声恋。〜とある2人の高校生の恋愛譚〜

爽良

第1話 登場人物の紹介を兼ねた日常風景

 F県立・八目高校やめこうこう。ここにとある生徒が通っている。名は田中葵たなか・あおい。この春に入学した1年生だ。ウエストまであるソフトブラックな髪をポニーテールにし、目はくっきりとした二重、肌はピンク系、背は平均よりやや高めの160cmと美人と形容されるような外見が特徴だ。そんな彼女は常日頃からマスクをつけていた。まあ、今はコロナウイルスの猛威により当たり前ではあるが、登下校も体育の時も休み時間もだ。


 そんな彼女には悩みがあった。

 成績優秀である彼女は塾にも通っていない。また、部活にも入っていない。よってすぐに家に帰宅する。理由はそれだけでなく、


「ああー、今日も疲りぇたー(イケボ)」


 そう、彼女は、『イケボ』なのである。


 小学生の時までは彼女は溌剌とした少女だった。ミニバスケットボール部に所属し、男女問わず友人がいた。


 それが中学2年のとき、同じバスケ部でカラオケに行った際、密かに想いを寄せていた男子から衝撃的な言葉を投げかけられたのだ。それが、「おまえ、めっちゃイケボやん!」


 いい声だとか、可愛い・綺麗な声なら分かる。でも、ーイケボ?!


 当時恋する少女だった葵にはショックだった。ましてや、好きな男子からだなんて…


 それ以来自分の声を気にしてあまり喋らないようになってしまった。友人らは好きな声だの、無理して声作るよりありのままの葵の声が好きだの言われしばらくして友人たちや家の者には話すことができるようになった。


 それがこの学校に入学してからは友人はただ1人の中村アキのみであり、結果話す機会が極端に少なくなってしまったのだ。


 そんな彼女は今、自宅の2Fの北東に位置する自室のベットに制服のまま寝転んで、ある写真を眺めていた。


 4月7日に行われた入学者説明会。その終了後に撮られたクラス写真だ。彼女はある人物を見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る