第14話 魅惑の4連休! 〜⑦最終日(後編)〜

お昼頃までに殆どの夏休みの課題を終えた一行は、水着に着替えていた。玲は赤い迷彩柄のような水着、(副島)郁美は紺色で左下にスポーツ用品メーカーのロゴが入った水着だ。


2人は佐藤お姉さんの命r…指示の下ビーチパラソルを立てたり浮き輪やビーチバレーボールを膨らませていた。


2人とも珍しく無言だ。暑さのせいでもあるのだが、同級生のスクール水着姿以外を間近で直面するため、年頃のオトコノコとしては何の感情を持たない訳ではない。特に玲は昨日アキに頼んだ「リクエスト」を叶えてくれるか気になっていた。


「ごめんね!待たせちゃって!」

作業の途中でアキと葵が合流した。

アキはオレンジと白のボーダーのビキニに半ズボンの水着、葵は白いフリルのついた可愛らしい水着で薄い布を腰に巻きつけている。


「さ、ほら、古賀に見せてやんな。」

「う、うん。あの、古賀くん、その…どうかな?変…じゃない?」

アキに背中を押され、俯きながらも前に進み、自分の着ている水着を見せる。玲は予想よりも120%可愛いその姿に見惚れ、鼻血を出した。


「こ古賀くん!あずちゃん大変!鼻血!」

「えっちょとコレやばくない?」

「古賀君下向いて。鼻押さえて」

「葵の水着に惚れたんやろ笑笑 アッキーは可愛いな!ほれ、ティッシュ」

「は、はひはふぉーふぉふぁいはふ《あ、ありがとうございます》」


どうやらリクエストは叶えられたようだ。

少々ハプニングもあったが、待ちに待った海水浴。思い切り楽しもうじゃないか!




「葵ー待てー!」

「きゃー!アキちゃんやったわね!」

「葵とアーちゃんは仲良いなー アッキー、大丈夫か?」

「はい、まぁ何とか…」


浅瀬で海水の掛け合いっこしながら追いかけっこしている葵とアキを見ながら、佐藤お姉さんは鼻に脱脂綿が詰められた玲を団扇で仰いでいる。郁美はその玲の膝枕をしていた。彼なりの配慮だろうか、胡座をしている脚の窪みに何重にも重ねたタオルが置かれてあり、それが玲のいい膝枕になっていた。しかし貧血の脳まではやはり癒せなかったようだ。


「うーん…頭が痛い」

「大丈夫じゃないですね、古賀君。」

「貧血だな。これを飲むといい」

「ありがとうございます、お姉さん」


鉄分の錠剤を1粒飲んだ玲はまた郁美の膝枕に頭を預ける。


「悪りぃな次席、俺のせいでこんなことさせちまって。お前も遊びたいよな」

「とんでもないよ。体調不良の友人をほっといて遊べる訳がないじゃないか」

「…郁美。ありがとな」

「! …どういたしまして。玲^ ^」


…なんか聞いてるこっちが気恥ずかしくなるような会話だな。まあ、これをもって2人は本当の意味での友人になれるだろう。

隣でニヤニヤしながらこちらを見てくるおb、お姉さんが居るがこれは敢えて無視しておこう。


しばらくするとアキが興奮した様子で玲たちの元にやってきた。葵は玲を気にしてか近づこうとはしていない。少々不安そうだ。

「洞窟見つけたわ!一緒に行かない?」

一方のアキは(これはチャンスよ!古賀!)と言わんばかりの張り切りようだ。


この頃には郁美の膝枕から卒業し、パラソルの下に座ってた玲は行く!と二つ返事で了承、郁美も玲が行くならと腰を上げて、結局いつもの4人で洞窟に向かうことにした。

佐藤お姉さんは暗くなる前に戻るように伝えた後、パラソルなどの片付けをし始めた。


「やっぱりやめようよ〜」

葵が弱々しくこの洞窟内の探検を渋る。

そりゃ、けけけけけ…と鳴き叫ぶ蝙蝠こうもりらしき声がしたり、生温かい風がこちらに向かって吹いていたり。挙句の果てには入り口に『立ち入り禁止』の古くてボロボロになった看板が立っていては気味が悪くて誰も好き好んで行きはしないだろう。…私も戻りたいのだが。


アキは玲にこそこそと耳打ちし、ポンっと葵の方へ背中を押した。昨日の水着を選ぶ時はアキが葵と2人きりだったので、今回は玲が葵と2人きりになる番か。なるほど。俄然興味が湧いてきた私はこの一行の後をつけ続けようと思い直した。読者の皆さんには言っておきますが、ストーカーではないですからね!


「私は副島と行くから、葵は古賀といって来なよ!じゃ、私たち行くから」

「アキちゃんっ本当に行くの⁈ …って、いっちゃった…」

「田中さん、いざって時は俺が守るから。

2人で行けば怖くないぜ!」

「古賀くん…ありがとう… でも貧血はもう大丈夫なの? 無理しないでね?」

「…っ大丈夫です(泣)」

好きな子に心配かけてしまって思わず涙が出る玲。少し恥ずかしかったようだ。

すぐに涙を拭い、先行するアキたちを追って葵と玲も中に入って行った。


「足元気をつけろよ?滑りやすいから」

玲に先導され、葵は洞窟内を進む。やはり立ち入る者は少ないからか凸凹しており、サンダルでは歩きにくそうな地形をしている。念のため靴に履き変えていて良かったと葵は思った。

「田中さん、手を伸ばして!」

岩の上にいる玲が葵に手を伸ばす。

「あ、ありがっとう!」

玲に手を借りた葵はその助けを借りて岩に上った。


「痛っ⁉︎」

天井に頭をぶつけたようだ。

驚いた蝙蝠たちが一目散に飛んでいく。

「きゃー!」

びっくりした葵は驚いて玲を巻き込んで、

岩から地面に落ちてしまった。幸いこちら側は地面とはそこまで高低差がなく、2人とも軽い打ち身で済んだ。


「ごめんね!古賀くん。痛くない?」

「だ、大丈夫だけど…その、近い。」

いつのまにか葵は玲に床ドンしている状況になっていた。事の重大さに葵も気づく。

「ごごごごめん!すぐ離れるから!」

慌ててその場を脱しようとするが、腰に巻いてあった布を踏み再度玲の元に倒れ込む。

その瞬間。彼らの唇が触れた。


「「!!!?」」


声にならない驚きが洞窟中を駆け巡る。

あまりに驚きすぎて2人はしばらくその場を動けなかった。

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