第2話 恋に落ちた?主人公

 葵が見つめる写真、それは4月に行われた入学者説明会後に撮影された、クラス写真だった。彼女の視線の先にはある人物が写っていた。その人物は明るい栗色の髪で、目を細めて歯を見せて笑っており、また背が低いためかつま先立ちをして隣の人と肩を組んでいる。


 彼の名は古賀玲こが・あきら


 受験の日に受験票を落としてしまった時に、走って追いかけて届けてくれた者だ。


 そんな彼の第一声が、

「これ、落としたよ!葵さん!」であり、第二声が「葵って素敵な名前だね!僕は古賀怜。お互い合格しますよーに!じゃ、またね!」だった。


 いきなりの下の名前呼びで葵は戸惑ったものの、拾ってくれたからには御礼をと思ったが、既に彼は人混みのなか。結局伝えることができないまま1日が終わり、そして1ヶ月が経つ。


(あの時、御礼が言えてたら。。。)

 そして今、ベットの上でため息をつく。


 入学者説明会の時にクラスが発表されたのだが、偶然にも同じ5組となった。これはチャンスだと思って1日様子を見たが、どうやら古賀玲という人物は人気のあるキャラクターのようで、葵の入り込む隙など一分もなかった。


 彼と同じ教室で約1ヶ月もの間過ごしてきて、彼について色々なことがわかった。


 まず、運動が得意。特に足が速く、体力測定では50m走が6秒台だった。本人曰く『もっとデカかったらもっと速かったはず!だから記録を0.8倍にしてください!』らしい。実際に計算したら4秒台後半となるので、あのウサイン・ボルト選手並みの速さとなる。

 。。。いやいやいや、そりゃないだろ。

 案の定教諭からは却下されていた。当然である。


 次に身長が低い。初めて会ったころから感じていたのだが、156cmだという(本人が身体測定検査にて漏らしていた)。身長に関する話題は地雷らしく、よく裏アキラが出現していた。


 また、第三学年には兄がおり、その人は柔道部の主将を務めていることも分かった。


 性格は動物に例えるならば犬で、よく尻尾の幻影が見えるなど。。。


 とここまで回想してきた葵は我に返った。

(ちょっと待って、古賀君のこと何で考えてるの??? 好きなの?私、古賀君のこと。嘘でしょ?もう恋なんてしないと思っていたのに。。。)


 そう思いつつ、彼女は写真で顔を隠した。だが、隠しきれなかった耳が段々と朱に染まるのを抑え込むことはできなかった。

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