第25話 聖なる夜は2人で…⑥
午後5時。あたりは夜に包まれ始めた。
私は今、この商業施設の屋上の遊園地にいた。冷たい風が頬を撫でる。
「お待たせ」
古賀くんがお汁粉とココアを手に、私が座るベンチへと近づいてきた。
「ありがとう。いくらだった?お金だすよ」
私が代金を出そうとしたら、古賀くんは制した。
「いいよ、今日一日付き合ってくれたお礼」
「でも…」
「いいからいいから。ほら冷めないうちに」
「ではお言葉に甘えて」
私はお汁粉を選んだ。飲むと体の内から温まる気がする。一息ついたところで古賀くんから、最後に行きたいところがあると言い出し、私もそこへついて行くことにした。
「久しぶりだなー!小学生以来かも」
「俺も。まさかこんな所で乗るとは思ってなかったぜ」
目の前に聳え立つそれを見て、感嘆する私たち。それは観覧車だった。あたりはすでに薄暗く、所々ライトアップやイルミネーションが点灯や点滅をしており、中でもこの観覧車は一際明々しており目立っていた。料金を支払い、ゴンドラに乗り込む。
「うわーーー!きれーーい!!」
「すっげーー!!きれーだな!」
まるで小学生のようにはしゃぐ私たち。ゴンドラからみた風景はまさに絶景だった。ビル群の発する光が現代的なイルミネーションと化し、幻想的な夜景を作りだしている。
そんな眺望がまもなく最高到達点に差し掛かるとき、ゴンドラ内の雰囲気は変わった。
「田中さん。改めて今日は来てくれてありがとう。」
いつも以上に真剣な面持ちでそう古賀くんが言うので、私も身を引き締める。
「今日はどうしても田中さんと一緒に居たかった。ずっと前から抱いていた思いを今日伝えたかった。」
ここまで言い終えると、深い深呼吸をする。彼の心臓の鼓動がこちらまで伝わってくるようだ。
「初めて会ったときから好きでした!良かったら俺と、付き合ってください!」
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