第20話 聖なる夜は2人で…①

12月23日。


クリスマスイブ前日に終業式を終えた生徒たちは早めに下校した。「聖なる日は生徒たちへのクリスマスプレゼントよ♪」と校長である佐藤馨さとう・かおるの声かけでイブ終業が始まってから10年以上。生徒たちからは好評で噂によるとリア充率も地区No.1である。…まあ、私には縁のないことですがね泣


クリスマス&年末年始休暇という名目で、学校や部活動が休みになるこの休暇を利用して、アキと玲はそれぞれデートを計画していた。アキの場合はもうデートではなく、ただの親友として遊びに行くつもりだが。


一方でもう1人、デートの計画を立てているものがいた。郁美だ。彼は先のハロウィンで出会った女の子(女装した玲)のことが忘れないでいた。最初に出会ってからしばらく彼女(彼)を探していたのだが、見つけきらないようで、最近行われた定期テストの順位は17位と首位陥落していた。探している本人からも心配する声がかけられるが、郁美は既に生きた屍である。


その探されている本人である玲は、自分が郁美の想い人かもしれないことに薄々気づいていた。思えば八目ハロ(第19話参照)以来郁美の様子はおかしかった。テスト結果一覧で上位5名に郁美の名前は無かったし、授業中も気づくと窓の外をボーッと眺めていた。それに…


(あの時、郁美のやつ俺を見て「可愛い」って言っていたよな…)


まさかと思うが。でも可能性はなくはない。

現に八目ハロ前に衣装合わせをした時、サッカー部の部員らから可愛いと連呼される絶賛の嵐という思いがけない反応をされたことがある。女装と知らない人からすればそれはそれはもうアイドルのような可愛さで。その可愛さが親友の心を射止めたのだ。


(どうすっかなー、これは…)


頭を掻き、考えを巡らせる玲。


窓の外はいつのまにか雪が降り出していた。

今年はどうやらホワイトクリスマスになるようだ。

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