声恋。〜とある2人の高校生の恋愛譚〜
爽良
第1話 登場人物の紹介を兼ねた日常風景
F県立・
そんな彼女には悩みがあった。
成績優秀である彼女は塾にも通っていない。また、部活にも入っていない。よってすぐに家に帰宅する。理由はそれだけでなく、
「ああー、今日も疲りぇたー(イケボ)」
そう、彼女は、『イケボ』なのである。
小学生の時までは彼女は溌剌とした少女だった。ミニバスケットボール部に所属し、男女問わず友人がいた。
それが中学2年のとき、同じバスケ部でカラオケに行った際、密かに想いを寄せていた男子から衝撃的な言葉を投げかけられたのだ。それが、「おまえ、めっちゃイケボやん!」
いい声だとか、可愛い・綺麗な声なら分かる。でも、ーイケボ?!
当時恋する少女だった葵にはショックだった。ましてや、好きな男子からだなんて…
それ以来自分の声を気にしてあまり喋らないようになってしまった。友人らは好きな声だの、無理して声作るよりありのままの葵の声が好きだの言われしばらくして友人たちや家の者には話すことができるようになった。
それがこの学校に入学してからは友人はただ1人の中村アキのみであり、結果話す機会が極端に少なくなってしまったのだ。
そんな彼女は今、自宅の2Fの北東に位置する自室のベットに制服のまま寝転んで、ある写真を眺めていた。
4月7日に行われた入学者説明会。その終了後に撮られたクラス写真だ。彼女はある人物を見つめていた。
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