜がじぃ〜っと見つめていた。
「……何してんだよ」
「別に……」
今日の桜はなんだか様子がおかしい。いつもなら、すぐに家を飛び出していくのに……まるで俺の様子を窺っているような、そんな感じだ。なんのためにだろう?
それはともかくとして、スマホで時間を確認すればもうすぐで登校時間。
俺はすぐにテーブルから席を外すと、桜の横を通りすがってリビングを出る。
そして二階にある自室へと向かい、カバンなどを手に持ち、いざ学校へ――
「ちょ、ちょっと待ってよお兄ちゃん!」
階段脇に立っていた桜に腕を掴まれた。
「なんだよ。学校に遅刻しちゃうだろ……」
「……謝って」
「は?」
桜は俺のことをキッと睨みつけている。
一体何をしたって言うんだろうか……謝らないといけないことは一切やっていない。
だが、次の言葉で俺は"あの出来事"が現実だったということを思い知らされる。
「昨晩のこと謝ってよ! せっかくお兄ちゃんと一つになる覚悟ができたのにそれを
「…………え? 昨晩……?」
あれって……夢じゃなかったの?
俺の頭の中は混乱し始めていた。
なんとかして昨夜の記憶を整理しつつ、桜に改めて聞いて見る。
「桜って……俺のことが、好きだったの……?」
「……だから、その……昨日からそう言ってるじゃん……」
桜はすぐに俯いてしまう。
よくよく見ると、耳までカァーッと真っ赤になっていた。
「……マジ、かよ……」
ずっと夢だと思っていたのに……。
これから俺は桜に対してどう接していけばいいんだよ……。
実妹が実兄のことを好きだなんて……まるで、漫画の設定でよくあるようなシチュエーションじゃねーか……。
俺はしばらくの間、その場から動くことができなかった。
ただただ、今は現状を受け止めるこで精一杯……。
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