第15話 交わる両片想い

「「!!!?」」


互いの唇が触れ、声にならない驚きが洞窟中を駆け巡る。あまりに驚きすぎて2人はしばらくその場を動けなかった。


「ご、ごめんなさい!わざとじゃないから!」


慌てて、しかし次は気をつけながら、玲から離れる葵。恥ずかしさからか顔を真っ赤に染め上げている。


「い、いや、大丈夫。(なんなら嬉しかったし)」

平静を装いつつも、こちらも真っ赤に染まった顔を見られないように後方を向きながら立ち上がる。ちなみに後半部分は葵には届いてはいない。


「は、早く行かねーと中村たちが待ってるぜ?」

「そ、そうだね。早く行こう」


恥ずかしさが残りつつ、しかし少しだけ縮まった距離が、2人に幸福感を与えてくれた。


ーー

ーーー


「おっそーい2人とも!何してたん⁉︎」

待ちくたびれた様子のアキが2人に問い詰める。


「ごめんね、アキちゃん。こういうとこ慣れてなくてさ」

少し照れ臭いように葵は言った。


4人が合流し、しばらく行くと洞窟の先に水が流れていることに気がついた。音が聞こえる。


「みんな見て!滝だ!滝がある!」


珍しく興奮した様子で郁美が伝える。後ろから歩いてきたアキ、葵、玲も次々にその光景を目の当たりにし、思わず感嘆が漏れる。

滝は上が空洞になっていて陽の光が差し込んでおり、水面をキラキラと輝かせていた。水面は碧く輝き、海水が混じっているからか潮の香りもする。


「スマホ、持ってくればよかった」

アキが呟いた。葵も玲もしまったという顔をする。

「僕持ってるよ」

郁美がウエストポーチからスマホを取り出した。

「ナイス郁美!」

「さすが副島!」

口々に崇められ、照れ臭そうな顔の郁美。可愛い…。

そんなこんなで記念写真with滝を撮った一行は早々だが戻ることにした。次は来た時とは逆で玲→葵→アキ→郁美の順番だ。こちらは何のハプニングも無く、元いた場所に無事に帰り着くことができた。


その後はスイカ割りやバーベキュー、海の家の掃除を行い各々帰路に着いたのだった。

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