第27話 声に恋した若人たちに幸あれ!

あの初デートから約7年後。

23歳となった俺は今白いタキシード姿に身を包んでいた。


「これからはあなたが彼女を支えていくのよ?良い家庭を築きなさい」

「やっとひとり立ちか笑嫁さんにいじめられんなよ?笑」

「うるーせーな、言われなくても分かってるよ」


父と母とこのように言い交わすのも少なくなるな。そのように思いながら、数々の思い出の写真を見渡す。小学生の時にカブトムシを取った時の写真や、中学校生活最後のサッカーの試合の写真、高校の卒業式の時の写真など様々な写真が一同に会していた。その中でも特に大事な写真は…

(お、あったあった)


あの日、観覧車を降りた後、クリスマスツリーのふもとで並んで撮ったあの写真。交際0日記念写真と2人で呼んでいるあの写真は今日の祝宴にも用意されていた。今でもあの初デートのことは鮮明に思い出される。


「あの時の葵、可愛かったな〜」




「誰が「可愛かった」ですか?今も、でしょ?」


驚いて振り返るといつのまにか葵がご両親とともに俺の控室の出入口にきていた。

今の葵の声は当時よりも少し高くなり、男性に間違われることはもう滅多にない。ボイトレのおかげで少しずつであるが、自分の出したい声が自分で調整して出せるようになっている。ボイトレの教室の先生のツテで大学在学中に声優養成所に入り、今では「イケボな美人声優」として名を轟かせるように。高校生の時、クラスでは無口だったが今はそんな面影はなくなってしまった。


「聞いてるの?」

「あ、ごめん、そのドレスに目がいってしまって」

「ふーん… 玲のスーツも似合ってるよ//」

「お、おお…//」


「そろそろリハーサル行いま…て何今さら2人で照れてんのよ!ほら、早く準備して!」

式場スタッフとして今日の俺たちの祝宴をサポートしてくれる中村がテキパキと指示をだす。



「まさか中村がここで働いているとはな」

「私も葵たちがここで結婚するなんて思いもしなかったよ」

式場の外で花嫁の準備を待つ間、俺は中村と会話しながら服や髪を整えてもらう。


「葵の親友として、そして古賀くんの元恋敵として一言言わせて。私は葵のことが好きで、私が葵と結婚したかったけど、古賀くんが相手だったから諦めがついた。 私、葵のパートナーは私以外では古賀くんしかありえないと思ってるから。泣かせたり逃げたりなんかしたら許さないからな!」

ドンと俺の左胸に強く右拳おもいをぶつける中村。

「当たり前だろ?俺は葵のパートナーだからな」

その右拳おもいを右手で包み俺はニカっと歯を見せて笑った。



「そろそろ本番だから、私はけるね!」

「おお!」


中村が去り、式場の真ん中に1人の俺。

これからの結婚生活は様々な苦労や困難があるだろう。だからこそ俺は_____


「お待たせいたしました!新婦入場です!」


_____この目の前にいる愛しき人と共に苦楽を共にしていきたい。これからもよろしくな、葵。



(本編 終了)


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声恋。〜とある2人の高校生の恋愛譚〜 爽良 @sorasora_2000

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