第26話 聖なる夜は2人で…⑦

「初めて会ったときから好きでした!良かったら俺と、付き合ってください!」


…言った。とうとう言った。

ずっと前から計画していたデートの集大成。ここで告白するんだと決めていた。


今日まで俺は葵さんに知られないように中村や郁美と綿密な計画を立てていた。


そしてようやくここまで辿り着いた。


正直手応えはあると思う。けど本人の口から聞くまでは分からない。ドキドキしながら返事を待つ。




「…いいんですか?私で」


下げていた頭をあげ、えっ?と聞き返す。

「だって、私、男性と間違われるくらいの低い声なんですよ?」


思わず笑ってしまった。そんなこと初めから分かっているのに。


「そんなことで嫌いになったりしないよ。その声も、それ以外も、田中さんの全部が好きだから」

言った途端に葵さんは泣き出してしまった。


「私、自分のこの声が嫌いだったんです。中学生の頃に好きだった人から揶揄われて、それ以来男性とお付き合いすることが怖かった。でも古賀くんは私の全てを好きなんですよね?…信じてもいいんですか」

「当たり前だろ!?」


思わず手を握ってしまった。しまった。今消毒してないのに…でも、仕方がない。もう抑えきれないから。


「これからは俺が田中さんを守る。田中さんの声を馬鹿にする奴は俺がぶっ飛ばしてやるからな!」

「ありがとうございます。でも、暴力はダメですよ?」

いつのまにか葵さんの顔に笑みが戻っていた。


「分かりました。私古賀くんを信じます」

「と言うことは…?」

「私を、古賀くんの、いえ、玲くんの恋人にしてください!」


…!


目の前に満開のバラが咲き乱れた。

葵さんが俺の恋人に…!?

しかも初の名前呼び…!?

テンションが上がりすぎて、思わずガッツポーズする。


ガタンッ

「「!!?」」


ゴンドラが激しく揺れ、立っていた俺はバランスを崩して前のめりになり、葵さんに壁ドンする形になる。


「ご、ごめっ」

しまった。素の声を出してしまう。

「大丈夫ですよ、玲くん。玲くんのその声、素敵です」

今までに聞いたことが無いようなイケボで、思わず惚れそうになった。


「す、すぐに立つからっ!」

恥ずかしさのあまり俺は離れようとしたが、葵さんに引き寄せられる。

「せっかく恋人同士になったんです。キスしましょうよ、玲さん?」


「えっちょっ田中さん?!!」

「違うでしょ、「葵」でしょ?」

「そそそそうだけど?!…ッ!」


観覧車の中、不恰好な姿勢で俺たちは初めてのキスを交わした。そのキスの味は、お汁粉の味がした。




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