冬を探して

 今は、朝の何時だろう。


 僕と同じ体温になった布団の中から、やっとの思いで飛び出した。


 今日は休日。日が暮れるまでの時間は、僕のものだ。


 さあ、どこへ行こう。何をしようか。


「そうだ、冬を探しに行こう」


 僕は思いつく限りの温かい格好をして、玄関の扉を開く。


 冷たい空気。吐いた息が白くなる。空は青空。日差しがほんのり温かい。


 冬はすぐに見つかった。けれども僕は、もっと冬を探しに行く。


 風の吹くまま歩いていると、ショッピングモールへたどり着いた。


 今は光を携えていないイルミネーション用の電球たち。店頭に並んだマフラーと手袋。整った花壇を彩る白いポインセチア。


 ここでもたくさん、冬を見つけた。けれども僕は、さらに冬を探しに行く。


 なんと言っても、今日は休日。日が暮れるまでの時間は、僕のものだ。


 さあ、どこへ行こう。何をしようか。


「やっぱり、冬を探しに行こう」


 僕の旅路は、まだまだ続く。今年まだ見ぬ、冬を探して。

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