第11話 魅惑の4連休! 〜④2日目〜

翌日の7月23日。午前8時。

勉強会が始まるまではあと1時間。


誰よりも先に玲はアキの部屋に居た。

初めて入る女子の部屋が中村ん家とはな…

そう思いながら向かいに座るアキを見る。


「あのさ、古賀は葵のことが好きなの?」

開口一番、アキは玲に尋ねる。意外な質問に戸惑いを隠せない。

「お、お前に関係ぇねーだろ⁉︎」

「いや、関係ある。だから聞いてる。」


真っ直ぐに見つめてくるアキに押されて、玲は素直に胸のうちを明かした。


「好きだよ。あ、…た、田中さんのこと。」

気恥ずかしさがありつつ、己の恋愛感情を改めて認識する。


「そうか、やっぱり。だから私は古賀にイラついていた、いや、嫉妬していたのか。」

妙に納得され、思わぬ反応に玲はビビる。


「そうかって、お前気づいてたのかよ⁉︎」

「そりゃ分かるよ。私も好きだから」

「…は?」

時が止まった。玲にはそう思えた。


(ちょ、ちょっと待て、え、この流れでまさかの告白? 中村が?俺に? いや、会話の流れからしてそれはない! ならば、、まさか…)

頭の中で色々な考えが巡る。こんなこと初めてで頭が痛くなりそうだ。


「…もしかしてさ、中村。お前実は…」

「その通りだよ。私は葵が好き。もちろん恋愛対象として」

「だからお前俺に対してあんな態度を取ってたんだな。何かしたんじゃねーかってヒヤヒヤしてたぜ」

「まあ、それはごめん。ちょっと気持ちに余裕がなくって」


どことなく気の抜けたような表情を見せるアキに、どれだけその胸の内を明かさないできたのか予想がつく。今ではアキのような者の存在の認知が広まりつつあるが、まだまだ少数派。自分に話してくれたのはそれだけ田中のことを想っていたからだと玲は解釈した。


ふと疑問が湧き、アキにこんなことを尋ねてみる。

「中村ってさ、もしかしてスカート着るのが嫌だったりする?トランスジェンダーみたいな」

「そういう人もいるけど、私はレズビアン。

自分が女性であるという認識を持ちながら、恋愛対象が女性である人。だからスカートは別に嫌いじゃないよ」

いろんな人がいるもんだな。

玲はエナジードリンクを一口飲んだ。


「このことは古賀しか言ってないから。絶対誰にも言うなよ。特に葵には絶対言わないでね!」

「分かったって。もう中村と俺は恋敵ライバルだから。自分の勝ち欲しさに敵の脚引っ張るような魂じゃねーよ」

「古賀…お前いい奴だな…」

「まあ、お前よりはな笑」


アキの顔に笑みが浮かぶ。初めて見るその笑顔に思わず可愛いと溢してしまった。幸いにもアキには気づかれてはないようだ。


玲は徐に立ち上がると右手を差し出した。

「ん?何、どうしたの?」

「仲直りと、これから恋敵ライバルとして頑張っていこうという決意証明。」

「…フフッ」

「な、何だよ!いいから中村も立てよ!」

「はいはい」


アキは除菌シートで手を除菌し、立ち上がり玲にも渡す。


「握手するのはいいけど、こういうのはきちんとやらないと」

「あ、あぁ、悪りぃ。…じゃ、改めて。これからよろしくな。中村。」

「こちらこそ。よろしく、古賀」

しっかりと握り締めあった手は、今日の出来事の証として、両者の記憶に刻まれた。


そして約10分後ー


「おはよーアキちゃん!今日もよろしくって うわお! 早いね古賀くん!」

「みなさんお早いですね。今日は僕が1番最後だね」


勉強会メンバーが揃ったところで、本日の勉強会がスタートした。


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