第3話 彼の秘密は…
同時刻、場所は変わって八目高校グラウンド。サッカー部所属の古賀玲は、同輩とともに話しながらグラウンド整備をしていた。
兄・
でも、これまでに仲良くなった奴もいるしなぁーと考えて共にトンボがけしている7人と、ボールを拭いている3人と、ゴールを動かしている9人の仲間達を見て、やはり俺はここで頑張っていこうと密かに決意を新たにしたのだった。
さて、そんな彼にはある悩みがあった。
それはー
帰宅途中、友人と別れて一人になった玲は、
マスクを外し、背伸びをして呟いた。
「あ、あ、あー、あ"あ"、はぁ、まだ慣れねーなー、声作るの(カワボ)」
そう、彼はいわゆる、『カワボ』男子なのだ。声変わりしたかしてないかは微妙。
まだなっていないと信じるしかない。
玲は普段は声を作って家以外では過ごしている。あれだ、ほら、女声で男を釣る奴いるだろう?あれの逆バージョンだ。
彼は中学の合唱コンクールの練習で自分の声のことを知った。周りが徐々に少年から大人の男の声になっていくなか、彼は一向に声変わりが起きなかった。起きたとしても微妙な変化しかなかったから、彼の声は少年の、いやカワボのままだった。
周りには明るく振る舞っていたが、家に帰れば悔し涙を流した。無理に低い声を出そうとしたら、逆に喉を痛めてしまうこともあった。兄はそんな弟を心配してくれて、たまに喧嘩もしたりしたけど、いつも味方でいてくれた。
こんな声と付き合って早2年。
大体ある程度声の変え方に安定感がつき、
堂々と話せるようになった。元々友人たちとわいわいするのが好きな性格である玲は、スマホで調べたり、親や兄に相談したりしてこの窮地から逃がれる方法を模索した。
この辺りについて言えば、葵よりも前に進もうとしている玲の方が人間的に好意を抱く。
見た目に反してキチンとしたがる性格である玲は、帰宅後すぐに例の紙ロールを自身のブレザーの上着やスラックスの上にコロコロと転がし、アルコール消毒用のスプレーを振りかけた。
更に手洗いうがい消毒をして、南西の向きにある2階な自室に上がり、消毒スプレーを吹きかける。そして制服をハンガーにかけ私服に着替える途中で、玲はある写真立の写真に映る人物に目をやった。それは、葵だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます