第17話 八目高絵画コンクール
10月28日。
いよいよ八目高絵画コンクール開催の日を迎えた。
このコンクールが例年行われている八目高祭の代替として開かれると発表が行われた当初は不満を垂れる者もいたが、意外にも生徒たちは順応した。コロナで八目高祭が開催される可能性は低いだろうと薄々感じていたようだ。
前日に生徒会と美術部、バレー部、バスケ部、卓球部の生徒たちで作られた本日のアリーナは、緑色の養生シートで床一面が覆われ、後方には投票所。前方から後方にかけて置かれた、2行の大きな可動式の壁には全32作品の絵画が飾られている。
誰のどんな絵が選ばれたかは審査員である生徒会と美術部(2,3年)しか知らない。そのため生徒たちは誰の絵が選ばれているのか、自分の絵は選ばれているのかドキドキしていた。
アリーナへと行く前に、教室内で健康観察や検温を受け問題の無かった生徒たちには、評価シートが配られている。絵画に振られた物と同じ番号が印字されてあり、「a. モチーフに対する着眼点、構造の工夫」「b. 配色の工夫」「c. 表現技法の工夫」「d. 今回のテーマに則しているか」の4点が評価項目として挙げられている。それぞれ5点満点の計20点満点で個人評価、後に審査員が全員分を合計し、100点満点での換算を行う。なお、テーマは「私の見ている世界」だ。
さて、現実に戻ろう。
葵たち1年5組は現在割り当てられた時間内で、絵画の鑑賞及び評価を行なっていた。
その最中にアキが自分の絵を見つけて目を見開くもすぐに通常モードに切り替わった。飾られている絵が自分の絵だったとしても他人に教えたり大きな反応をしてはいけないというルールだからである。そのため自分の絵も評価をするのだが、依怗の可能性を考えて評価点×0.8にされるのだ。
チラリと玲の方を見ると真剣な眼差しで自分の絵画を探しているようだった。
「…勝った。」
マスクの下は勝者の笑みが溢れていた。
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